不登校中の勉強はどうする? 「勉強したい」を引き出す、子どものタイプに合わせた勉強方法
- 育児・子育て
「学校に行かなくなってから、勉強ができているか心配」
「来年は最終学年だし、進学が不安」
「子どもの勉強をみたいと思っても、気持ち的にも時間的にも正直大変……」
お子さまの不登校が続くと、保護者のかたが特に気になるのは「勉強のこと」ではないでしょうか?
また、保護者の「勉強してほしい」という気持ちが負担になってしまわないか不安に思うかたもいらっしゃるかもしれません。
中学校で11年間教師を務めたのち、現在はフリースクールの運営に携わっている信田雄一郎さんにお話を伺いました。
お子さまのタイプに合わせたおすすめの学習法をご紹介しますので、お子さまの状況に応じてぜひ参考にしてください。
不登校中の勉強、保護者と子どもの悩みは?
お子さまの不登校が始まると、保護者のかたは、勉強よりまず「どうして学校に行けなくなったのだろう?」という悩みを抱えるのではないでしょうか。
そして、自宅で過ごす期間がある程度続いたところで、勉強の進捗や進学、受験が気になってくるかたが多いようです。
この時期になるとフリースクールへの通学を始めるお子さまもいますが、保護者のかたとしては「家にこもらなくなったのはよかったけれど、フリースクールで勉強しているのかな?」と新たな心配を感じることもあると思います。
一方で子どもは、小学校低学年のうちはあまり勉強のことは気にしていないものの、小学校高学年や中学生になると、不登校の初期段階から勉強のことが常に頭の片隅にあることが多いようです。
「授業には出たくないけど、家でどうやって勉強すればいいかわからない」
「高校受験にも影響があるかも……」
など、勉強の遅れや進学に対する不安を抱えているお子さまが多いのです。
つまり、保護者のかたより先に、お子さまは勉強に関する悩みを意識し始めていることになります。
早くから気になっているからこそ、接し方しだいで、お子さまが自ら学習に向かうよう導いてあげることは十分に可能なのです。
不登校中の勉強スタイル5つ それぞれのメリット
不登校中のお子さまに限らず、「どんなふうに勉強するのが向いているか」は人それぞれ。
フリースクールに通いながら少しずつ勉強を始めるのが向いているタイプもいれば、いわゆる「ホームスクーリング」といって自宅でコツコツ取り組むほうがはかどるタイプもいます。かの有名なエジソンもホームスクーリングで学んだ一人です。
勉強のタイプも、お子さまのタイプも無数にあります。大切なのは、いろいろな方法を試してみること。不登校を経験したかたや先生に意見を聞いてみてもよいと思います。
自分に合う方法を見つけることで、継続的な学習習慣が身に付くだけでなく、自己肯定感を持つことにつながるのも大きなメリットです。
ここでは、不登校中に実践できる勉強スタイルを複数ご紹介します。
お子さまの性格やお悩みに合わせて、フィットしそうな方法を検討してみましょう。
特に小学生のうちは、勉強の習慣を付けることが重要なので、声かけなどのサポートができるとよいですね。中高生になると、自分なりの勉強法がわかってきたり、反抗期で保護者の意見を受け入れにくかったりするお子さまもいるため、見守る姿勢をベースに、必要があればサポートするようにできると理想的です。
とはいっても、声かけをはじめとしたサポートを保護者のかたが密にするのは大変なので、難しい場合は塾や家庭教師をはじめとした専門家に遠慮なく頼るとよいと思います。自学自習の習慣を付けることを目的とした塾などもあるので、そういった視点で勉強スタイルを選ぶのもよいでしょう。
自分のペースで取り組める「自宅での自主学習」
自主学習は、教科書や市販の参考書、スマートフォンやタブレットの学習アプリなどを活用して、自力で勉強する方法を指します。
「自分のペースで取り組みたい」「学校の授業は簡単すぎてつまらない」というお子さまには向いている方法です。
費用が安く済む点も見逃せません。
ただし、理解できない内容が出てきたときに先生などに質問するのが難しく、一度つまずくと学習習慣が途切れてしまう場合も。
また、不定期サイクルで取り組むだけでは学習時間が短くなりがち。特に小学生のうちは、保護者のかたが「今日はどの単元をやる?」「得意な算数から始めようか」などと声をかけてあげることが大切です。
自分のペースでバランスよく学習を進められる「通信教育」
定期的に届く紙やデジタルの教材を使って、1人で学んでいく方法。
塾やフリースクールなどに比べると費用が安く済み、届いた教材に取り組むことでバランスよく学べるのが大きなメリットです。
ただし、自主学習と同じく、自己管理能力が求められます。タブレット学習はついつい関係のない動画を見てしまうなどの誘惑も多く、お子さまにやる気がないと続きにくく、未着手の教材をためてしまうことも。
小学生の場合は特に、可能なら保護者のかたが時間割をつくってあげるなどの方法で関わるとよさそうです。
つまずきを丁寧にサポートしてもらえる「家庭教師」
民間の家庭教師サービスなどを利用して、自宅に家庭教師を呼んで指導をしてもらう方法もあります。
オンライン家庭教師のサービスを提供している企業もみられます。
受験など明確な目標があるお子さまにとっては、「つまずいているところを質問しやすい」などのメリットがあります。
しかし、勉強以外のことを相談するのが難しいことがあり、学習へのモチベーションが低い場合は続きにくいかもしれません。スクールによっては、さまざまな相談に乗ってくれるところもあるので、見学の際に確認してみてもよいと思います。
子ども一人ひとりに合わせた指導を受けられる「個別指導塾」
個別指導塾では、子ども一人ひとりに合わせて、個別に勉強を教えてくれます。
講師がペースメーカーになってくれるうえ、質問もできるので、塾の環境が気に入れば勉強を続けやすいでしょう。
不登校のお子さまに配慮した指導を行ってくれる塾もありますが、費用が高額のケースが多いのは気になるところ。
また、塾にはほかの児童・生徒も出入りするため、お子さまが同級生などに会いたくないなら、少し遠くの個別指導塾に通うといった工夫も求められます。
学校復帰を手厚くサポートする「適応指導教室」
不登校のお子さまの学校復帰を目的とした支援機関で、各自治体などによって運営されています。
活動内容は、学習支援のほかカウンセリングや環境適応の練習など、施設によって多岐にわたります。
学校と連携している施設の場合は、教室に通えば学校の出席日数としてカウントされるのもメリットといえるでしょう。
お子さまが「登校したい」という意思を持っているなら、適応指導教室を活用して学習支援を受けながら、少しずつ集団で学ぶ環境に慣れていくのも1つの方法です。
ただし、再登校を前提とした施設なので、「今の学校には戻りたくない」と考えるお子さまにはハードルが高いかもしれません。保護者の「学校に戻ってほしい」という思いがお子さまのプレッシャーになってしまう事例も。ぜひ、お子さま自身の意向を尊重するようにしてください。
フリースクール・オルタナティブスクール
フリースクールは、不登校をはじめ、さまざまな事情を抱える児童・生徒が通う施設。
またオルタナティブスクールは、独自の教育理念・方針により運営されている学校を指します。
いずれも学習カリキュラムが柔軟なので、「勉強に取り組む前に、まずは子どもが安心して通える場所をつくってあげたい」というご家庭に選ばれています。
どちらも「公教育になじまない児童・生徒を受け入れる」という基本スタンスがあるため、不登校のお子さまは通いやすいでしょう。
ただ、フリースクールもオルタナティブスクールも施設により費用に差があるため、気になる場合は事前の確認をおすすめします。
【体験談】不登校の今、勉強はどうしている?
登校できない事情がある中で、お子さまは自宅などでどのように勉強しているのでしょうか?
不登校のお子さまがいらっしゃる保護者のかた2名に、「勉強にどのように取り組んでいるのか」「進学準備はどのようにしているのか」など気になるポイントを教えていただきました。
小5女子 M・Tさんの場合
娘は小1から登校をしぶるようになり、小4からはほとんど欠席するようになりました。
もともと「勉強が楽しくない」と訴えていたので、学校に行かなくなってからはまったく手をつけなくなりました。
通信教育をやらせていましたが、学校の授業を受けていないせいか自力では問題が解けず、だんだんやらなくなってしまったので解約しました。
現在もほとんど勉強していなくて、親としてはとても心配です。
特に算数は積み重ねの教科なので、わからないところがどんどん増えているようです。
本人も気になってはいるようで、ときどき幼なじみの友達に勉強を教わったり、大学生の親戚などにわからないところを質問したりしています。
小4のときの担任の先生は放課後に勉強をみてくれたのですが、進級して担任が替わってからはなんとなく習慣が途絶えてしまいました。
来年は6年生なので、どの中学に進学させたらよいかも今から悩みどころです。
娘自身は「友達もいるから地元の中学に行きたい」と言っていますが……。
中学にも早めに事情を伝えて先生方と協力関係を作り、少しでも勉強に向かってくれる方法を模索しなければと考えています。
中3男子 Y・Sさんの場合
息子の不登校が始まったのは中1からです。
それまでは毎日通学し、就学前から続けてきた通信教育でも学んでいました。
成績も悪くはなく、特に理数系の教科が得意でした。
学校に通えなくなってからしばらくはまったく勉強せず、読書ばかりしていたようです。
保護者としてはもちろん気になっていましたが、あまりうるさくは言いませんでした。
「勉強してほしい」というより「なぜ急に登校しなくなったのか」というとまどいが大きかったからです。
中2になっても再登校には至らなかったものの、スマホのアプリや動画を使ったりして自分に合う勉強法を探し始めました。
いろいろ試した結果、書店で探した参考書でじっくり学んでいく方法に落ち着きました。
勉強を再開したことで、進学についても前向きに考える気力がわいてきたようです。
中3になってからは通信制高校の学校説明会に出かけており、「高校を卒業したら、大学に進学したい」と言っています。
不登校児の保護者はみな、子どもの勉強や進学・進路に対して不安を感じていると思います。
でも、子どもは本当に興味があることは自ら学んでいくものです。
子どもの意思を大切に、必要に応じてサポートしてあげたいと考えています。
体験談にもあるように、「早めに相談する」ことはとても大事です。また、「いろいろな方法を試す」も非常に大事なポイントといえます。
ですが、お子さまの意思を尊重しようと思っても、なかなか難しいのが現状でしょう。つい「高校にはいきたいんだよね?」のような聞き方をしてしまうこともあると思いますが、これでは「学校に行きなさい」と言っているように聞こえるかもしれません。できれば「はい」か「いいえ」のクローズドクエスチョンではなく、「興味があることは何?」「どんな勉強が面白いと感じる?」などお子さまが自由に語れるようなオープンクエスチョンで聞いてみましょう。
勉強にあたって、始めると良いこと3つ
自宅や個別指導塾、フリースクールなどで学ぶにあたっては、学習の土台となる環境を整えたり、学びが身に付きやすい態勢を作ったりすることも大切です。
勉強にあたって、「机に向かう」こと以外で取り組みたいポイントを3つご紹介します。
部屋や机の片付けをする
学習に取り組もうとしても、手近に遊び道具などがあると、勉強への集中度が下がりがち。特にスマートフォンなどのデジタル端末は誘惑が多いため要注意です。あらかじめ、買う時に使用のルールを設定できるといいですね。
「勉強の前には机の上を片付ける」といった習慣を作っておけば、お子さまが勉強モードに入りやすくなります。
リビングで勉強する場合も、保護者のかたが声をかけてテーブルを片付けるなどのアクションから始めるとよいでしょう。
生活リズムを整える
不登校のお子さまは、昼夜逆転するなど生活リズムが乱れがちです。
自宅で過ごす場合も1日のタイムスケジュールをざっくりつくり、その中に短時間でも勉強に取り組む時間をつくるとよいでしょう。
はじめは「1問だけでも問題を解く」「10分だけ教科書を読む」など実行しやすい内容を設定し、やりきったらほめてあげることも大切です。
成功体験がつくれれば、徐々に勉強時間を増やしていけばよいでしょう。
体力をつける
不登校の生活では、身体を動かす機会が少なく、体力が落ちやすくなります。
体力が低下した状態だと、勉強中も集中力が続きにくく、意欲が続きにくいと懸念されます。
できるだけ体力が維持できるよう、一緒に買い物に出かけたり、散歩に誘ったりして、身体を動かす機会をさりげなく作ってあげるとよいですね。1日5分でもいいので、外に出て日光を浴びる時間を作りましょう。特に午前中がおすすめです。
勉強を続けるためのコツ
不登校のお子さまを見ていて、「勉強することもあるけどムラがある」と感じることはないでしょうか。
その場合は、「お子さまの勉強タイプ」と「実際のやり方」が合っていないのかもしれません。
学習の取り組み方のタイプは、以下の3つに分けられます。
・コツコツ型:毎日一定量を少しずつ勉強
・短期集中型:集中して広い範囲を短時間で一気に勉強
・インターバル型:休憩を入れながら一定時間勉強
お子さまが短期集中型の場合、保護者のかたの経験から「毎日コツコツやるといいよ」とアドバイスしても、お子さまには合わないかもしれません。
お子さまの様子を見ながら、合うやり方を一緒に探してみるとよいでしょう。
さらに、知識の身に付け方に関しても、「図や写真、動画を見てインプットする」「文字をたくさん読みながら知識を吸収する」などさまざまな方法があります。
お子さまの興味を考えることで、お子さまに合う教材も見つかりやすくなるでしょう。
まとめ & 実践 TIPS
お子さまが勉強に取り組むにあたって、合うやり方を見つけることとあわせて、「将来の目標を持つこと」は大きなきっかけになります。
その目標設定には、保護者のかたの声かけが役立ちます。
たとえば不登校の期間中、テレビやインターネットの動画を見ているとき、お子さまが興味を示した人やモノ、先進技術などに対して、さりげなく「勉強することで近づいていける」と示すのも1つの方法です。
また、その際に大事なのは「夢に近づく方法をスモールステップで示すこと」。勉強が夢につながるとわかったとしても、夢を叶える道のりが果てしないと途方に暮れてしまいます。たとえば、ゲームが好きなお子さまに、プログラミングの仕事について話す際は、難しいコードが無数にあることや、専門的な知識を学ぶ大変さを伝えるのではなく、いま学んでいる算数や数学の考え方を知ることが、実はゲーム作りには欠かせない一歩なのだと伝えるようにしてみてはいかがでしょう。
「今、勉強すること」が未来につながるのだとイメージできれば、お子さまはだんだんと学習に目を向け始めると思います。
お子さまが少しずつでも未来を作っていけるよう、保護者のかたがサポートしてあげてください。
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