公立小中高から現役ハーバード大合格へと導いた廣津留真理さんに聞く!子どもが自ら伸びていく環境のつくりかた
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大分市でオンライン英語教室を主宰する廣津留真理(ひろつる まり)さん。一人娘の廣津留すみれさんは、公立小中高から留学経験なしで米国ハーバード大学現役合格&首席卒業。ジュリアード音楽院を経て、現在プロのバイオリニストであり、大学の客員教授としても活躍中です。
すみれさんを学習塾なしの家庭教育のみで育てられた廣津留さんは「塾などに頼らなくても、主体的に学ぶ環境を家庭につくれば子どもは自ら伸びていきます」と断言します。
そんな廣津留さんに、子どもが自ら伸びていく家庭教育の環境づくりについて教えていただきます。
塾なしでハーバード大も家庭教育が基本! 私が《家庭教育》を重要視したわけ
私が娘を家庭教育のみで育て、学習塾などへの外注を一切しなかった理由は2つあります。1つは、妊娠中に教育関連の哲学書をはじめ育児書を200冊ほど読むなかで、教育の中心となるのは家庭なのだと改めてその重要性に気付いたから。
もう1つは、30年子ども向けに英語を教えるなかで、伸びていく生徒の家庭の勉強へのスタンスには明確な違いがあると感じたからです。伸びていく生徒の家庭って勉強のとらえ方が広いんですよね。成績やテストのためではなく、一生続くものとして勉強をとらえ、親も子もにこやかに学びを楽しんでいるんです。そういった勉強への哲学のようなものは、外注では身に付けられないと考えました。
グローバル時代に求められる力も意識
家庭教育を重視するにあたり「これからの世の中ではどんな力を身に付けていけばいいんだろう?」と世界中のさまざまな学校のパンフレットも取り寄せました。
そこでわかったのは、世界ではリーダーシップやコミュニケーション力、マルチタスク力が重視されているということ。これらはグローバル時代に必須の力ですが、日本の学校や塾では教えてくれないものです。
ならば、5教科の勉強は学校に任せて、それ以外を私が楽しみながら家庭で教えようと考えました。私が教える以外に手段がなかったっていうのもあります(笑)。
家庭教育で大切なのは《瞬間を楽しむ明るさ》と《間違っても大丈夫な雰囲気づくり》
家庭教育に最も大事なのは、《環境づくり》の一言に尽きます。《瞬間瞬間を楽しむ明るさ》と《間違っても大丈夫という雰囲気づくり》が何よりも大切です。 楽しい瞬間を積み重ねていけば、学びへの意欲はどんどん刺激されます。間違っても大丈夫という心理的安全性が確保されていれば、失敗を恐れずにどんどんチャレンジしていけます。勉強だからとかしこまったり、「勉強しなさい」と指示したりするのではうまくいきません。
「そうはいっても、つい勉強しなさいと言ってしまう……」とお悩みのかたもいらっしゃるかもしれません。そんな場合には、こんな声のかけ方がおすすめです。
「今日はこれを何ページと、あれを何ページやろう」ではなく、「これとあれをやったら自由時間。何する?」と投げかけてみるのです。
それだけで、子どもの気持ちってずいぶん変わると思いませんか?
子どもに教えるだけでなく、保護者自身もアップデートを
家庭教育で学ぶのは、子どもだけではありません。保護者自身も学び、知識をアップデートしていくことが必要です。自分が勉強していないのに、子どもに勉強しなさいなんて言えないですよね。
保護者が教養を身に付けることは、子どもの学びにも大いに役立ちます。子どもが学びを深めていくためには、文化資本が大切といわれますが、保護者の教養もその1つといえるでしょう。仕事や育児で忙しいとは思いますが、自分自身をアップデートして厚みを増していくことも大切にしてください。時間がないというかたには、名著のあらすじサイトなどもおすすめですよ。余談になりますが、娘いわく、ハーバード大でもあらすじサイトは人気だったようです。
伸びる子を育てるリビングとダイニングテーブル
子どもを伸ばしていくには、家庭教育の「場」にも工夫が求められます。
我が家がこだわったのは、何でも発言できるリラックスした雰囲気のリビングとダイニングテーブルです。
子ども部屋は作らず、リビング学習でした。コミュニケーションの中心は、2m20cmの大きなダイニングテーブル。気になったものをどんどん広げられるから、遊びの延長で勉強につなげられます。リビングには、家族みんなで使う大きな本棚も。
娘は、夫が本棚から本を手にとって読み出す姿を自然に目にしていたため、文字や本への興味も早くから生まれましたね。私も夜、ワインを飲みながら娘が興味を持ちそうな本を本棚の目につきやすそうな場所に並べたりしていました。
リビング学習というと子どもの勉強を監視することが目的だと思われがちですが、そうではありません。親子のコミュニケーションのすべてがリビング学習なのです。
私がいつも心がけていたいのは、「Show, don’t tell」の精神。親が「さぁ、今からリビングで勉強しなさい」とtellするのではなく、親自身が楽しんで読書したりする姿をshowするのです。
親が子どもと一緒に勉強するようになると、勉強が苦痛でなくなり、主体的に取り組みやすくなります。また、自然と会話が増えるので、要点をまとめて話す力がついたり、わからないことを親子で一緒に調べることで記憶しやすくなったりと、子どもの学習力がどんどん伸びていきます。
リビング学習の効果を高めるために保護者に求められるもの
リビング学習では、学習内容そのものだけでなく時間管理力やタスク管理力、集中力、やり抜く力(グリッド)も育まれます。いわゆる非認知能力と呼ばれる力ですね。それらを伸ばしていくには、お子さま自身に自己肯定感がしっかり備わっていることが大切。そのためには、保護者の関わりが非常に重要です。
まず第一に、手放しでほめてあげること。ほめはダダ漏れでいいんです。条件付きのほめではなく、無条件にほめてあげましょう。
どんなときでもあなたの味方というアンコンディショナルラブ(無条件の愛)が伝われば、子どもの自己肯定感は大きく育ちます。
たとえ、20%しかできていなかったとしても「20%しかできていないじゃない」というのではなく「20%もできたね」とほめてあげたいですね。
リビング学習で近くにいるからといって、子どもを監視するヘリコプターペアレントにならないことも大切です。ヘリコプターペアレントとは、ヘリコプターがホバリングするように子どもを見張り、過干渉をし続ける親のこと。
あれこれ口出しをされることで、子どもは萎縮し、自己肯定感が低くなっていってしまいます。それに、ヘリコプターペアレントの子どもは保護者を超えられないんですよ。ガチガチに管理して、自由度がないわけですから。
子どもを羽ばたかせるためにも、信じて任せるのも重要です。保護者のかたも心配ばかりしてるのって、楽しくないですよ。
カフェのようにリラックスできて思い思いに物を広げられるダイニング、好奇心が自然と刺激されるライブラリーのような本棚、繰り返しほめてくれる保護者。まずは、お子さまにそんな環境を準備してあげてみてください。それがベースです。そのうえで、次回ご紹介する具体的なタスク管理の仕方をご参考にしていただけるとよいでしょう。
まとめ & 実践 TIPS
公立小中高、塾なしでハーバード大現役合格という偉業を成し遂げた廣津留すみれさんを育てた家庭教育の環境づくり。そこには、廣津留さんの徹底した情報収集と、一貫して子育てを楽しむ姿勢がありました。環境づくりの何より大事なベースは、子どもへの無条件の愛。
子どもが安心して学べる環境づくりをベースに、学校や塾では教えてくれない《時間やタスク管理》、《やりぬく力》を、《TO DOリスト》を活用し無理なく育てられました。次回は、そんな方法についても教えていただく予定です。
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