十分に気持ちを受けとめてもらえると子どもは自ずと前進する[やる気を引き出すコーチング]

「以前、コーチング研修で話されていた『受容』、いったん受けとるというコミュニケーションでしたっけ?あれはすごいですね!最近、効果を実感しています」と、久しぶりにお会いしたSさんが報告してくださいました。
Sさんは、小学校2年生の女の子のお母さんです。以前から、なかなか宿題にとりかかろうとしないお子さんの様子にイライラしていたそうです。

■十分に受けとめてもらう効果

「うちの子は、元気でよくしゃべるんですけど、けじめがつかないっていうか。学校から帰ってきてからも、おやつを食べながらいろんな話をしたり、テレビを見たりで、なかなか宿題をやろうとしないんです。『話は後にして、先にやってしまったら?』と言っても、『わかってる!』と言うばかり。
この前、何をそんなに話したいんだろうと思って、私もちょっと向かい合って座って、目を見ながら話を聴いてみたんです。話していることは、どうってことない話ばかりなんです。今日の体育の授業は疲れたとか、友達がこんなことを言っていて、自分はちょっと変だと思ったとか、そんな話です。
でも、『そうなんだ』、『そう思ったんだね』と一つひとつをしっかり受けとめながら聴いていると、10分もしないうちに、『じゃ、私は宿題やるね!』と言って、立ち上がったんです。何が起きたのかと思いましたよ。
それ以来、なるべく、子どもの話を聴く時は、腰を据えて聴くようにしています。忙しいと、いつもできるわけではないですけど、ちゃんと聴いてやると、その後は、何も言わなくても、やるべきことをやっているんですね。これって本当に不思議ですね!」

Sさんのお話は、確かに魔法のようなお話ですが、これこそ、十分に受けとめてもらえた効果です。自分の内側にある感情を一度外に出して、誰かに受けとめてもらうとスッキリします。この完了感が十分得られると、人は自ずと行動を起こせるものなのです。

そもそも、宿題をやる必要があることは、お子さんにはすでにわかっていることです。わかっていることを「やりなさい」と言われたら、当然、「わかってるよ!」と抵抗が起きます。かえって、やる気は失われます。自分の言いたいことを遮ることなく受けとめてもらえた完了感と「わかってもらえた」という安心感の上に、前に向かう原動力は湧いてくるのです。

■正論を言い聞かせるよりも効果的

こちらは、小学生の兄弟を持つTさんのお話です。
「この前、6年生の長男が弟とケンカをして、『ぶっ殺してやる!』というようなことを言ったとかで、妻が青くなりまして……私が上の子と話をしてみることになったんです。そんなこと思ってもほしくないのに、いったいどうしたんだろうと思って、何があったのかをとりあえず聴いてみることにしました。

実際聴いてみると、大したことではないんです。弟がゲームを返してくれなくて嫌だった、腹が立ったというような話でした。でも、『そんなことぐらいで』と叱るのではなく、全部受けとめながら聴きました。『そうか、そんな気持ちだったんだね』と。
『そんなこと言うもんじゃないよ』と否定したり、『思ったとしても言っていいことと悪いことはあるよ』などと正論で諭したりしないようにもしました。ただ受けとめて聴いていただけですが、長男が自分から仲直りをしに行きました。子どもは自分でちゃんと気づけるんだなとあらめて思いました」

お父さんに自分の気持ちをそのまま受けとめてもらえたことで、お子さんは自ずと自分の気持ちが落ち着き、正しい判断ができる状態を取り戻せたのでしょう。

いずれの事例も、「ただ受けとめるだけ」のコミュニケーションのパワフルさと、日頃、私たちは、十分に子どもの話を受けとめているだろうかということを考えさせられるものでした。

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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