モンスターペアレント、9割の保護者が「最近増えた!」

アンケート期間 2011/06/15 回答者数:2,639人
アンケート対象:全国の本サイトメンバー

※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある


今回のテーマは、モンスターペアレント。テレビ番組や新聞、雑誌などでもよく取り上げられますよね。あなたはどんな振る舞いをする人をモンスターペアレントだと思いますか? また、そう呼ばれる人は最近増えていると思いますか?
今回は、保護者に限定せず、20歳未満のかたから60歳以上のかたまでさまざまな世代のBenesse教育情報サイトメンバーにご意見を伺いました!





回答者の約3割は、顔見知りのなかにモンスターペアレントがいる!

最初に、モンスターペアレントと呼ばれる人が増えていると思うかどうかを伺いました。また、モンスターペアレントだと感じる人が周囲にいるかどうか、そしてそういう人がいた場合、その人とどのような関係かについても、お聞きしています。

【図1 最近モンスターペアレントと呼ばれる人が増えてきていると言われていますが、あなたはどう感じますか?】

図1 最近モンスターペアレントと呼ばれる人が増えてきていると言われていますが、あなたはどう感じますか?


【図2 現在あなたの知っている範囲で、モンスターペアレントだと思う特定の人はいますか?】

図2 現在あなたの知っている範囲で、モンスターペアレントだと思う特定の人はいますか?

【図3 図2で「4人以上いる」「2、3人いる」「1人いる」と回答したかたに伺います。あなたはそのかたと、どのような関係ですか? ※複数いる場合は、最も親しかった人の場合をお答えください】

図3 図2で「4人以上いる」「2、3人いる」「1人いる」と回答したかたに伺います。あなたはそのかたと、どのような関係ですか? ※複数いる場合は、最も親しかった人の場合をお答えください

「世間で言われるように、モンスターペアレントと呼ばれる人は増えていると思う」というかたが全体の9割以上。圧倒的です。
そして、「周囲にモンスターペアレントだと感じる特定の人がいる」というかたは3割を超えました。10人のうち3人以上のかたが、モンスターペアレントの存在を身近に感じていることになります。
そのモンスターペアレントと思われる人との関係では、「顔は知っている程度」と「ときどき話をする間柄」がともに約4割、次いで「友人」が1割弱。つまり、ほとんどが顔見知りだということになります。


こういう行動をとる人はモンスターペアレントかも……

では具体的にどのような行動をとる人をモンスターペアレントだと感じているでしょうか。

【図4 以下のようなケースについて、あなたはどの程度モンスターペアレントと言えると思いますか? 近いものをお選びください】

図4 以下のようなケースについて、あなたはどの程度モンスターペアレントと言えると思いますか? 近いものをお選びください

「こういう行動をとる人はモンスターペアレントだと思う」という項目で最も多かったのは、「給食費・教材費を払えるのに払わない」。約9割と圧倒的です。「経済的に余裕があるのに、求められる費用を払わないのはおかしい」という理由を挙げるかたが大半。「その人はけっこうぜいたくな身なりをしているし、保護者同士の飲み会などには積極的に参加していて裕福そうなのに、給食費をかたくなに払っていないようです。その人が『義務教育なんだから負担しなくて当然よ!』と言っている場に居合わせたこともありますが、聞いていて悲しくなりました」といった具合です。
ほかの選択肢を見ても、ほとんどで「モンスターペアレントだと思う」という割合が6~7割を占めています。「担任の先生のお給料を調べて、『金額にふさわしい仕事をしていない!』と教育委員会に駆け込んだ保護者を知っています。わたしには理解できない行動です」「『うちの子を叱るとはどういうわけだ!』と職員室に怒鳴り込んだ夫婦が、同じ学年の保護者にいます。その家の子どもは問題行動が多いことで有名で、わたしは先生の指導は至極まっとうだと思ったのですが……」など、その言動を実際に見聞きしたという保護者も少なくありません。

ただし、「学校や先生に対する依頼が多い」は、「モンスターペアレントだと思う」と「思わない」とにほぼ同じ割合で分かれています。
「思う」という保護者が挙げるのは、「『ランドセルが重くなるので、教科書類は学校に置いておいたほうが良い』と繰り返し主張して、とうとうその子に限って認めさせた人」「運動会では徒競走の代表選手、学芸会では主役というように、いつも自分の子どもを目立たせてほしいと担任の先生にお願いしている人」など、「あまりにも身勝手だから」という理由が大半です。
「思わない」理由としては、「学校や担任の先生の指導が問題な場合もあるため、保護者の要求が当を得ているかどうかは、状況によって異なると思います」といった声が聞かれます。つまり、「行動に正当性が感じられればモンスターペアレントではないと思う」ということですね。


「モンスターペアレント」という言葉の一人歩きに不安も!

この質問はお子さまをお持ちのかたに限って回答いただいています。お子さまのことについて学校や先生に不満があっても、「周囲からモンスターペアレントだと思われるのではないか」と心配するあまり、改善を求めることをためらってしまう。そんな経験はあるでしょうか。

【図5 お子さまがいらっしゃるかたに伺います。あなたご自身は、「こういうことをすると、モンスターペアレントだと思われるのだろうか」など心配になったり躊躇(ちゅうちょ)したりしたことがありますか?】

図5 お子さまがいらっしゃるかたに伺います。あなたご自身は、「こういうことをすると、モンスターペアレントだと思われるのだろうか」など心配になったり躊躇(ちゅうちょ)したりしたことがありますか?

「モンスターペアレントと思われることを気にして、心配したり、要求するのをためらったりしたことがある」という保護者は、全体の約3割。ほぼ3人に1人の割合であり、少なくありません。具体的には、次のような体験談が寄せられています。

●子どもが小学生のころの担任の先生がとても厳しいかたでした。それで子どもは一時、「先生が怖いから学校に行きたくない」と言うようになったんです。わたしとしても、「ちょっと指導が行き過ぎでは……?」と感じるところがあったものの、当の担任の先生に直接はお話ししづらく、かといっていきなり校長先生に相談すると「あの人、モンスターペアレントじゃない?」と同じクラスの保護者の話題になりそうで、悩みました

●子どもが小学校低学年だったころ、同じクラスの友達の1人からとても好かれていました。わたしは最初、「親友と呼べる関係になるかな?」とほほえましく見守っていたのですが、やがてその子は「ずっとぼくと一緒に遊ぼうよ」「2人だけで遊んだほうがおもしろいじゃん」といった調子でうちの子を拘束し、ほかの友達と遊ぶと怒るようになってしまったんです。その様子を見て、わたしは困惑。思い切って電話で担任の先生に相談しました。「子ども同士のことだから親は口を出さないほうがいい」と考える人はいるでしょうし、わたしにもその気持ちはわかります。だから電話をすることには、かなりためらいがありました

●子どもの学校で長く続いてきた行事が、新しい校長先生の方針で大きく変更されることになりました。わたしは「せっかくの伝統行事なんだから、なるべくなら続けてほしい」と考え、保護者会でもそういう意見を述べました。わたしと同じ考えのかたもいたものの、大半は無関心。保護者間の温度差がこれほどとは思ってもみませんでした。また、わたしの意見に賛成してくれてはいても、「問題を起こしていると思われたくないので、自分の名前は出さないでほしい」といったことを言う保護者が多く、「正当な異議申し立ても堂々とできないのか……」と、正直なところ、ショックでした。学校の方針に全面的に賛同しなければすぐに「モンスターペアレント」というレッテルが貼られてしまいかねない風潮があるような気がします

「担任の先生に直接話すべきかどうか」「提案したいけれど、自分の要求を無理強いしたといううわさが立ったらどうしよう」といった理由から、悩んだり不安になったりする保護者が多いようです。「モンスターペアレント」という言葉だけが一人歩きをし、正当な要求であっても主張しづらい雰囲気があることを危惧するコメントも見られました。


「モンスターペアレント」という言葉、「適切」が7割以上!

続いて、「モンスターペアレント」という言葉にどのような印象を持っているかを伺いました。

【図6 あなたは「モンスターペアレント」という言葉についてどのような印象を持っていますか?】

図6 あなたは「モンスターペアレント」という言葉についてどのような印象を持っていますか?

多かったのは、「『モンスターペアレント』という言葉は、適切だと思う」というかた。全体の7割以上に達しました。理由として次のような声が寄せられています。

●周囲の保護者から話を聞いたり、テレビ番組や雑誌などで取り上げられる例を見たりする限り、わたしの常識では考えられない行動ばかり。「モンスター」と呼ばれても仕方がないと思います

●テレビ番組で紹介されていることが本当なら、「モンスター」という言葉が当てはまる気がします

●わたしの印象では、度を超して身勝手な要求をする保護者は実際に増えています。これは決して良いことではないでしょう。「モンスターペアレント」という言葉はちょっと強烈過ぎると感じないでもないものの、わがままな言動に警鐘を鳴らすには、刺激が強いくらいでちょうど良いのではないでしょうか

「実際にそういう保護者を知っていて、適切だと思う」というかたもいたものの、「テレビ番組で見て、適切だと感じた」というかたも少なくありません。
一方、「『モンスターペアレント』という言葉は不適切である」という回答も、全体の約3割。その理由を見てみましょう。

●本物の「モンスターペアレント」は、いることはいます。でも、子どものため、学校のためを思って提案している保護者もいるんです。両者を一緒にして、学校に対して何か言えば「モンスターペアレント」とうわさされるような風潮は良くないと思います

●これだけ社会的に「モンスターペアレント」の印象が強くなると、正しい意見であっても、学校側が「モンスターペアレントの主張」として片づけてしまう場合も出てくるのでは。だから先入観を持たずに、その意見に共感できるかどうかを、一人ひとりが冷静に判断する姿勢が必要でしょう

●教育方針について、親と教師とに違いがあることは別に悪いことではないはず。議論したり相談したりすることで、双方の理解が深まることだってあるんです。話し合いを求めるだけで「モンスターペアレント」呼ばわりするのは、穏やかではないと思います

目立ったのは、「正当な要求・提案であっても、『モンスターペアレント』として一括りにされてしまう風潮が問題である」という声です。学校や先生に対して意見を言うことへの不安・ためらいとして、図5で見たコメントと似通うものが少なくありません。いわば問題は、「学校に依頼すること」自体にあるのではなく、「何を依頼するか」「その依頼が正当かどうか」にこそあるという姿勢ですね。
そして、こうした姿勢は、図4で「学校や先生に対する依頼が多い」という選択肢を「必ずしもモンスターペアレントだとは思わない」としたかたたちにも共通すると言えるのではないでしょうか。


モンスターペアレントを減らすための工夫・意見をご紹介!

「モンスターペアレント」という言葉だけが一人歩きをする風潮を心配するかたも、そう呼ばれても仕方がない人の存在は認めています。そして、図1では9割以上のかたが「最近、モンスターペアレントは増えていると感じる」と答えてもいます。最後にモンスターペアレントを減らす方策について伺いました。

☆モンスターペアレントを減らすためにどんなことが必要だと思いますか?

●助言をしたり、相談に応じたりして保護者をサポートする機関を設置すること。適切なアドバイスをもらえば、問題のある言動も少なくなるのではないでしょうか。また、保護者と学校とを仲介する第三者的な組織・機関があると良いとも思います

●保護者・先生・子どもの三者の関係をもっと密にして連絡を取り合い、互いの信頼を強めること。具体的には、保護者は学校行事に今まで以上に積極的になること、学校は情報をもっと家庭に発信して理解と協力を呼びかけることが大事だと思います。保護者と学校が力を合わせて子どもを育てる関係をしっかりと築いていれば、モンスターペアレントは減るのではないでしょうか

●大切なのは、先生・学校と保護者とが敵対関係にならないこと。子どもの教育には、両者の協力が不可欠です。もちろん、学校・先生と保護者との意見が相違することもあると思います。そんなときも反目するのではなく、根気よく話し合うことで、より高い次元で意見の一致を見ることもあるのではないでしょうか

●普段から、教師と子ども、そして保護者が信頼関係を持つことが必要。それが第一歩でしょう

●モンスター化した親の再教育のための機関。でも実際問題かなり難しいと思う……


ほとんどのかたが、モンスターペアレントと呼ばれる人が増えていると感じていました。実際にそういう人と顔見知りだというかたも、多数でした。
しかし、先生や学校に対して意見を言ったり、依頼・要求をしたりすることをモンスターペアレントとするかどうかは、意見が大きく分かれました。モンスターペアレントと言われることを気にするあまり、なかなか思うように自分の意見を口にできずに悩む保護者も少なくありません。そうした風潮が強くなれば学校と保護者との意思疎通は停滞してしまう、と心配する声も寄せられています。確かに、お子さまにとってより良い環境づくりには、学校と家庭とのつながりが重要ですよね。
「モンスターペアレントを減らすために必要なこと」としては、「保護者をサポートする機関の設置」といった具体的な回答がたくさん寄せられました。しかし一方で、「わからない」「そんなことは無理なのでは?」など、簡単には解決策が見つからない問題と捉えるかたからの声も少なくありません。東京都教育委員会がクレーム対応マニュアルを作成していることからも、教育上重要でありながら一筋縄では解決しづらい問題であることが伺えます。


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