【小学生】不登校気味の子に保護者ができること

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不登校の小学生が増加しています。文部科学省発表のデータによると、令和3年度では小学生の長期欠席者が180,875人(前年度113,746人)、うち不登校児童生徒数は81,498人(前年度63,350人)に(※1)
小学生の子どもが「学校に行きたくない」と言ったり、休みがちになったりした際には、保護者はどのようにサポートしていけばいいのでしょうか。過去には養護教諭として保健室を訪れる子どもと向き合い、現在はスクールカウンセラーとして子どもの内面のケアにあたる相樂直子先生に伺いました。

この記事のポイント

不登校の原因は複合的で1つではない

お子さまから「学校に行きたくない」と言われると、保護者のかたは驚いたりとまどったりすることでしょう。そして「何が原因なのか」が気になるのではないでしょうか。しかし、多くの不登校の子どもを見てきた経験からすると、原因は1つではなく複合的な要素が複雑に絡み合っていることが多いものです。その前提をまずは、おさえておきましょう。

子どもは「行きたくない」という気持ちに至るまでに、いろいろなプロセスで悩み、疲れ切っています。気持ちをうまく消化できず、頭痛や腹痛といった身体の症状が現れることも少なくありません。何も手につかない状態に陥ることもあるでしょう。何よりもまずは、疲れ切ったお子さまの気持ちに寄り添ってあげることが大切です。

家庭環境の変化や発達面の課題が要因となっているケースも

家庭環境の変化で、自宅が子どもの安心できる居場所とならず不安や緊張感が高まるケースも見られます。また、発達面に課題を抱える子どもの中には、コロナ禍の感染予防の観点から学校生活における変化や制限が増える中で、学校生活に適応するハードルが高くなり登校への不安が生まれるケースもあります。

「学校を休みたい」と言われたとき、保護者にできる3つのサポート

「学校を休みたい」というお子さまの気持ちに寄り添うためには、次の3つのサポートを意識してみてください。

「行きたくない」気持ちを否定しない

保護者のかたは、学校に行かないと勉強が遅れたり、一度休むと行きにくくなったりするのではないか‥‥‥といったことも心配になるでしょう。そのため、つい「行ったほうがいい」という立場に立った発言をしてしまうことがあるかもしれません。

しかし、お子さまは心も体も疲れ果ててSOSを出している状態です。まずは「行きたくない」というお子さまの気持ちを否定せず、受け止めてあげてください。

お子さまの気持ちを受け止めるには、「行きたくない」と感じている事実に、保護者としてしっかり向き合うことが必要になります。なぜ「行きたくない」と感じているのか、想像(創造)することも大切でしょう。

安易にお子さまの気持ちを否定してしまうとお子さまは「誰もわかってくれない」と絶望してしまうかもしれません。否定をしないことが寄り添いの第一歩と心に留めておきましょう。低学年のお子さまであれば、手を握ったり、ハグをしてあげるのも「受け止めてもらえた」と安心感を覚えるものとなるでしょう。

根気強く待ち、子どもをよく観察して話しやすい環境を整える

子どもは、行きたくない理由をうまく話せないものです。疲れ切って混乱状態にあることに加え、子どもの語彙(ごい)力では複雑な過程を整理して話すことは難しいでしょう。子ども自身「なぜ行きたくないのかわからない」ということもあるかもしれません。低学年であればなおさらです。

そのため、子どものペースを大切に、急がず根気強く待つことが大切。待つ間はお子さまをよく観察して、表情や仕草、食欲といったちょっとしたサインを受け取っていきましょう。
「今日は食欲がありそうだから、好きなおかずを作ってあげよう」など、日常的な何気ない普通のやりとりを重ねることで、お子さまの疲れ果てた心は少しずつほぐれていくものです。

お子さまがポツリ、ポツリと学校に行きたくない理由を話し始めたら、「そうだったんだね」「つらかったね」と共感を示してあげられるといいですね。

あまりたくさんのことを話してくれない場合も、続きを急かしたり、質問攻めにするようなことは控え、お子さまのほうから話してくれるのを待つ姿勢が大切です。

長期的な視点で考える

「なんとか学校に行かせないと」と短期的な視点で焦るのでなく、長期的な視点で子どもの自立や幸せのために何が必要かを考え直すことも大切です。

・どんな大人に成長してほしい?

・この子にとっての幸せとはどんなこと?

・自立した大人になるために何が必要?

・そのために、保護者として何ができるのか?

このようなことをゆっくり考え直してみると「学校に行かせなければ」という焦りや「これからどうなってしまうんだろう」という不安が少しずつ和らいでいくのではないでしょうか。

学校と連携して子どもを支えるために

「学校に行きたくない」と言う子どもを支えるには、学校との連携も欠かせません。学校と連絡を取り合い、学校の様子を把握しておくことができれば、取り残されているような不安感も軽減しますし、学校への復帰もスムーズに行いやすくなるでしょう。

学校への相談は「こんなことで……」と遠慮しなくて大丈夫

保護者のかたにとって、学校への相談はハードルが高く感じられるかもしれません。「学校を休みたい」と言い始めた段階などでは「こんなことで相談してもいいのかな?」と迷われることもあるでしょう。

学校側としては、そのような段階でも、気になることがあればぜひ相談してほしいと思っています。学校も様子が気になる子どものサインは察知していることが多いものです。保護者のかたからの連絡を機に、お互いの情報共有が進んだり、サポートをしやすくなったりするため、保護者のかたとの連携を強めたいと思っているはずです。

気になることがあれば早めに「子どもの様子について相談したい」と学校に連絡を入れてください。担任や養護教諭、スクールカウンセラーなど、状況に合わせて対応していただけるでしょう。

また「学校には登校できても教室には行きづらい‥‥‥」というような場合は、保健室登校など教室以外の居場所について検討してくれる場合もあります。学校側の体制にもよりますが、お子さまの状態に応じた支援を提供してもらえるように、話し合っていきましょう。

学校以外の支援先の活用も

不登校への対応は、学校以外でも支援が行われています。
たとえば、自治体(区市町村教育委員会など)が設置している「教育支援センター(適応指導教室)」は不登校の子どもの居場所としての機能が大きく、個人やグループでの学習支援を行っています。また、市区町村単位で設置が進んでいる「子ども(児童)家庭支援センター」では、電話や来所等で子どもや保護者からの相談に対応しています。悩みを抱え込まないためにも、SOSを伝えられる相談先を見つけていけるといいですね。

保護者のかたの心のケアも大切に

ここまで、保護者のかたにできるサポートについてお話ししてきましたが、お子さまの心に寄り添うためには保護者のかたの心のケアも大切にしていただきたいということをお伝えしておきたいです。

保護者のかたは、心配や不安が募るあまり、心がいっぱいいっぱいになっていませんか? 自分のことは二の次とせず、ご自身のメンタルヘルスも大切にしてくださいね。

不安は抱え込まず、アウトプットを

メンタルヘルスの維持には、不安のアウトプットをすることをおすすめします。「不登校はいつまで続くんだろう?」「勉強に遅れは出ないかな」「友達ができなくなってしまわないだろうか」「将来は大丈夫かな」などさまざまな不安があるかと思いますが、1人で抱え込まずに、次のような方法で周囲のかたに頼ってみてはいかがでしょうか。

・信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう

・子どもの担任や養護教諭、スクールカウンセラーに相談する

・子どもの不登校を経験している(した)親同士が交流する場(対面・オンライン)などに参加する

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが学校に行けていないときは、保護者のかたも不安や焦りがあるでしょう。
お子さまの不安や心の回復には、時間がかかるケースも少なくありません。
保護者のかたは、周囲の協力も得ながら、長い目でお子さまにとって何が幸せかを考えて、お子さまに寄り添ってあげてください。
 
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出典
※1
令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_1.pdf

プロフィール


相樂直子(さがら なおこ)

創価大学教育学部教授。博士(カウンセリング科学)。
学校心理学が専門で、子どもたちのメンタルヘルス、学校における多職種連携などについて研究している。
大学での養護教諭養成教育のほか、小・中学校のスクールカウンセラー、巡回相談心理士としても活動している。
著書に『先生に知ってほしい家庭のサイン』(少年写真新聞社)『教師・保育者のためのカウンセリングの理論と方法 : 先生をめざすあなたへ』(北樹出版)など。

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