我が子を危険から守るために 入学前に知っておきたい通学路の安心・安全
- 子育て
小学生になると、親が送り迎えをしていた幼稚園・保育園のころとは違い、学校に一人で通うようになったり、習い事にも自分で行ったりするなど、子どもの行動範囲がこれまで以上に広がり、親が一緒にいないケースが増えていきます。そういった時に子どもが事故や事件にあわないようにするために、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。危機管理アドバイザーの国崎信江さんにお話を伺いました。
歩行中の交通死傷者数が一番多いのは、小学1年生
子どもが小学生になると、最初は集団登校のケースもありますが、徐々に一人で学校に通う機会が増えていきます。そういった時にまず気を付けたいのは「交通事故」です。
「7歳の壁」とも言われていますが、入学後の1年生は歩行中の交通事故が他の年齢と比べて多く、さらにその多くは登下校中に起きています。
朝の時間帯は夜勤明けの人が眠気まなこのまま運転していることもありますし、交通渋滞にイライラして、信号が赤になったけれども、無理やり前の車につながって右折や左折をする車もあります。子どもがルールを守って横断歩道を渡っている時でも、事故にあってしまうことが多く起きているのです。
どうすれば小学1年生の交通事故を防げるか
子どもは運転免許を持っていないので、運転している人が、黄色では止まらずに進みたい、渋滞の時には少しでも早く抜けたいなどと考えているとは思ってもいません。横断歩道が青だったら、車が止まってくれると信じています。
もちろん車を運転する側の意識を変える必要もありますが、青になったからといって、横断歩道をそのまま無防備に渡るのはリスクがあります。
子どもを交通事故から守るためにも、「青になっても車は来るかもしれない」といつも思い、3秒待って「右・左・右」を必ず確認してから渡る、ということを入学前から習慣化しておくといいと思います。
また、安心して学校に通うために、ぜひ通学路の点検を行いましょう。事故が多そうなところはどこか、入学前に調べておくのです。もちろん学校でも、通学路で事故が起こりやすい場所などを教えてくれると思いますし、事故だけでなく、犯罪が起きた場所などをホームページ上で公開している警察署もあります。そういったものをこまめにチェックするとともに、「どこが危険と思うか」ということを「子どもに聞いてみる」のも大事だと思います。
なぜ大事かというと、親が思う危険と子どもが思う危険は違うことがあるからです。子どもの身長での目線と大人の身長の目線では違いますし、さらに生きてきた経験値が違います。子どもの場合、経験値が少ないことが多く、「何が危険かということ自体をわかっていない」こともあります。
そういった時に、どういった場所が危険かということを親が教えてあげるのも大事ですが、「そこはこうしなさい、ここでは止まりなさい」などと教えるよりも、子どもに「自分で」考えさせることのほうが、より効果的だと思います。
リスクは、具体的に自分でイメージできることが大事だからです。子どもがこういう時はこうする、ああすると考えたうえで、大人がさらにアドバイスをしてあげるといいと思います。
一人で下校する時は、足早にさっそうと帰る
また、登下校時に気を付けたいのは事故だけではありません。下校時は特に連れ去り、声かけ事案などの「事件」が発生しやすい傾向にあります。なぜなら、登校は集団登校だったり時間が決まっていたりすることが多いのですが、下校時間は学年によってばらばらなことが多く、一人になる場合が多いのです。
そういった意味でも、下校時のほうが狙われやすいということはあります。
「安全」に関しては下校時に一人になったら、「警戒モード」に切り替えて、足早に帰るというのが大事だと思います。「狙われやすい子」と「狙われにくい子」というのがあり、「狙われやすい子」は、話しかけやすい雰囲気が出ていることが多く、また大人もそうだと思いますが、足早に歩いている人には声をかけづらいものですが、何となく立ち止まったり、ゆっくり歩いていたりすると、声をかけやすいですよね。
ですから、一人の時は、寄り道せずに足早にさっそうと歩くというのは、自分の身を守るためにも大事なことだと子どもに伝えるといいと思います。
いつもの景色が昼と夜では違う場合も子どもが実際通る時間で確かめよう
年齢が上がるにつれて、塾や習い事に子どもが「一人で行く」というケースも増えていくと思います。おうちのかたはぜひ、塾や習い事が終わった時に、帰り道が昼間と比べてどう変化しているかということにも関心を持ってもらいたいと思います。
たとえば商店街。子どもが一人で行動する時は「人が多い商店街を通りなさい」と親は言いがちですが、子どもが実際に通る時間帯に、そこが本当に安全かどうかということをおうちのかたにもきちんと確認してほしいのです。昼間は商店街のお店が開いていて、明るい雰囲気かもしれませんが、夕方から夜にかけてはお店は閉まり、ゲームセンターやカラオケが目立つなど、街がガラッと雰囲気を変えることもあります。その環境の変化に注意してほしいのです。また冬になると暗くなるのは早いですし、そういった季節も含めて、時間や人の流れに敏感になり、また子どもにも「この時間のこの場所は本当に安全?」と聞くといいと思います。自分で考えることで、リスクをより理解できるようになると思います。
世の中で起きている事故や事件は、「自分を守る」という面で、子どもにとって考えるきっかけにもなります。ニュースを見ながら、「あなただったらどうする?」と子どもに問いかけて考えさせることをおすすめします。「こういう時どうするか?」と自分で考えることで、事故を防止し、防犯意識を高めることにもつながります。
まとめ
子どもの安全のために、親子で一緒に通学路を点検し、子ども自身に「何が危険か」ということを考えさせることが大事だとわかりました。また、塾や習い事などに行く場合でも、実際に子どもが通る時間帯の景色を親も確認する必要がありそうです。
プロフィール
- 国崎信江
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危機管理アドバイザー、危機管理教育研究所代表。大阪教育大学附属池田小学校の事件をきっかけに、犯罪や事故から子どもを守るための対策を研究。国や自治体などの防災・防犯対策に携わるなど、身近に起きる危険への備えの必要性と実践の提唱を続けている。
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