十分に「聴いてもらえる」と子どもは自ら動き出す? [やる気を引き出すコーチング]
「私が子どもの話を『聴いている』と思ってやっていたことと、子どもが『聴いてもらえた』と感じることはまったく別だったんだなということがよくわかりました」と報告してくださったのは、小学校6年生の息子さんを持つAさん。
とても興味深いお話だったので、ぜひ、ご紹介したいと思います。
聴いているようで聴いていない子どもの話
ある日、学校から帰ってくるなり、お子さんが「気分が悪い」と言って、ベッドに横になってしまいました。これから塾なのに、動こうとしません。
「どうしたの? 昨夜、夜ふかししたせいじゃないの? 寝不足でしょう」
「そんなことないよ」
「ゲームのし過ぎだよ。前から言ってるでしょう!」
「そんなことないって!」
と、よけいにふてくされてしまいました。
「大丈夫? 塾の日でしょ? どうするの?」聞いても、
「今日は行かない」と言うばかりです。
「じゃあ、今日は休んで、早く寝るようにしなさいね!」と伝えました。
ところが、翌朝、今度は「気分が悪いので学校に行かない」と言うのです。Aさんは、さすがに心配になりました。
「どうしたの? 昨日は早く寝たのに。どこか痛いの?」と言いながら向かい合いました。
「どこも痛くない」
「じゃあ、どうしたの?」
「行きたくない・・・」
「何かあったの?」
学校に行く時間が迫っていましたが、Aさんは話をしっかり聴こうと思いました。
ところが、
「どうせ話しても聴いてくれない」とお子さんは言うのです。
「そんなことないよ。ちゃんと聴くよ。どうしたの?」
「だから、気分が悪い」
「うん、そうなんだね」
「ムカムカする」
「うん、それは気分悪いね」
「・・・ちょっとイヤなことがあった。昨日、学校で」
「そうなんだ。どんなこと?」
「それは、言いたくない」
「そうか、言いたくないんだ。何かイヤなことがあったんだね。昨日は聴いてあげられなくてごめんね」
「うん。・・・そろそろ、学校行かなきゃ!ごはん食べる!」
「え〜?!」
お子さんは、この後、朝ごはんをもりもり食べて学校へ行きました。
Aさんは、まさかの展開に、ただ驚くばかりだったそうです。
子どもの話は「気持ちごと」受けとる
この出来事をふりかえって、Aさんはこんなふうに話してくれました。
「私は、子どもの話を聴いているつもりで、まったく聴いていなかったんだと気づきました。『気分が悪い』という言葉だけを聴いて、『どうせ寝不足でしょう。ゲームのし過ぎでしょう』と自分の思い込みで決めつけて、子どもの気持ちにはまったく耳を傾けていませんでした。結局、子どもに何があったのかは、未だにわかりません。でも、その後は、学校にも塾にも今まで通り元気に行っています。子どもってすごいですね!ただ気持ちを聴いてあげるだけで、自分で解決できるんですね」。
コーチングでは、まず、相手の話を「聴く」ことの大切さをお伝えしていますが、相手が「聴いてもらえた」と実感できなければ、「聴いた」ということにはならないのだと感じるお話でした。
子どもの話を聴こうと思いながらも、こちらの価値判断や思い込みで、子どもの気持ちを十分に受けとれていないことはないでしょうか。
子どもが「今日は疲れた」と言えば、「遊び過ぎたんでしょう」と決めつけてみたり、「もう勉強なんかやりたくない」と言えば、「そんなこと言ったって、やらないとダメでしょう」と説教してみたり、気持ちを受けとることは、案外できていないのかもしれません。
「そうか、疲れたんだね」、「やりたくないって思ってるんだね」と気持ちごと受けとることで、相手の中では「聴いてもらえた」という完了感が起きます。完了感が持てたら、次、どうしたらいいのかを自分で考えられるようになるのです。子ども自身の課題解決力や自発性を信じて、十分に「聴く」を実践していきたいものです。