立正大学 文学部 社会学科(2) 「場数」を踏めばどんな学生もたくましく育つ[大学研究室訪問 学びの先にあるもの 第13回]
立正大学 文学部社会学科(2)
「場数」を踏めばどんな学生もたくましく育つ
日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。シリーズ連載13回目は、「地域安全マップ」の考案者として知られる立正大学の小宮信夫教授の研究室です。マップが生まれた経緯や指導方針などを語っていただいた前回に引き続き、大学時代に成長するために必要なことや、これからの時代に求められる大学選びの基準などについて伺いました。
先輩から学び後輩に教える立場に
子どもがより理解しやいように、学生が寸劇を交えて解説
学生の中には、恥ずかしがりで、人前でまったく話せないような人も少なくありません。しかし、そんな学生でも卒業するころには別人のように堂々と話せるようになります。それは、「場数」を踏むからです。マップづくりの実習は、年10回程度あります。「犯罪社会学研究会」というサークルに入っている学生は、さらに30回以上も経験します。それだけの場数を踏むうちに、人前で話すことに慣れ、心に余裕と自信が生まれるのです。
マップづくりのためのフィールドワーク中
マップづくりの方法は、言葉で教えられて身に付けるのではありません。経験のある先輩と一緒にマップづくりを行い、先輩が子どもたちを指導する姿から学んでいくのです。いわば、昔の徒弟制度のようなものです。実践を重ねる中で先輩の背中から学んで成長し、やがて独り立ちして、1年後には後輩に教えられるほどの立場になる。そうした方法も自主性を育むために効果的だと思います。
インタビューはアポとりから学生自身で
子どもたちのマップづくりを学生がサポート
マップづくりの実習だけでなく、教室で行う演習でも、自主性を育てることを意識しています。発表者には、資料はあらかじめ出席者に配らせ、各自がそれを読み込んでいることを前提に、演習を行います。発表者は出席者一人ひとりに質問をし、それが終わったら、逆に、出席者全員から発表者へ質問します。このやり方なら、誰も傍観者にはならず、主体的に演習に参加できます。
卒論では、必ずインタビュー調査を入れさせます。誰にインタビューするかを自分で決めるのはもちろん、アポとりから取材などのすべてを、自分一人で行わせます。私は、インタビューにつながる場に連れて行くことはありますが、直接、誰かを紹介することはしません。学生たちは、何人にも断られ、泣き言を言いながら、それでもあきらめずにトライしてようやくインタビューを実現させます。それも、自主性を育む経験になります。
教員と社会とのつながりも大学選びの基準に
私は、大学とは学生に知識を与える場ではなく、学生がもともと持っている潜在的な力を引き出す場だと思います。教員はそのためのコーディネーターのようなものです。マップづくりは、犯罪社会学について学ぶために適しているのはもちろん、学生の力を引き出すために最適な場だと考えています。
一般に、大学は閉じられた場ですから、なかなかそういう機会は設けられません。しかし、積極的に大学の外に出て活動をしている教員ならば、学生にそういう機会を提供することができます。お子さんに大学で、社会で生きていくために必要な力を養ってほしいと願うならば、教員の研究の中身だけでなく、教員がいかに社会とつながっているか(どのくらい社会的な活動をしているか)も、大学選びのひとつの基準になるのではないでしょうか。
学生に聞きました! |
吉野麻玲さん(4年生、東京都出身、立正大学犯罪社会学研究会副会長) |
木村友美さん(4年、千葉県出身、立正大学犯罪社会学研究会会長) |