開成元校長柳沢幸雄先生が教える!リーダーシップを発揮するための「決断」力の育み方

開成中学・高校の元校長で、現在は北鎌倉女子学園学園長や東京大学名誉教授などを務める柳沢幸雄先生は、著書『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP)でこれからの社会にはリーダーシップがより必要だと伝えています。その思いを聞きました。

この記事のポイント

全ての人にリーダーシップが必要

これからの社会には、リーダーシップが必要になります。リーダーシップとは多様な選択肢の中から1つを選択し、全体を統率して成果を生み出す一連の行動です。私はリーダーシップを発揮する対象には2種類あると考えています。

1つは、みなさんがイメージするリーダーシップです。多様な人々を一つにまとめて、全体を統率すること。もう1つは、自分自身の進路選択に関するリーダーシップです。自分の人生には、無限の多様な可能性があります。その自分の人生を主体的に選択していく力もリーダーシップだといえます。子どもたちの人生は全てが未知。好きなことを見つけ出したり、その好きなことを突き詰めていったりすることで、未知を既知にしていくのが人生です。数多くの要素をうまく自分の中で整理統合して、人生を形作っていくことが自分の人生にリーダーシップを発揮していくということです。

人前に立って仕切るようなリーダーシップを全ての子に持ってほしいということではなく、全ての人が内に向かって、自分自身に対してリーダーシップを発揮していく必要があると思うのです。

人生にリーダーシップを発揮するための「判断」と「決断」

未来に向かって自分自身で何かを選択するには、「判断」と「決断」が必要です。「判断」とは、論理的に選択肢を検討していくと、自ずと決定に至る事柄、これは論理的に物事を考えられる人であれば、ほぼ同じ回答を下すことができます。
一方で、「決断」はどんなに論理的に考えても、情報が不足していて「この3つのうちどれがよいかがわからない」という時に、「えいや!」で決めることです。これは日本においてできる人がとても少ない。

新型コロナウイルス感染症による2020年3月の休校措置に関しても、その時点で判断するにはデータが不足していたため、政府から「決断」が下されました。「決断」が正しかったかどうかは、後になってみないとわかりません。

こうした決断する力をつけるためには、どうしたらよいのでしょう。それは、自分を信じる力をつけることです。要するに、自分の選んだ未知を最適だと思える心が必要になります。つまり、自分の存在を自分で受け入れることができる「自己肯定感」が重要なのです。

家庭で子どもの自己肯定感を育むためには?

自己肯定感を家庭で育むポイントは、2つあります。1つめは、家庭の中で子どもに役割を与え、達成できたら思い切り褒めることです。自分の力が必要とされているということを実感できるので、肯定感につながります。例えば、子どもは料理に関わることが大好きです。ハンバーグをこねてみたり、お好み焼きを混ぜてみたりする役割を与えて、完成したら「○○くんが作ったハンバーグおいしいね!」と声に出して褒めてあげてください。
こうしたお手伝いには、手先が器用になるというメリットもあります。手先を細かく動かすことは、脳の発達に大きな影響を与えます。

2つめは、子どもの話を徹底的に聞くことです。例えば、子どもが帰ってきてニコニコしていたら、「楽しいことがあった?」と質問をしてあげます。一問一答であれば学齢が小さい子でも答えられますし、「どこで遊んだの?」「誰と遊んだの?」など5W1Hで質問していくと、人に話を伝えるには6つの疑問詞を網羅すると伝わるのだなと知り、論理性を身につけていくこともできます。
自分が語りかけたことを保護者が受け取ってくれて、言葉のキャッチボールができるということは子どもの安心感と安定感につながります。

学習についても、子どもから「聞く」ようにしましょう。「今日は何をやったの?」「そんな難しいことをやったの? 九九を使たんだね、すごいねぇ」といったやりとりをするのです。これは実体験でもありますが、保護者が子どもに勉強を教えるのは大変難しいものです。これまで私は教育現場で何千人もの生徒・学生に教えてきましたが、自分の子どもに勉強を教えることが最も難しかったのです。子供にとって私は父親であって、先生とは認識されていなかったからです。そこで、「勉強をしなさい」と言ったり勉強を教えようとしたりすると、関係性がギクシャクしてしまいます。
勉強を教えることではなく、「親子で話せるのだ」という安心感を小さい頃から作っておくことの方がずっと重要なことなのです。

現在学校ではアクティブ・ラーニングという学習手法が重視されています。これは日本語に訳すと「能動学習」ですが、私は「脳動学習」が適切な訳語だと思います。学んだ知識をアウトプットすることで定着させる学習法です。アウトプットするには頭の中で獲得した知識を編集する必要があるので知識が定着します。この指導の理想的な状態は、生徒一人に対し教師一人のバランスです。現在ICT教育を学校現場に導入し、それを実現しようとしていますが、家庭ならばその体制を実現することができるでしょう。時には、子ども1対保護者2にもなれるのです。

コロナ禍では、人々の心が沈みがちです。そんな時こそ、楽しげに過ごす子どもの言葉に耳を傾けて、保護者もパワーをもらえることを願っています。

まとめ & 実践 TIPS

これからの社会で生き抜くには、リーダーシップが必要です。そのリーダーシップとは、いわゆる人を束ねる力という意味だけでなく、自分自身の人生の選択を主体的に行っていく力です。そして、人生を切り開くリーダーシップには、「判断」と「決断」をする力が必要です。判断は論理的な思考があればできますが、決断には自己肯定感が欠かせません。家庭で自己肯定感を育むために、子どもに役割を作り、それを褒め、話をよく聞くようにしましょう。

柳沢先生の著書では、本記事でご紹介したことや、決断力を育てるうえで大切なことについて詳しく紹介がされています。気になる方はぜひ読んでみてください。

ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと
PHP研究所 柳沢 幸雄(著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4569847447/

プロフィール

柳沢幸雄

1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。

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