開成元校長柳沢幸雄先生に聞く!社会で生き抜く力、スペシャリストを育てる子育て法

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開成中学・高校の元校長で、現在は北鎌倉女子学園学園長や東京大学名誉教授などを務め、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP)を上梓した柳沢幸雄先生に、これからの社会を生き抜く子どもを育てるためのポイントを伺いました。

この記事のポイント

これからの時代を生き抜いていく力とは?

これからの時代を生き抜く人とは、一言で言うと、会社が倒産しても生き残れる力を持っていることです。長らく日本社会では、大企業は倒産しないという神話があり、そのため多くの人が「自分が歩んでいるルートは安泰である」という思いを持っていました。しかし、現在、会社の寿命は30年程度。今回の新型コロナウイルス感染症の影響でも、大企業や人気職種が窮地に追い込まれている姿を目の当たりにしたでしょう。

実のところ、商売人の家庭に私は生まれましたが、中学生の時に店が倒産するという経験をしました。こうした経験は誰もがする可能性がある。だからこそ、会社がなくなっても、生きていけるような育て方をすることは非常に重要なのです。

では、これからの時代を生き抜いていくにはどうしらよいのでしょう。最も重要なポイントは、手に職を付けることです。「手に職」というと、資格を取るなどの考えに向かいがちですが、資格は一つの結果に過ぎません。大切なことは、「何ができますか?」と聞かれたときに、「私はこれができます」と答えられるということです。「私は偏差値が高くて、○○大学を卒業しました」ということだけでは、これからの社会を生き抜いていくことはできません。

好きなものを大切に、スペシャリストを育てる

手に職をつけるということは、つまり、スペシャリストになるということです。自分の中のスペシャルなことを生かして、それを生かした職に就く。そうすれば、飽きずに、創意工夫して、打ち込み続けていくことができます。人のサポートをすることが好きな人は、看護師や介護士になりたいと感じ、結果として資格取得にもつながるでしょう。

子どもの「好き」を見つける手伝いをすることが、ご家庭の役割です。例えば、「この子は電車が好きだな」と思ったら、乗ったり見に行ったりする機会を増やす。「虫が好きだ」とわかったら昆虫採集をとことんさせてあげればよいのです。

その際に、「駅名の漢字を書き写してみよう」や「虫の観察記録をノートに書いてみよう」と“ちょい足し”をすることで学習になります。保護者はつい「何をさせようか」と考えてしまいがちです。しかし、大切なのは子どもの様子を観察して、「これに興味を持っているな」ということに、“ちょっと足し”をしてあげることです。

子どもは具体的な記憶があって、初めて抽象的なものを理解できるようになります。そのきっかけになるのは、子どもの好奇心です。子どもが好奇心を示したものには、「おもしろいね! もうちょっとやってみようか」と勧め、保護者のかたも一緒に楽しんでみてください。それがお子さまのスペシャルを育てることにつながっていきます。

型にはめるのではなく子どもの素質を伸ばす

日本の教育は長らく、「平均的に全てのことができること」を重視してきました。そのため、ご家庭では「苦手なことも頑張りなさい」や「好きなことばかりするのはやめなさい」と注意してしまいがちでした。しかし、このような考えは私に言わせれば、80年前の戦前の考え方です。

理想像があり、そこに当てはめようと考えると、怒られることばかりになってしまいます。例えば、その昔、女性は良妻賢母を目指しなさいという時代がありました。料理ができて、裁縫ができて、賢い母親になるべき……という考え方で、そこから離れる得意なことは、排除されてしまいました。

型にはめる教育は、自分よりも小型な人間をつくっていくことになります。自分が知っている範囲内で、子どもを育てようとすると、自分の縮小版の再生産にしかなりえません。そうではなく、子ども一人ひとりが持っている素質をいかに見抜き、それをいかに引っ張り出してあげるかを考えていく教育が重要です。「子どもに根ざした教育」が重要なのです。

子どもが社会的に評価されるように成長するかは、大きな問題ではありません。保護者が考えなくてはいけないことは、自分が死んだ後に子どもが自活できるようにすること。好きなことを伸ばして、自活の道が開ければ保護者の役割はもう十分果たしているといえるのです。

まとめ & 実践 TIPS

これからの時代に生き残れる力は、会社に依存しないで生きていくことです。手に職をつけるということは、つまりスペシャリストになるということ。そのために大切なことは、子どもの好きを伸ばすことです。
そして、ご家庭では子どもの好きを見つけるサポートをしてください。型にはめる教育では、大人の縮小版を作ってしまいます。子どもの好きなことを伸ばして、社会で生きていく力を育んでいきましょう。

柳沢先生の著書では、本記事でご紹介したことや、スペシャリストを育てるうえで大切な要素について詳しく紹介がされています。気になる方はぜひ読んでみてください。

ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと
PHP研究所 柳沢 幸雄(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569847447/

プロフィール



1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。

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