子ども手当は10月から有利になったの? それとも?

2011(平成23)年10月から、子ども手当の制度が改正されました。改正前後の違いをご理解いただくために、まずは9月までの制度をおさらいしてみましょう。

9月までの子ども手当は、年齢、子どもの人数などにかかわらず、中学校を卒業するまでのお子さんひとりにつき、月額1万3,000円が支給されていました。収入に関わる支給制限はありません。
そして10月からの制度では、3歳未満(誕生月まで)の第1子と第2子に対しては、ひと月1万5,000円が支給され、3歳の誕生月以降はひと月1万円になります。ただし第3子以降は年齢に関わらず、ひと月1万5,000円が支給されます。10月以降も2012(平成24)年3月までは、収入に関わる支給制限はありません。
9月まで、あるいは10月以降も、支給の対象となるのは、中学校を卒業するまでのお子さんです。ちなみに、子どもの人数は、「18歳未満の子どものみ」で数えます。たとえば、我が家には3人の子どもがいますが、長女はすでに大学生なので第1子には該当せず、中学生の長男が第1子、小学生の次男が第2子になります。



3歳未満と3歳以降で、支給額が異なるワケは?

さて、本題の子ども手当の有利不利ですが、改正によって有利になったのか、もしかして不利になったのかを判断するために、「なぜ、3歳未満と3歳以降で支給額が異なる制度になったのか」から説明していきましょう。
子ども手当の前の制度に当たる児童手当では、3歳未満の第1子と第2子はひと月1万円、3歳以降はひと月5,000円が支給されていました。第3子以降は、年齢に関わらずひと月1万円が支給されていました。
これが子ども手当に制度が変わった時点で、子どもの人数や出生順位に関わらず、支給額はひと月1万3,000円に統一されました。3歳未満のお子さんでプラス3,000円、3歳以降のお子さんではプラス8,000円の支給額アップです。ここだけを見れば、「支給額が増えて良かったね」という単純な話で終わるのですが、問題は税金面にあります。15歳以下のお子さんは、児童手当の時代には適用された「年少扶養控除」が使えなくなっているからです。

年少扶養控除は、15歳以下のお子さんひとりにつき「所得税で38万円」「住民税で33万円」を所得から差し引ける制度です。所得が少なくなることで、所得税や住民税を安くする効果があります。この年少扶養控除が使えなくなったために、支給額がアップしても、増税額に負けてしまうご家庭が多いのです。それでも今年は、所得税だけの増税なので影響は抑えられていますが、来年6月からは住民税も増税になるので、影響はより多くのご家庭に及ぶはずです。
年少扶養控除が廃止されるのは、子ども手当がひと月2万6,000円にアップすることとセットだったはずなのに、子ども手当の支給額はアップせず、年少扶養控除だけが廃止になってしまうという、子育て家庭にとっては、簡単に喜べない状況になったのが、現在の子ども手当の制度といえます。



年収500万円程度からは不利になった!?

もし、子ども手当の支給額がひと月1万3,000円のままで据え置かれると、3歳未満のお子さんについては、多くのご家庭が児童手当のときよりも「手取りで損」してしまうことに。そこで3歳未満の第1子、第2子に対しては、支給額をひと月1万5,000円にアップすることで、税金面で損をするという「逆転現象」を抑えようとしたわけです。これが、3歳未満と3歳以降で、支給額が異なる理由です。
たとえば、年収300万円のご家庭では、年少扶養控除がなくなったことにより、ひと月4,000円程度の増税になります。支給額が1万3,000円のままでは、児童手当の時代のほうが手取りは多くなるわけです。年収300万円のご家庭では、支給額が1万5,000円にアップしたことで、何とか逆転現象は避けられました。
とはいえ、年収500万円のご家庭では、ひと月の増税額が5,000円程度になりますので、1万5,000円にアップしても児童手当の制度とほぼ同等になり、年収600万円のご家庭では、ひと月の増税額が6,000円程度になりますので、支給額がひと月1万5,000円にアップしても、児童手当の時代より損するのが現実。年収が多いご家庭では、1万5,000円にアップしたとしても、逆転現象が発生するのが現在の子ども手当の実態です。



来年度からは所得制限が導入される予定

また、2012(平成24)年4月以降は、所得制限が導入される予定になっています。今のところ、妻とお子さん二人を扶養しているご家庭で、年収960万円程度が所得制限のラインと言われています。
来年度から所得制限が導入されて、子ども手当がもらえなくなると、もらえなくなったご家庭にとっては「増税の痛み」だけを受けることになります。ちなみに、年収960万円のご家庭の増税額は、所得税と住民税を合わせてひと月8,000円程度。年間で10万円を超える増税です。
年収960万円のご家庭は、児童手当の時代も所得制限で手当はもらえなかったとはいえ、子ども手当の制度に変わったことで、「手当がもらえる!」と喜んだのは、わずか2年にすぎない結果になりそうです。

今回ご紹介したように、子ども手当の制度の有利不利を考えるときは、児童手当との比較が欠かせないことになります。とはいえ、お子さんが生まれてから、子ども手当に手を付けずに貯めると、総額で230万円を超える教育資金が作れます。子ども手当のほかに、200~300万円くらい受け取れるこども保険に加入すれば、大学時代の教育資金は相当まかなえる計算になります。子ども手当はこの後も、制度の改正が行われるかもしれませんが、大学時代の教育資金として、手を付けずに貯めておくというのは、制度が変わっても守り続けてほしい原則と言えます。


プロフィール


畠中雅子

大学時代よりフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て、1992年にファイナンシャルプランナーになる。新聞・雑誌などに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。著書は、「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿』」(ぱる出版)ほか、70冊を超える。

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