速報! 平成26年度都立高校入試 志望予定調査の状況と今後の見通し【前編】-浅野剛-

2014(平成26)年1月8日、平成26年度の都立高校志望予定(第一志望)調査結果が発表されました。推薦入試は間もなく発表となりますが、調査結果の分析をもとに、都立高校の志望傾向や今後の見通しについてお伝えします。



都立高校志望予定調査とは?

「都立高校志望予定調査」は、東京都中学校長会進路対策委員会が、都内の公立中学校を今春卒業する中学生の、12月時点での都立高校への志望状況(第一志望)をまとめたものです。正式な応募者数ではありませんので、今後の出願・志願変更によって変動することも考えられますが、大まかな志望動向をつかむことは可能です。



普通科の他、国際科、科学技術科、農業科などで志望者が多い

都内公立中学校の2014(平成26)年春卒業予定の生徒総数は77,471人で、前年より2.1%増加しています。このうち、都立全日制高校の第一志望者は70.74%(前年は71.46%)。一方、国立・私立・他県公立高校の第一志望者は21.14%(前年は20.48%)でした。リーマンショック以降、都立高校の志望率が少しずつ上昇してきましたが、ここにきて落ち着いた印象です。やや上向きといわれる経済状況の影響もあるのかもしれません。
全日制高校の募集人員は、27校で各1クラス(40名)増、9校で各1クラス減となり、全体として18クラス分の増加となりました。

 学科別に見ると、普通科(学年制)の第一志望者が増えており、特に男子は19,906人(前年19,271人)となり、前年より635人(3.3%)増加しています。
国際科、科学技術科など専門色の強い学科は、年度による多少の増減はあるものの、ここ数年志望者が増えており、倍率も上昇傾向です。一方、商業科の倍率は全体的に低調になっています。
専門高校の在り方について、東京都教育委員会は2013(同25)年11月27日、社会の要請や生徒のニーズに応じて、学科の改編や新たな学科の設置なども含め、委員会を設置し検討していくと発表しており、来年度以降の動向が注目されます。



進学実績や入試問題の「グループ作成」が志望動向に影響

近年、都立高校の改革が進み、単位制、中高一貫教育校など、新しいタイプの高校が相次いで誕生しました。数多くの高校があり、選択肢の多い東京の受験生は、各校の特色や進学実績をよく調べて志望校を決定しているという印象を受けます。進学実績が好調なところは、やはり多くの志望者を集めています。
また、2014(同26)年度の受験生の動向に影響していると思われるのが、今年度から始まった入試問題の「グループ作成」です。
これまで一部の都立高校(※15校)では、国語・数学・英語の3教科について、高校ごとに独自の「自校作成問題」が作成されていましたが、これらを以下3つのグループごとに、共同で入試問題が作成されることになりました。
ただし、問題の一部は高校により自校で作成した問題と差し替えが可能となっています。また、グループによって作成・実施の方針は異なり、たとえば、進学指導重点校(7校)については、各教科大問ごとに問題を選択して自校の学力検査問題を作成する、自校で作成した問題への差し替えは各教科大問一問とし、他の問題はグループ作成問題とする、となっています。
※この15校とは別に、国際高校は英語のみ自校作成問題を実施


 ●進学指導重点校(7校)

東京都教育委員会の指定を受け、国公立大・難関私立大への進学指導に組織的に取り組んでいる高校
日比谷・西・戸山・青山・八王子東・立川・国立


 ●進学重視型単位制高校(3校)

自分の興味・関心や進路希望に応じた科目を選んで学べる単位制高校のうち、特に難関大に応じた科目設定や進学指導を充実させている高校
新宿・墨田川・国分寺


 ●中高一貫教育校(併設型)(5校)

6年間、一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶことができる中高一貫教育校のうち、高校でも募集を行う「併設型」の高校
大泉・富士・白鴎・両国・武蔵


この制度の導入により、同じグループ内であれば共通の試験問題も増えてくるため、受験生にとってはグループ内での志望校の選択の幅が広がるという見方もできます。しかし一方で、2014(平成26)年度は初年度であるため、グループ作成によって志望校の問題の難易度がどう変わるかつかめず、「難しくなるのでは」と予想された高校や、難易度が予想しにくい高校では志望者が減り、周辺の高校へ移動するという現象が起きています。
では、各グループの志望状況を詳しく見ていきましょう。



進学指導重点校 --日比谷・立川で男子志望者大幅増


2014(同26)年夏に新校舎が完成予定の日比谷高校は、男子の志望者が大幅増になりました。推薦入試も高倍率となっています。都立高校を第一志望としていない難関国立高校・私立高校志望者も、一般入試(学力検査に基づく選抜)においては第二志望として都立高校に願書を提出する場合が多いため、日比谷高校などの難関校は、志望予定調査の数値より応募者数が増える傾向にあり、女子も含めて注意が必要です。
 ※SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定の戸山高校は例年男子の志望者が多いのが特色ですが、今年は女子の志望者が大幅に増えています。ただし、戸山は定員1クラス増となっているので、倍率はそれほど大きくは上昇しないと思われます。
2012(同24)年度より土曜授業も含めた授業体制を強化している立川高校は、男子志望者が大幅に増加しました。推薦入試においても応募者は増加しています。国立高校は男子は昨年並みですが、女子の志望者が減少しています。国立も定員1クラス増になるため、倍率は昨年より少し落ち着いてくると考えられます。
西高校、青山高校、八王子東高校の志望者数はほぼ昨年並みですが、中でも西については日比谷と同様の理由で、このあとの応募者数は増えてくる可能性があり、注意が必要です。

後編では、進学重視型単位制高校、中高一貫教育校、専門学科志望者の動向やその影響について解説します。


プロフィール


浅野剛

元大手進学塾高校入試担当部長、入試情報統括を歴任。30年以上にわたって受験指導を行い、多数の生徒を志望校に合格させてきた高校受験のエキスパート。現在は、中学生・保護者向けオンラインセミナーの講演をはじめ、中学校での進路講演なども担当。

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