ウィズコロナ時代の変わる友だち付き合い、変わらない友だち関係

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緊急事態宣言が解除され、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いなどの感染対策を行いながら、少しずつ日常が戻ってきている現在(2021年10月30日時点)。
これからのウィズコロナ時代の学校生活、友達関係について、発達心理学が専門の東京都立大学 人文社会学部 准教授の酒井厚先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

不安過剰にならずに学校生活を楽しむために

コロナ禍になり、1年半以上、2年近くの時間が経ちました。社会的にもある程度コロナに慣れ、学校も工夫をしながら対応できるようになってきたと思います。まだまだたくさんの人が集まる行事などは慎重にならなくてはいけないところもありますが、なるべく今までの学校生活を再開しようとがんばっているところだと思います。
そういった面では、学校の対応を信頼し、子どもたちが楽しく通えるようにおうちのかたはサポートしてあげることが大事だと思います。

コロナに対する情報も日々アップデートされていますので、過剰に反応しすぎずに、親子ともに精神的に落ち着いた状態で普段の生活をしっかり送ること、またお子さんが学校生活を楽しんでいるのであれば、その気持ちを受け入れて、おうちのかたはポジティブに学校に送り出してあげるのがいいと思います。

コロナ禍の海外の研究でも、「親のストレスは子どものストレスに伝播していく」というものがありました。
そういった意味でも、おうちの方が精神的に安定していることはすごく大事なことです。「学校に行っても友だちと近くで話しちゃだめだよ」「マスクは絶対外さないのよ」などと、心配でつい子どもに言ってしまいたくなるかもしれませんが、子どもがそれで不安が強くなっていないかは気をつけてあげてほしいと思います。もちろん、感染対策はしっかりしないといけないので、マスクや手洗いなど、家でしっかり教えるということが前提での話となります。

子どもはコロナ禍の生活でもうまくコミュニケーションしている

当初は分散登校などで、築きづらかった友達との関係性も徐々に、築けるようになってきた、元に戻ってきたように思います。
子どもたちは与えられた条件の中で、不便を感じながらもうまく順応していっているように見えます。
またコロナ禍になる前から、友達を作るのに時間がかかる子は、コロナ禍になったことで、友達作りが難しくなっている場合もあると思います。そういった場合は、たとえば友達を作る「機会」を増やすために、おうちのかたどうしのつながりがあれば、子どもどうしを連れて遊んだり、自治体などの子どもが集まる場に行ってみたり、感染対策をしながらいろいろな機会に参加してもいいと思います。
低学年のうちは特に、子どもだけではなかなか友達が作れないこともあるでしょう。おうちのかたが関わりながら、友達付き合いを学んでいくことで、学校でも友達作りができるようになっていくことが考えられます。

オンラインもルールを決めて上手に使おう

今後コロナがまた再拡大し、学校がオンライン授業や分散登校になった場合、中高生であれば、多くの子どもが直接会うことができなくても、オンラインゲームやSNSを使って友達とコミュニケーションができるでしょう。
ただ、小さいお子さんや小学生だとなかなかツールもなく、そううまくはいきませんので、たとえばおうちのかたが自分の持っているスマホや、タブレットを使わせて、友達どうしで会話をするということもあってもいいでしょう。子どもが友達とコミュニケーションを取りたいと思う気持ちを満たしてあげることは大切なことですから、ソーシャルディスタンスが必要な時のコミュニケーションツールについて、これからは考えていく必要があると思います。

また、オンライン上のコミュニケーションの取り方について、親子で話し合い、ルールを決めていくことも大事なことです。
ルールを決めたら、子どもが「自分はそれを守っている」と認識しているか、ぜひ確認してみてください。
親はオンラインのコミュニケーションには「ルールがある」と答え、子どもが「ルールは決められていない」と答えるケースは少なくありません(笑)。
きちんと親子で話し合ってルールを決めているか。子どもの意見が反映されていなければ、子どもも反発するでしょう。一緒に考えて決めたルールなら、「一緒に決めたのだから守ろうよ」とも言えます。
守らなかったら守らなかったことについてまた話し合う。
ルール改訂も視野に入れて話し合う。
そうやってコミュニケーションしていく中で、オンラインは自由に使えるものではなく、ルールがあるということを正しく認識して、上手に付き合うことが大事だと思います。

子どもたちどうしの会話には、親は入らず見守って

子どもがオンラインで友達とコミュニケーションをした後で、
「どんなことを話したの?」
「どんなことを書いたの?」など、
子どもに聞いても構いません。気になる発言をしていた場合は、
「それはこういう風に書いてもいいんじゃない?」とアドバイスしてもいいと思いますが、子どもたちどうしの会話は、子どもたちどうしでなされることに意味があります
なぜなら、友達関係、友達付き合いを通して、子どもは成長するからです。そういった子どもたちだけの世界は成長のうえでとても大事になってきますので、おうちのかたにはぜひ、見守っていただきたいと思います。

何かトラブルが起きた場合も、
「子どもが変なことを書いたから危険なのでやめさせる!」ではなく、
なぜそうなったのかを子どもに確認し、言語化することで、子どもたちも考えると思います。プロセスやステップを多く踏むことになりますが、それはコミュニケーションにおいて、大事なことだと思います。

コロナによってコミュニケーションや家族の絆が深まることも

コロナによって生活は変わりましたが、家族が一緒にいる時間も増え、絆が深まったということもあるかもしれません。そういった意味では、コミュニケーションのスタイルが変わっていくのは悪いことばかりではないと思います。
学校行事には制約があり、来春の入学式もどうなるかはまだわかりません。子どもの晴れの舞台が少なくなってしまい、悲しい、悔しい、かわいそうという気持ちをおうちの方が持つのは当然ですし、その気持ちを子どもと共有するのはとても大切です。

一方で、子どもたちの学校での様子を聞いてみると、例えば給食中に、「黙食」で聞こえる咀嚼音に興味を持つ子どもが現れたり、給食の時間のBGMをみんなで決めて楽しむようになったりと、想像したり工夫したりすることも見られます。子どもたちが、制約された状況でも楽しもうとする強さは、大人も見習うことができるのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

ウィズコロナの時代、友達付き合いやコミュニケーションに変化はあるものの、子どもたちどうしの関わり合いの中で子どもは成長するという根本は変わらないということがわかりました。またオンラインもコミュニケーションツールとして、親子で話し合いながら上手に活用していきたいですね。

プロフィール


酒井 厚

東京都立大学 人文社会学部 教授
早稲田大学人間科学部、同大学人間科学研究科満期退学後、山梨大学教育人間科学部を経て、現在は東京都立大学人文社会学部教授。主著に『対人的信頼感の発達:児童期から青年期へ』(川島書店)、『ダニーディン 子どもの健康と発達に関する長期追跡研究-ニュージーランドの1000人・20年にわたる調査から-』(翻訳,明石書店)、『Interpersonal trust during childhood and adolescence』(共著,Cambridge University Press)などがある。

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