高校受験に親はどこまで口出しする!?

2011(平成23)年9月、Benesse教育研究開発センターにおいて全国の高校1年生とその母親3,085組を対象に「高校受験調査」が実施されました。調査結果からは、約6割の子どもが中3の初めには高校受験を意識し、中3の夏休みには受験勉強をスタートさせていることがわかり、親子で悩みながらも受験に懸命に挑んでいる姿が見えてきました。
そこで今回は、1)受験勉強中の親子の悩み、2)受験が終わってから感じる子どもの成長に焦点をあててご報告します。これから高校受験を迎える方々に、「受験」という体験をどのように成長の機会に結び付けていくか、考える参考にしていただければと思います。



受験勉強中の悩み(子ども編)……さまざまな悩みを抱える子どもたち

まずは子どもの「受験の悩み」について見ていきます。

【図1 受験の悩み(子ども)】

Q 高校受験の悩みや不安に関して、次のようなことがどれくらいあてはまりますか。

図1 受験の悩み(子ども)


注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の数値


●「合格できるか不安」8割、「何を勉強すればよいのかわからなかった」6割
そのほか「学校選びに悩んだ」6割、「成績が伸びなくて悩んだ」6割、「内申点が足りなくて悩んだ」4割と、いっぱい悩んでいる子どもの姿が浮かびます。

●「なんだかイライラした」6割、「家族に口答えしたりしてあたった」5割
そのほか体調を崩したり、よく眠れなかった子どもも2~3割。不安や悩みを抱えて、心身ともに不調を感じた子どもが少なからずいるということ。受験にはタフさと、家族の支えの大切さを感じます。

●「友達と過ごす時間が減った」5割、「友達との関係に気をつかうようになった」3割

受験をきっかけに友達関係にも変化があるようです。


受験勉強中の悩み(母親編)……受験サポートは難しい!

続いて、母親の「受験の悩み」を見ていきます。

【図2 受験の悩み(母親)】

Q あなたは、お子さまの高校受験について、次のようなことで悩んだり不安を感じたりしたことはありましたか。

図2 受験の悩み(母親)

注1)「とてもそう」+「まあそう」の数値
注2)<>は5ポイント以上差があるもの


●「子どもが合格できるか不安だった」7割強。「成績が伸びなくて悩んだ」5割
一番の不安や悩みポイントは母親も子どもと同じです。

●「受験にむけて何をサポートすればよいのかわからなかった」4割強
「口出ししすぎてしまった」4割、「自分の焦りや不安を子どもに伝えてしまった」3割など、受験期のサポートの難しさが伝わってきます。

*母親のフリーアンサーより

・自分の成績で親が一喜一憂するのは見たくなかっただろうと思う。(大阪府/子どもは女子・第2子)
・模擬試験の結果が、受けるたびに変わり、子ども以上に不安を口に出してしまった。(福井県/子どもは男子・第2子)
・第1志望が不合格で後期の受験先に悩んでしまった。わたし自身がどうして良いかわからず、周囲の意見にふりまわされるばかりの子どもに怒鳴ってしまった。(千葉県/子どもは女子・第1子)
・兄と成績が違いすぎて、親も本人も悩みました。(中略)反省点は、兄弟比較はやっていないつもりでも本人にはプレッシャーだったことですね。(静岡県/子どもは男子・第2子)
・わたしが、年子の姉と比べてしまって、いやな思いをさせてしまったことをとても後悔している。(静岡県/子どもは女子・第3子以降)


フリーアンサーで目立ったのは、「テスト結果で一喜一憂してしまった」「親のほうが不安になってしまった」という声。第2子以降の子どもの受験の場合、「つい兄姉の時と比べてしまった」という反省の声も聞かれました。



振り返ってみると……高校受験は自信や達成感をくれた!

次に、高校受験を経験して良かったことを子どもに聞きました。

【図3 高校受験の良かったこと】
Q 今、高校受験を振り返ってみて、次のようなことはどれくらいあてはまりますか。
図3 高校受験の良かったこと

注)「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の数値


●「進路についてよく考えることができた」「やればできると自信がついた」7割
「自信がついた」という回答とともに、「精神的に強くなった」「勉強をやりとげた達成感があった」という子も6割に達します。悩み苦しんだだけに、受験を乗り越えた経験が自信や達成感に結びついているようです。

*母親のフリーアンサーより

・自分の力で決めること、考えること、がんばること、悩むことなどいろいろな経験ができた。(宮城県/子どもは男子・第1子)
・親の意見に頼るだけでなく自分自身で考え工夫するように努力したのは良い経験になったと思う。(愛媛県/子どもは女子・第3子以降)
・第1子なので親も子も初めての受験を不安視していたが、親が思うよりもしっかり子ども本人が受験校を決めた。(京都府/子どもは男子・第1子)
・勉強の仕方がわかり、高校に入学してからも勉強の習慣ができた(東京都/子どもは女子・第2子)
・自分の将来を考えたうえで選択した学校に、努力をして入学することができたので、入学してからの意識も高く保てて良いことだと思った。(兵庫県/子どもは女子・第1子)
・公立高校に落ちて挫折を味わったことは、良い人生経験だったと思う。私立に入学してから勉強や部活に真剣に取り組むようになった(千葉県/子どもは男子・第1子)



母親からは、子ども自身の努力を評価する声や、受験のがんばりが現在の高校生活につながっていること、受験で身につけた勉強習慣が高校生活で生かされていることなどを評価する声が多く聞かれました。


高校受験はほとんどの子どもが経験するからこそ、成長の機会として生かしていくことが重要なのです。主役は子どもであることを念頭におきつつ、お母さんも思いっきり関わってよいのではないでしょうか。

母親たちは「口を出しすぎた」「本人より一喜一憂してしまった」など、時には後悔したり自分を責めたりするような経験をしたようです。でも、振り返ってみれば「いろいろな経験ができてよかった」「自信がついたようだ」など、子どもの成長を感じる言葉が並びます。
もしかして、親との衝突や気づかいも含めて、子どもにとっては受験経験なのではないでしょうか。親の関わり方に腹を立てて「受験はわたしの問題で、お母さんの問題じゃないのに!」と思ったとき、どんどん自立心がわいてくるのかもしれません。
親も心配が尽きない一年となるでしょうが、それ以上に子ども自身がプレッシャーと戦い、自分なりの工夫や決断をしていく時期。時には親が口を出しすぎることもあるかもしれませんが、その代わり、子どもの努力や工夫はきちんと認め、また子どものイライラも覚悟して受け止める。そんな覚悟をして、お互いに本気で考えて悩んでぶつかるなら、受験経験は必ず子どもにとって成長の機会となるのではないでしょうか。


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