教育費の負担は、親の愛情?義務?それとも投資?

題名に「愛情」「義務」「投資」のどれでしょう、と書いておきながら、教育費について考えるとき、親の愛情抜きには語れません。
このところ、セミナーや家計相談で感じるのは、子どもへのあふれる愛情です。わたしも3人の子の親ですが、わたしは冷たいのかも?と少々後ろめたく感じるほど、愛情をお持ちの親御さんがあふれています。
なぜ、愛情あふれる親がたくさんいると感じるのか……。
それは、「教育費」への対応を見ていれば、感じざるを得ないからです。

「教育費」について考えるとき、「人生の三大支出」という言葉も目につきます。今、大手検索エンジンで「人生 三大支出」と検索すると、ヒットは200万件にもなりますし、生命保険の見直しを学ぶためのセミナーに参加しても、表題だけでなく、「(我が子の)教育費」「住宅費」「老後生活費」をバランスよく考えることが大事だと教えられます。多くの人の人生において、これらは必要不可欠な費用と考えて差し支えない、と言えるでしょう。

つまり、我が子の「教育費」は、世間的にも親があたりまえに負担するものと考えられており、親たちもそういうものなのだと思っているのです。(もっと公的な援助があってしかるべきという意見はありますし、感触としては増えています。わたしも同感なのですが、それは今回は脇に置いて考えていきます)。実際、ご相談を受けるなかでも、我が子の成長や時代の推移とともに、負担感が増す教育費の、少しでも有利な積み立て方法を求めるかたが増えていると感じます。高校生の保護者向けに、進学費用の実際と準備方法をお伝えするセミナーでは、教育費の準備が不足している家庭を念頭に具体的な用立て方法を注意点も交えてお話ししますが、親の負担の大きさに青くなりながらも、拒否することなく受け止めている様子が見受けられます。むしろ、子どもの進学希望をかなえるために、費用面でわたしもがんばらなくては!と、決意を新たにする親が少なくありません。

デフレでモノの値段が下がっているときでも、教育費だけはなかなか下がらないと言われます。子どもたちの進学率は年々高くなる傾向で、勉強がそれほど好きというわけではない子どもでも、高校や大学、専門学校などに進学していきます。もちろん、勉強の好き嫌いだけで進学を決定するわけではなく、中卒や高卒では思うような就職先が得られなかったり、もっと力をつけてから社会に出たいと考えたりすることも理由でしょう。一番多いのは、まだ自分の将来を描けない・よくわからないから、とりあえず考える時間が欲しくて進学するというケースではないか、とわたしは考えています。

多くの親たちに接していて感じるのは、生まれたばかりの赤ちゃんや、見た目もかわいい3~4歳の子へのわかりやすい愛情だけではありません。親の笑顔に笑顔で答えてくれなくなって何を考えているのかわからない反抗期真っ盛りの年頃の子、ヒゲが生えてきてオジサンくさくなった息子、親には理解不能のおしゃれをする娘に対しても、その子の将来が明るく幸せであることを願って、親としてできることがあるのなら、何でもします!という、切ないほどの気持ちです。義務感といえばそうかもしれませんが、押しつけられ感の伴う「義務」とは違う熱意が伝わってくるのです。
そして、幸せな、ある程度の生活をまかなうには、それなりのお金が必要だろうから、そのお金を得られるような仕事に就いてほしいと考えます。決して、他人を押しのけてでも、とか、超一流と言われる企業への就職を希望しているわけではありません。子どもなりの幸せをかなえてやりたいだけなのです。

ささやかな幸せを得てほしいだけなのに、親の収入が少なくて子どもに教育費をかけられないと、子どもの成績が振るわずに希望する職に就けず、その結果、収入が少ないままで、子の子(孫)に教育費がかけられず悪循環……と言われたり、聞いたりしているので、今、自分が何とかしたいと真剣です。手持ちのお金をすべてはき出して、それでも足りなければ、借金してでも学費を用意するのです。

教育費に関する借金は、貸与(たいよ)方式の奨学金や、教育ローンのことです。教育費のための借金は、「借金」と強く意識しない親が少なくなく、わりと気軽に申し込みするようですが、それは、子どものためという大義名分があるからでしょう。
教育費は投資、という考え方も、お金を出した親が回収する投資というよりは、子どもの世代で回収するための投資という考え方のような気がします。それくらい、子どもへの気持ちがあるということです。

でも、一度、あふれる愛情を、冷静な目で見つめてほしいのです。

冷たいことを言うようですが、子どもの将来は、バラ色ではありません。

いろいろな家庭を拝見していると、親は、100%の力を出し尽くすのではなく、今も将来も、常にいくらかの余裕を持っておくことが、子どもを守ることにつながるのではないかと思うのです。
たとえば、奨学金は、子どもが借りて子ども自身が返済するものですが、通常、親は連帯保証人になりますから、子どもに返済の力がつかなかったり、途中で失ったりすると、教育ローン同様、親の借金となります。子どもが生まれてから17年後にはまとまった進学費用がかかることがわかっていても貯められなかったのに、お金を借りてしまえば、利息も含めた返済が待ち受けます。本当に払いきれるかどうか、よく考えてみなくてはなりません。
子どもが奨学金を返済できないと言うことは、おそらく、生活費そのものも不足気味でしょう。頼るべきは親の財布となりますが、そのとき、親がギリギリの生活をしているとしたら、助けてやれるでしょうか。

まだ子どもが幼いのであれば、家計を見直してコツコツと貯めるようにしてください。塾や家庭教師というプロをお願いすると安心できることはわたしも体験していますので、あまり大きな声では言えないのですが、利用するときは、今のお財布だけではなく、将来のお財布とも相談するようにしましょう。

親として、「今、できることをする」ということに、反対しているのではありません。少々遠い将来、もしかすると、今以上に子どもが親を頼ってくるかもしれないその日のために、余力を意識することを心がけていただければ、と思います。


プロフィール



「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

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