「コミュニティ・スクール」増えたけど課題は?

コミュニティ・スクール」という制度があるのをご存じでしょうか。以前にも紹介しましたが、保護者や地域住民が直接、学校の運営に参画できるというもので、4年前に制度化されました。文部科学省がこのほど、2008(平成20)年4月1日現在で調べたところ、全国29都道府県で343校が指定されていることがわかりました。前年に比べ、146校も増えています。ただし、制度化されて間もないこともあって、まだまだ課題があるようです。

指定された学校の一覧を見ると、地域的にずいぶん偏りがあることが一目瞭然です。実際、京都市だけで110校と全体の3分の1を占めているほか、島根県出雲市で49校、岡山市で35校、東京都世田谷区で22校、同三鷹市で19校などとなっています。
実はコミュニティ・スクールは、学校が宣言しただけでなれるものではなく、その学校を設置した教育委員会からの指定という手続きが必要になります。多くの学校が指定を受けている自治体では、逆に、教育委員会自体が管轄する学校の全部を一括指定したり、ほとんどの学校に指定を受けることをすすめたりしている、という事情があるのです。

一方、コミュニティ・スクールになれば、実はけっこう、大きな権限を持つことができます。たとえば、先生の人事です。さすがに先生を独自に採用することはできませんが、どんな先生がほしいのか、あるいは今いる先生に「異動しないでほしい」と思ったり、隣の学校にいる優秀な先生に「うちの学校に来てほしい」と思ったりした場合、コミュニティ・スクールに設置される「学校運営協議会」(教員と保護者らの代表者で構成)の意見として、人事権を持つ都道府県教委に伝えることができます。それを受けた都道府県教委は、合理的な理由がない限り、その意見を尊重しなければならないと、法律で定められています。なお、学校運営協議会はその学校の教育課程や予算などの承認権も持っていますから、校内で絶大な権限があることは言うまでもありません。
ただし、指定済みのコミュニティ・スクールがそうした権限や効果を十分に発揮できているかというと、そうとは限らないのが現状のようです。佐藤晴雄・日本大学教授らの研究グループが2007(平成19)年7月現在で調査したところ(回答185校)、実際に教員人事の意見を出した学校は5校に1校程度にとどまっていました。それも、多くは「一般的要望」でした。もっとも、「自校の特定教員を転出させない要望意見」や「他校(同市区町村)の特定の教員を自校に任命するよう要望する意見」を出したのも、それぞれ4校に1校ほどありましたから、制度や運営が定着してくればもっと活用されるのかもしれません。

佐藤教授らの調査には、保護者や地域住民が積極的に学校にかかわってくれるようになったり、学校が活発化したりするという効果があったと、多くの校長が答えています。参加する保護者のかたには大変かもしれませんが、事例集も発行されていますから、自分たちの手で学校を変えられる可能性を秘めた制度に、関心を持ってみてはいかがでしょうか。

<参考>
コミュニティ・スクール事例集

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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