「国際バカロレア」推進のキーワード「TOK」とは?
文部科学省は、世界的な大学入学資格である「国際バカロレア」の趣旨を踏まえた教育を推進しようとしている。背景には、グローバル化への対応と、現在の高校教育の在り方を変える目的があるという。キーワードは「TOK」(Theory of Knowledge、知識の理論)。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が、キーワードと文科省の狙いについて解説する。
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TOKは国際バカロレア資格の取得プログラムの一つで、論理的思考力や、狭い見方にとらわれない批判的精神、コミュニケーション能力などを養うための授業です。知識とは何か、知識をどう獲得し、どう使いこなすか、といった、いわば「正解のない問題」に対応する力を身に付けるための学習がTKOといえるでしょう。
文科省は、国際バカロレアを取得できる認定校を増やすだけではなく、そこから得られる授業改善の方法などを、一般の高校に広めることもめざしています。「国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進に関する調査研究指定校」での研究課題を見ると、「TOKの趣旨を踏まえたカリキュラム開発」「TOKを踏まえた指導方法及び論文・発表方法の研究開発」など、TOKを重視していることがうかがえます。さらに、TOKの概要や、国際バカロレア認定校における実践事例を集めた資料集なども作成しています。
学力と同時に、論理的思考力・コミュニケーション能力などの育成を重視した、新しい学習指導要領による授業が小・中学校で進んでいます。大学でも就職活動の厳しさなどを背景として、キャリア教育や授業改革が進展する中で、高校のみが大学入試への対応を理由に、知識伝達型中心の授業から脱却していません。文科省には、こうした現在の高校教育への強い危機感があると思われます。知識とともに論理的思考力・表現力・学習意欲などを身に付けさせる授業を高校でも展開するため、TOKを広げたいというのが文科省の狙いでしょう。