子どもを許すとは、だらだらしているのをただ黙認していればよいのですか?【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

ごろ……。宿題も忘れがち。嫌なことから逃げてばかりいる息子。このまま面倒なことから逃げ続ける人間にはなってほしくないので、「嫌でもやらないといけないことは誰にでもある」ということをわからせたいのですが、どう接すればよいのでしょうか? 「お母さんだって、毎日晩ご飯作るの面倒だなーって思うことはあるから、気持ちはわかるよ。でも、お母さんは作ってるでしょ?」なんて言っても、効果無しです。言葉のかけ方や接し方を具体的に教えていただけたら嬉しいです。(ぱんだ さん)


子どもを許すとは、だらだらしているのをただ黙認していればよいのですか?【前編】[教えて!親野先生]

 

【親野先生のアドバイス】

ぱんださん、拝読いたしました。

ぱんださんの問いは、とてもよくわかります。
「子どもを許す」と言うけれど……。
子どもは、毎日、目の前でだらだらして、勉強もしないで遊んでばかりでごろごろ、イヤなことから逃げてばかりで、やるべきこともやらない……。

それをそのまま許す?
どうしてそんなことができるでしょう?
そんなことをしたら、子どもは一生このままになってしまうのでは?
一生だらだらしたままで、やるべきこともやらないでイヤなことから逃げ続ける、そういう人間になってしまうのでは?

この問いは、まことに的を射ています。
本当に多くの親が、日々自問自答している点だと思います。

「子どもを許す」と言うけれど、それはいったいどうすることなのか?
パンダさんは問うています。
「子どもを許すというのは具体的にどうすればよいのですか? だらだらしているのをただ黙認(温かく見守る?)していればよいのでしょうか?」
このパンダさんの問いは、本当に普遍的なものだと思います。

私の考えを書かせていただきます。

「許す」というのは、子どもの「ありのままを許して受け入れる」ことです。
つまり、「これでよい」とすることです。
それは、文字どおりの意味であり、ほかに意味はないのです。

ですから、それは、だらだらしているのを黙認することなのです。
毎日、目の前でだらだらして、勉強もしないで遊んでばかりでごろごろして、イヤなことから逃げてばかりでやるべきこともやらない……、そういう状態を許すということなのです。

信じられないかもしれませんが、そうなのです。
なぜなら、許し難いことを許すことが、許すことだからです。
それこそが、許すということです。
どうでもいいことを許す時、許すということの意味がどこにあるでしょう?

それには、許すという言葉は当てはまらないのです。
なんの問題もなく、もともとオーケーなのですから。
そこには、許す許さないの選択すらありません。
ですから、許すとは、とても許せないと思えることを許すことなのです。

受け入れ難いことを受け入れることが、受け入れるということです。
黙認し難いことを黙認する、目をつぶり難いことに目をつぶる、共感できないことに共感する、そこにこそ意味があるのです。

そして、それができた時、新しい一歩が始まるのです。
それは、今までとは別の方向への第一歩です。

それができない時は、悪循環の連続です。
子どものありのままを許せなくて、がみがみ叱ったり責めたりします。
この親の攻撃こそが悪循環の第一歩です。
悪循環の第一歩は、常に親の攻撃なのです。

子どもは、ガミガミ言われて気持ちが腐り、ますますだらだらします。
ダメだダメだと言われて、ますます意欲がなくなります。
親に対してもイヤな気持ちになり、ますます素直になれなくなります。
言われれば言われるほど、ストレスと不信感がつのります。

今までと同じやり方で、この悪循環から抜け出すことは絶対にできません。
それは、みなさんもよくわかっているはずです。

この悪循環をどこかで断ち切る必要があります。
許すことで、それが断ち切れるのです。
親が最初の一歩を変えるしかないのです。
ほかに断ち切れるところはありません。

子どもに最初の一歩を求めてもムリなのです。
子どもが少しでもしっかりしてきたら叱るのをやめるのに、と思うかもしれません。
でも、そう思っている限り悪循環から抜け出すことはできません。

許し難いことでも許してやってください。
それが、新しい循環への第一歩であり、それ以外にはないのです。
そのことを、まず頭に入れておいてほしいと思います。

そして、次のことも頭に入れておいてください。
それは、子どもが今そういう状態でいるのには、理由があり、必然性があり、意味があるということです。

宿題をやらないのは勉強がわからないのかもしれません。
勉強はわかるけれども意欲がわかないのかもしれません。
意欲がわかないのは、それが楽しいと思えないからかもしれませんし、それに意味を見いだせないのかもしれません。

または、今まで自分なりにいろいろなやる気の芽があったのに、それらを摘まれてきた結果そういう状態になっているのかもしれません。
または、ほかに何かあるかもしれません。

その理由や必然性や意味が、ある程度人間にわかることもあります。
でも、まったくわからないこともあります。
というより、本当に深いところは人間にはわからないのです。

宿題や勉強だけでなく、すべてにおいてそうです。
片付け、生活習慣、家事やお手伝いにおいても、万事そうです。
誰にもわからなくても、必ず、そうである理由、必然性、意味があるのです。
理由も何もなく、ただそうなっているわけではないのです。

そして、子どもはその状態をなかなか変えられないのです。
大人が自分を変えられないのと同じように、いえ、それ以上に、子どもは自分を変えられないのです。

子どもの時のほうが変えやすい、などとよく言われます。
「鉄は熱いうちに打て」だから、性質を変えるにも苦手なことを直すにも子どもの時のほうがいい、などと言われます。
でも、これは大人の勘違いです。
本当は、子どもは性質を変えたり苦手を直したりするのが苦手なのです。
大人以上に苦手なのです。

もともと、それは誰にとっても難しいことです。
でも、子どもよりも、まだ大人のほうがやりやすいのです。
人生経験・知恵・思考力・意志力・実行力、どれを取っても大人のほうが勝っているからです。

そういう大人でも、自分を変えるのは難しいことです。
みなさんも、なかなか自分を変えられないはずです。
ましてや、人生経験・知恵・思考力・意志力・実行力で劣る子どもはなおさらです。

これらのすべてをわかってやって、許してやってください。
というより、本当にその子の立場に立って思いをやれば、許すほかにないのです。

そしてさらに、次のことをぜひ、頭に入れておいてください。
だらだらしているのは黙認して、それに直接的に働きかけようとしないで、その分、親はそれ以外の別の方面から「できること」と「やるべきこと」をやることが大事です。
しかも、成果を求めず、それ自体を楽しみながら、です。
その結果として、つまり間接的な結果として、物事がいいほうに回転し始めるのです。

親が気になる子どもの短所を、直接変えようとすると、必ず失敗します。
それ以外の、別の方面からうまく働きかけることが大切なのです。
そのために、許し難いことを許すことが必要になるのです。

この辺りの理解は、とてもとても大切です。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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