「やり抜く力」「チームになる力」を子どもが身につけるには? おおたとしまささんに聞いてみた

これからの時代を生きるため、子どもたちにはどんな力が必要?

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(祥伝社)の著者おおたとしまささんによると、必要なのは
①そこそこの知力と体力
②やり抜く力
③自分にはない能力をもつひととチームになる力

の3つ。なかでも、②と③の重要性が増しているそう。

では、「やり抜く力」と「自分にはない能力をもつひととチームになる力」を伸ばすにはどうしたらいいでしょう。親にできることはあるのでしょうか。

正解がない時代に親はどうする? おおたとしまささんに聞く、子どもたちに必要な3つの「生きる力」

親は不安を作り出している。 おおたとしまささんに聞く、「すごい親より、いい親でいる」ということ。

この記事のポイント

子どもが興味をもっていることが「やり抜く力」を伸ばす

「すべてを上手くやらせようとせず、『これだけでも頑張りなさい』と、ポイントを絞ってあげることが突破口になることがあります」(武蔵高等学校中学校・加藤十握先生)

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』より引用

──子どもたちはどんな時「やり抜く力」を身に付けますか?

おおたとしまささん(以下おおた):アンジェラ・ダックワース博士*の著書「やり抜く力 GRIT(グリット)」によれば、受験勉強でも鍛えられるともとらえられますね。コツコツ努力を重ねる経験として、日本の部活みたいなものも前向きに考えられています

*アメリカの心理学者

──「《がんばれ》は言わないほうがいい」と耳にすることもあって。「やり抜く力」は身に付けてほしいけれど、「がんばりすぎ」は心配かも……。

おおた:「無理してがんばる必要はない」というメッセージは今すごく増えていますし、その通りだと思います。自分の本心から望んでいないことを無理してがんばるみたいなことは「やり抜く力」とはちがうし、よくないですよね。無理して一時的にがんばることはできても継続できないですし、やらないことを決めることができていないので。

「やらない」の選択も大事な能力

──なるほど。やりたくないことをやっていては、本当にやりたいことを粘り強く続けることはできませんね。

おおた:「これをやらない」と言えるのは重要なことです。逆に親が「いつまでゲームしてるの!」と言っても「いや、これはクリアするまで絶対に辞めない!」と続けるのであれば、それは「やり抜く力」なんですね。子どもは興味があるものに対しては根気をもって取り組むので、前向きにとらえるべき。

──子どもが始めた習い事をすぐに変えたいと言い出した場合も、前向きに?

おおた:「それはちょっとちがうよね」の直感が働くようであれば、本気の言葉なのか思いつきの言葉なのか見分ける必要がありますね。好奇心旺盛でいろいろなことに取り組める子であれば全部やってみるのもいいかもしれませんし。目の輝きで本気かどうかわかると思います。

「コラボレーション力」には論理力が必要

──「自分にはない能力をもつひととチームになる力」はコミュニケーションが苦手だと身に付けられないでしょうか。

おおた:勉強が必要という話になるかと思います。

──勉強で協働力を伸ばせるんですか?

おおた:論理的に考えて論理的なコミュニケーションができれば、表面的な対立にとらわれず共通の水平線を見つけてコラボレーションすることができますよね。

──「空気を読む」とはちがいますね。

おおた:自分とはちがう相手とチームを組むには「共感」「論理」両方のコミュニケーション力が必要です。日本ではこれまでいわゆる「飲みニュケーション」で押しきってきたところがありますが、もうそれが通用する時代ではなくなっています。

ぼーっとする時間が「自分軸」を育てる

──興味があることに取り組む「やり抜く力」、自分と似ていない相手とも協力する「コラボレーション力」には、自分らしさが必要なのかなと思います。

おおた:「自分軸」を持つことが大事ですね。ヒマな時間、ぼーっとする時間が自分軸をつくり、自分が何を好きでどんな時に幸せを感じるのかなど知ることができます。

──今子どもたちはとても忙しくて、少しでも時間があるとゲームをしたり動画を見たり。それは何もしないぼーっとした時間とはちがうような……。

おおた:大人もですね。大人にとっても、ぼーっとする時間を持つことが難しくなってしまっています。あれもこれも気になってしまって。手放す勇気が必要だと思うんですが。

──大人も子どももぼーっとできていない。

おおた:大人もできていないのに、子どもに「ぼーっとしろ」「勉強しなさい」を両方投げかけたら子どもが壊れてしまいますね。

「やり抜く力」も「コラボレーション力」も教えること自体無理なこと。親が手本として自分らしく生きることが一番です。世間や情報は《あれをしようこれをしよう》って追ってきますけど、それは無視して自分の空間で自分なりの時間を過ごす。そういう生き方を示すことが大事だと思います。

まとめ & 実践 TIPS

「やり抜く力」も「ひととチームになる力」も子どもに身に付けてほしいけれど、教えることはできない力。まずは、親自身が自分の時間を過ごしてみることが大切かもしれません。

執筆/樋口かおる

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(おおたとしまさ著、祥伝社刊)

プロフィール


おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年、東京生まれ。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌の編集に携わる。学校や塾、保護者の現状に詳しく、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演も多数。中高の教員免許を持ち、小学校教員や心理カウンセラーの経験もある。著書80冊以上。

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