岩崎恭子さん(バルセロナ五輪・金メダリスト)に聞く、「壁を乗り越える力」の育み方【前編】~環境を味方に、自分の人生を生きる~
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「今まで生きてきた中で、いちばん幸せです」。
1992年、バルセロナ五輪競泳で史上最年少の金メダリストとなり、冒頭の言葉と共に日本中から注目された岩崎恭子さん。当時14歳だった少女も、今や1児の母です。若いころから世界で活躍してきた岩崎さんの経験を通じ、チャレンジすることと壁を乗り越える力について、お話を伺いました。
五輪史上、最年少金メダリスト
私は3姉妹の真ん中です。何でも姉のまねをしたがって、水泳も姉の影響で5歳から始めました。当時、姉は小学生の中でも泳ぎが速く表彰台の常連で、負けず嫌いの私は、姉ができることは私もできると信じていました。記録や表彰台をめざすのが当然という環境にあったんです。
自己記録を更新することが、おもしろくて楽しくて、「水泳が楽しい」と夢中になっていた延長線上にオリンピックがありました。オリンピックをめざしていたという自覚はあまりなく、怖いもの知らずの伸び盛りの時期が、たまたまバルセロナ五輪にぴったり重なったのだと思います。
金メダルをとって日本に戻った時は、「テレビで見た光景だな、メダルをとるとこんなことになるんだな」と、ちょっと冷めた目で周りを見ていました。なかには自分では意図していないこともあり、発言一つにも神経質になりました。思うような生活ができなかったのは事実です。
家族は、できるだけ今までと変わらない生活を、と気を配ってくれました。外で言えない分、家では思いっきりわがままを言いましたし、本音も素直にぶつけました。そうすることでバランスをとっていた私を許し、受け止めてくれていた家族やコーチには、本当に感謝しています。
本当のチャレンジ
そんな渦中にあって、金メダリストとして迎える次のアトランタ五輪こそが、私にとって本当のチャレンジでした。当初は自分が出した記録に届かないばかりか、まったく記録が伸びず、目の前に立ちはだかった壁に苦しみました。あれだけ記録を伸ばすのがおもしろくて水泳が楽しいという感覚が、消えてしまったんです。
海外でのある強化合宿でライバル選手が好記録を出し、それを見て投げ出してしまいそうなところで、はっと目が覚めました。金メダリストはこうあるべきという自意識に縛られて、自分が「やらされ感」で水泳をしていたことに気付いたのです。
ここで投げ出してはダメ、現実を受け止めてチャレンジする過程も大切にしなければ、自分のそれまでの水泳人生を否定することになってしまう……。今ここから、やれるだけやってみよう! そう吹っきれた時、オリンピック出場という目標に自ら向き合うことができました。
バルセロナからアトランタまでの4年間は、自分の成長を実感した期間でした。自らオリンピックをめざすことで、目標に挑む意義や壁の超え方を知ることができました。また、水泳競技は個人スポーツでありながら、チームで活動します。さまざまな立場、経験、考え方を持つ人たちと共に目標に向かう貴重な体験は、その後の私の人生に影響を与えています。
現役引退と新たなステージ
アトランタ五輪では、めざした記録には届きませんでしたが、自分自身としては、やりきったという満足感でいっぱいでした。競技人生にピリオドを打ったのは、五輪から2年後の20歳の時。大学在学中でしたが、迷いはありませんでした。
「自分ができることは人に教えられるだろう」と、水泳の指導者をめざしたものの、実際はそう簡単なことではありませんでした。でも、指導者としての勉強、活動を続けていくうちに、“私が行くことで喜んでもらえる”ことに気付きました。指導する以前に、私だからできることがあるのではないかと。
「私の体験や感じてきたことをお伝えすることで、水泳やスポーツを通じて得られるすばらしい経験や楽しさを知っていただけたら……」今はそんな思いで、多くのかたが水泳やスポーツにふれるきっかけとなる活動に力を注いでいます。
次回は、スポーツ選手のご主人と3歳になる娘さんとの生活、そして子どものチャレンジを応援し、壁を乗り越える力を養うために心がけていらっしゃることを伺います。
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