「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない。知っておきたい子どもへの伝わり方とその影響

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朝起きてから学校に行くまで、学校から帰ってから寝るまで、「○○しなさい」「××したの?」と、子どもに向かってたくさんの声かけをしていますよね。ですが、ことば選びがちょっと違うだけで、子どもへの効果も、親子の関係も、良くも悪くもまったく異なってくるのです。どうしたら、子どもが生き生きと成長するような声かけができるのでしょうか。さまざまな心理学を生かした勉強法で「ビリギャル」を慶應大学合格に導いたことで有名であり、現在は人材育成やビジネス研修なども行う起業家として幅広く活躍する坪田信貴先生に伺いました。

この記事のポイント

子どもに響く声かけの基本となる考え方って?

——子どもへの声かけって、難しいなと思うことがよくあります。特に小学校高学年くらいになると、言うことを聞かなくなったり、「ママ、なんでそんなこと言うの?」と反抗されてしまったり。親としては子どものためを思って発している声かけ、どうしたら子どもに届くように伝えられる声かけになるのでしょうか。

坪田信貴先生(以下、坪田) おそらく皆さんは、子どもによかれと思って声かけをされていると思いますが、よく言いがちなことばについて、ちょっと振り返ってみてください。親としての一番の願いは、「自分の道を見つけて、しっかり育っていってほしい」ということのはずです。それなのに、気付いたら真逆の結果を導きかねない言動となっていることがあるものです。子育てでは、子どもに対してかけてはいけないことばというものがあります。

それをまとめたのが、アメリカの臨床心理学者テイビー・ケーラーが提唱した「13の禁止令」と呼ばれるものです。これは、人がその人らしく生き、本来持っている力を発揮させるために、してはならないことです。この禁止令に基づいて、子どもへの言動を振り返ってみると、「言ってはいけない言い方だった」と気づくことも多いはずなのです。

最も避けるべき、大きな傷を与えてしまう言葉とは

——具体的にはどのような禁止令があるのでしょうか。13あるうちから、坪田先生が特に大切だと思う禁止令、3つを例に挙げて教えてください。

坪田 13の禁止令はすべて大事ですが、あえて3つ選ぶなら、言ってはいけないことばの筆頭は「存在するな」。これは、ストレートな表現で言えば「おまえさえいなければ」とか「産まなければよかった」となりますが、これだけではありません。たとえば女の子に対して「男の子だったらよかったのに」、男の子に対して「女の子を育ててみたかった」などと言うのも「存在するな」と言っているのと同じことになります。人格どころか、そもそもの存在を否定するようなことばになるのです。

こんなことばを放っていたら、ほかの場面で「あなたのことを愛している」とか「あなたのためを思って言っているんだよ」とどれだけ言ったところで、それが真意としては伝わりません。自分のことを存在してほしくないと思っている人の言葉を、信じることができるでしょうか。だから、これが最も大きな傷を与えてしまうことばだと、私は思っています。

「人に迷惑をかけるな」と言うのは、その子の強い感性を抑え込むこと

2つめの言ってはいけない言葉は、「感じるな、我慢しなさい」。特に幼少期には不適切です。たとえば、外出先で子どもが何か欲しいものがあって駄々をこねて泣きわめいたとします。そういうときに、親としてはうるさくすることが対外的に恥ずかしいと感じることから、「周りに迷惑をかけるんじゃない!」と叱りがちです。でも実は、これは子どもらしい感性から起こしている行動です。

大人になると、泣き叫ぶほど「こうしたい!」という強い思いというものはそうそう起こらないことですよね。子どもが大人といちばん違うのはここなのです。子どもである瞬間の今でなければ発露しない強い感情を、周りの目を気にして抑え込むというのはもったいない話です。子ども時代になんでも我慢させて、「大人のようにふるまいなさい」と言うことは、子ども時代のその瞬間ごとに育むべき感性の豊かさを失わせることになりかねません。ここはとても大事なことです。

この場合は、「人に迷惑をかけるな」という対外的なことを気にした発言をする前に、なぜそれが泣くほど欲しいのか、自分のことばで説明させて、本人の気持ちに寄り添ってみましょう。

また、「我慢しなさい」ということは、自分でうまくできないことは自分でなんとかしなさい、ということばでもあります。「人に迷惑をかけるな」ではなく、自分でできないことは周りにいる人に助けてもらうということを教えたいところです。「どうしてそれがそんなに欲しいのか、ママ・パパにわかるように説明してごらん、どうしたらいいか、一緒に考えよう」と聞いてみる姿勢が大切です。

「考えるな」とは「自分の足で歩きなさい」と真逆のメッセージ

3つめの言ってはいけないことばは「考えるな」。「自分で考えることをするな、親の言うことを聞きなさい」ということばにつながりますが、これは口答えを許さないという姿勢です。権力を持っている人に従うことを良しとするために、自立心を育てられないことばになってしまいます。

また、「親の言うことを聞きなさい」と言っている人ほど、子どもが引きこもってしまったときに、「自分でちゃんと考えて、自分の足で歩きなさい」と言いがちです。典型的なダブルバインド(矛盾した2つのメッセージで相手をがんじがらめにすること。二重拘束)になりやすいのが、「考えるな」ということばなのです。

——言われてみると、耳が痛いことが多くありますね。「13の禁止令」については、坪田先生の新刊「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」に詳しく書かれているので、よく読んでみたいと思います。

まとめ & 実践 TIPS

「禁止」とされている事項は、どれも一見、「そんなこと自分は言わない」と思うことかもしれません。でも実際には、普段言ってしまいがちなことばの中に多く潜んでいることもわかります。してしまいがちな声かけ、その奥で親自身が何をどう考えているのかを、一度振り返ってみることが大事なのかもしれません。

坪田信貴先生の最新刊、「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)では、子どもに向けてつい言ってしまうひとことを、視点の違うことばに変えるだけで親子関係も変わってくる、そんな声かけのポイントを解説している1冊です。

次回は、ベネッセ教育情報サイトのアンケートで、保護者がよく言うことばの上位にランクインする「集中しなさい」ということばについて伺います。なぜ子どもは集中できないのか、どうしたら気が散らずに集中するのか、その方法について探ります。

プロフィール


坪田 信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、偏差値を上げてきた。起業家としての顔を持ち、人材育成、マネージャー研修なども行う。テレビ、ラジオ、講演会で活躍中。著書に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学現役合格した話」(KADOKAWA)など多数。最新刊は10月に発行された「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)。

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