フリースクールのスタッフに気持ちが救われた不登校の子どもたち 話を聞き寄り添うことの大切さ[不登校との付き合い方(22)]
お気に入りに登録
- 育児・子育て
不登校の子どもの心を癒すことができるのは、ただひたすらに気持ちを聞いてあげることだと、「不登校新聞」編集長の石井志昂さんは話します。学校の先生や保護者には、なかなかできない、フリースクールのスタッフが担ってくれる役割とはどのようなことなのでしょうか。学びの場としてだけではない、フリースクールの一面をのぞいて見ましょう。
学校とは違う「スタッフ」の存在がフリースクールの特徴の一つ
フリースクールの特徴のひとつとして、学びの指導だけではなく、子どもたちの心のケアもする職員(スタッフ)がいることが挙げられます。実際にフリースクールに通っていた人たちから話を聞くと、スタッフに心理的なケアにたけた人が多いことがよくわかります。
その心理ケアとは、話をとにかくよく聞くことです。不登校だったある人は、フリースクールのスタッフに救われたと話しています。その人は家庭が複雑で、一時期ネグレクトのような状況もあり、苦しい家庭環境でしたが、さらには学校でもいじめに遭い、不登校になりました。本人は理路整然とそのことを語りますが、フリースクールに通うようになるまで「学校の先生もスクールカウンセラーも、お医者さんも、誰も自分の話を最後まで聞いてくれなかった」と言っています。そういう大人たちは、必ず途中で話をさえぎって「あなたはこうしなさい」と言うばかりで、一緒に悲しんでもくれなかった、と。けれどもフリースクールに来て、はじめてスタッフが心を砕いて何時間でも話を聞いてくれて、気持ちが救われたのだそうです。
実は、その様子を私は近くで見ていたのですが、ほんとに何時間でもしゃべるんです。さすがに解放してあげないと、スタッフとしてのほかの仕事ができないだろうというくらい。毎日毎日、その人はスタッフに話していました。しかも、同じような内容の繰り返しで、前にも聞いた話を延々としているんです。でも、非常に訓練されたスタッフで、辛抱強く話を聞いていました。
「話を聞いてもらい気持ちが救われて、ようやく自分で自分を救おうと思った」
たくさん話を聞いてもらったあとに、その人は生活改善をし始めました。親元を脱して祖母と暮らし始め、まともな家庭環境になり、社会的な保障も受けるようになりました。そして、自分の学びの環境を整え、フリースクールで様々な企画をしたり学んでいけるようになりました。その人は、「自分の気持ちが救われて、はじめて自分を救おうと思った」と話しています。
いくら周りから「そんな家なんか早く出なさい」とか、「いじめられたことは気にせずに新しい環境に行けばいい」などといわれても、まず自分の気持ちが救われないと、行動を起こせない、ということなんですね。
このようにして、多くの人が、「フリースクールに来て受け入れられた」、「ほかにも学校に行っていない子がいてホッとした」と言って、自由に遊んだり学んだりしながら、次の進路へ、自分のタイミングで進んでいくということになります。
「自分のタイミングで、次のステップへと進むことができる場所」、それがフリースクールですね。
フリースクールの月謝は、平均して33000円です。この月謝は決して安くありませんが、公的な資金源がないところがほとんどなので、フリースクールの内情は非常に厳しいところが多いです。国の調査をもとに私が試算したところ、スタッフの平均月収は16万円です。多くの人は自身の生活や将来設計を犠牲にしながら活動しているというのが現状だということも、覚えておきたいことです。
まとめ & 実践 TIPS
フリースクールは、学びの場である前に、子どもひとりひとりと向き合うスタッフがいる場所です。アドバイスするのではなく、自暴自棄になった人の話をひたすら最後まで聞くこと。聞くことでしか、傷ついた子どもの気持ちは救うことができません。単に学習するだけでなく、子どもの成長を支えて応援してくれるのが、フリースクールという場だといえそうです。
(文・取材/関川香織)

- 育児・子育て
あなたにおすすめ
- 不登校の原因「いじめ」が低学年化している現代、子どもを救う「根拠のない自信」をつけるには【不登校との付き合い方(26)】
- 1歳の子どもが1日に何度も目をぎゅっとつぶる。何かのサイン? 小児科医が回答!
- 耳 耳鼻科 言葉(言葉の発達で少し気になることが…)
- 1学期に「学校に行きたくない」と言っていた子どもの夏休み。実は大切なこの時期に、親が気を付けておきたいこととは【不登校との付き合い方(29)】
- 子どもの「まばたき」が多くて気になる…これって「チック」?原因や解消法は【医師監修】
- しゃべらない 絵本(ものの名前や、意味のある言葉を…)
- 思いついた時にアドバイスすると、失敗する。子どもの気持ちを聞き出すために大人が必要なのは?[不登校との付き合い方(4)]
- 色がわからない2歳の子ども。色覚異常の可能性は? 小児科医が回答!
- 言葉 出なくなった(1歳9ヵ月ごろから言葉がうまく…)
おすすめ特集
こちらの記事もおすすめ
-
小学生におすすめの簡単だけどすごい工作16選!低学年から高学年まで学年別で解説
-
【小学生がなりたい職業】1位は4年連続「ユーチューバー」
-
【小学生の持久走・マラソン大会のコツ】おすすめの練習方法、速く走る戦略は?
-
自由研究テーマ大特集!小学生・中学生の夏休みに試したい実験、工作、調べ学習
-
小学校の年間学校行事(イベント)一覧! 分類できる「5つの内容」と傾向
-
かけ算(九九)の覚え方 苦手な子必見!暗記だけじゃない勉強法とは
-
【専門家】小学生の漢字の覚え方のコツ!苦手な理由別の勉強法やNG勉強法を紹介
-
【学年別】小学校の時間割の特徴 授業時間や1日の流れは?
-
メタ認知とは?教育で注目される理由や子どもの力の伸ばし方は?