得意不得意の差が激しい。どの教科も平均してできるようにさせたい[教えて!親野先生]
上の男の子は、算数が好きでクラスでもできるほうに入ると思います。でも、国語や社会にはまったくやる気がなくテストもほとんどできません。下の女の子はその反対で、国語はできるのですが算数がまったくできません。足して2で割りたいくらいです。どの教科も平均して≪よく≫できるようにする方法はないでしょうか? (なおなお さん:小学5年生男子と4年生女子)
親野先生からのアドバイス
なおなおさん、拝読いたしました。
親として、「どの教科も平均して≪よく≫できるように」と願う気持ちはよくわかります。ほとんどの親はそう願うと思います。
親は、「できる教科があるのだから、苦手な教科もできるようになるはずだ」と考えます。そして、「できる教科はほどほどにして苦手な教科に時間をかければ、全体でもっと良い成績になるのに」とも考えます。
理屈はそのとおりなのですが、実際は理屈通りにいかないものです。
もちろん、もともとどの教科もバランスよく取り組める子はいいのですが、好き嫌い・得意不得意がはっきりしている子はそんな理屈通りにはいきません。
実際、子どもをして苦手でやる気がない教科への意欲を持たせるのは非常に難しいことです。はっきり言って至難の業です。
ほとんどの場合、叱ることが増えるだけであり結局は徒労に終わるのが常です。徒労に終わるだけならいいのですが、叱ることが増えるとマイナスの影響が必ず出てきます。
つまり、子どもは自分に自信がなくなり、親子関係もまずくなります。親が絶対やらせようと思えば思うほどそうなります。
それより、私は、せっかく好きな教科があるならそれを大いに伸ばしてあげるほうが得策だと思います。
このご相談のケースでは、上の子は算数が好きで得意であり、下の子は国語が好きで得意だとのことです。ですから、それをさらに伸ばすことをまずは最優先で考えればいいと思います。
そのためには、それをよくほめることです。子どもが好きで得意なことを、ぜひほめてあげてください。
それと同時に、さらに得意になれるようにバックアップしてあげることも大切です。
算数が好きなら、教科書や問題集だけでなく算数の歴史、図鑑、雑学、マンガ、クイズなどに触れさせてあげてください。算数おもしろ教室で同好の士と知り合ったり、算数検定などの他流試合で刺激を受けるのもいいかもしれません。
いろいろな角度から算数に触れることで、算数がさらに好きになり誰にも負けないくらい得意になれます。これは子どもに絶大なる自信をもたらしてくれます。
自信を持つと、エネルギーとやる気が出てきて、その子自身が輝いてきます。そして、勉強や生活にいろいろない良い影響が出てきます。
それによって、他の教科もがんばるようになることもあります。
また、必ずしもそうならなくても、どこかにい良い影響は必ず出ます。親の願いに適う影響でなくてもいいのです。
これは、このご相談のような算数や国語といった教科でなくてもいいのです。
音楽・図工・体育、もっと言えば教科でなくてもいいのです。
休み時間や遊びでの活躍でもいいですし、給食が得意ということでもいいのです。
そして、特に人と比べて得意ということでなくてもいいのです。「その子の中では得意」と言えるものでいいのです。つまり、「人と比べて得意というほどでなくても、その子の中では得意」というものでいいのです。
それがその子の生きる希望になります。
もうひとつ大切なことがあります。
私は、大人が子どもに接するとき、「人間のいろいろな能力が発達する時期は人によって違う」ということを頭に入れておくことが大切だと思います。
算数的能力・言語的能力・コミュニケーション能力・自己管理能力……、いろいろな能力がありますが、これらは人によって発達する時期が違います。
早くから算数的能力が発達する子もいます。でも、中学校時代や高校時代に発達することもありますし、大人になってから発達することもあります。
言語的能力が未発達の場合、国語の勉強が大変になり、算数的能力が未発達の場合は算数の勉強が大変になります。
苦手でやる気がない教科は、それに必要な内側の能力が未発達なのです。
算数の内容を入れる器がまだできていないので、器ができていないところにいくら入れようとしても、難しいのです。
それは、怠けているとか努力が足りないなどという問題ではないのです。
そこを理解してあげないと、いたずらに子どもを苦しめることになります。
親は、「できる教科があるのだから、苦手な教科もできるようになるはずだ。苦手なものを避ける子にしたくない。苦手でも、できるようにさせなければ」と考えます。
でも、子ども自身どうすることもできない内側の部分で、器や準備の有無が決まっているのです。意欲や努力でどうにもならない部分、叱咤(しった)激励でどうにもならない部分、そういうものがあるのです。
そこを理解して、許してあげることが大切です。
それに、人生では平均して何でもできるのがいいとは限りません。
大人でも得意不得意の差が激しい人はたくさんいます。各界で楽しく活躍している人たちの中にも、そういう人はたくさんいます。人生では、自分の得意を生かして自分の土俵で勝負することが大切なのです。
これが私のイチオシの人生戦略です。
子どものときからその方向で進めば、この人生戦略を身に付けることができます。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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