幼児期に始めたい健康教育【前編】健康教育の大切さを改めて知ろう

子どもの発育や健康のために、食事や衛生面などに気を配るご家庭は多いと思います。子どもが生涯にわたって自らの健康に気を配るようになるために、家庭ではどのようなことを教えていけばよいのでしょうか。元養護教諭で、帝京短期大学教授の宍戸洲美先生に、家庭における健康教育について伺いました。



自分の体の変化をつかむ感覚を育む

毎日を心身ともに健康に過ごすことは、生きていくうえでの基本となります。健康教育とは、子どもが将来、そのような健康的な生活を送るために、自らよりよい選択をするための力を育てていくことです。帰宅したら手洗いうがいをする、きちんと3食食べる、歯を磨く、排便の状態をチェックする、十分に眠るなどの日常生活での習慣から、たばこを吸わない、飲み過ぎは控えるといったことまで、自分の体調に自ら気を配り健康を保てるように、自分で判断していく価値観を身に付けさせることが、健康教育の大きな目的となります。

以前は、死に至るような重篤な病気にかかることがめずらしくなく、健康を保つためには医療が大きく関わっていました。しかし、生活環境が向上した今は、風邪をひきやすい、よく眠れない、食欲がないなど、病院で治療すれば治るというより、自分の生活の仕方を見直してみるような健康問題がよく見られます。そのため、自分の体に対する感覚や変化を認識する力を育てていくという、教育的なかかわりが大きくなってきているのです。

幼児期から自身の健康に目を向けさせることは大切です。小学生から中学生の子どもに「あなたは健康だと思いますか」とたずねると、「そう思わない」や「わからない」などと答える子どもたちが少なくありません。自分の体調がわからなかったり、なんとなく調子が悪いと思っていたりする子どもがいるのは問題です。

小学校で保健室に来る子どもの様子からも、自分の体の状態をつかめていないことがわかります。たとえば、「お腹が痛い」と訴えた子どもによく話を聞くと、排便が3日間もないことがあります。排便をさせると、「スッキリした。痛いのが治った」と言います。また、「なんか具合が悪い」と言う子どもに触ると明らかに熱があり、「熱が出ているね」と言うと、それでやっと自分の具合の悪い原因がわかるということもあります。小学校低学年であれば言葉でうまく伝えられないと思いますが、小学校高学年の子どもでも体調不良とその原因をつなげて考えられない状況がよく見られます。

健康維持は、まず自分の体の状態を知ることから始まります。自分の体がどうなっているのかを実感を持ってわかる、体の微妙な変化や異常に気付き、その状態と自分の生活との関連を認識できる。そうした感覚を育てていくことが大切になってきているのだと感じます。



健康教育は小学校卒業までが勝負

健康への意識を育むには、小学校卒業までが重要になると考えます。まず、乳幼児期の生活習慣は、その後の健康そのものを大きく左右します。たとえば、乳幼児期から夜更かしをさせていると、昼行性のリズムをうまくつくることができず、自律神経の働きが乱れてしまい、小学生・中学生になってからも睡眠に大きく影響します。また、食べ物の好き嫌いに悩まされている保護者のかたは多いと思いますが、いろいろな食材を食べることで味覚が育っていきますから、乳児期からの食生活は大切です。

では、なぜ小学校高学年までが重要なのでしょうか。それは、子どもの行動範囲が広がっていき、友だちの家庭の様子がわかってきて、自分の家族以外の価値観の影響を受けるようになっていくからです。だんだんと自分の価値観で判断をするようになり、思春期になれば、保護者に反発して、言うことを聞かなることも考えられます。

さらに、中学生になると外部からの情報がもっと入ってきます。たとえば、喫煙や飲酒は、上級生や友だちにすすめられ、どうしても断れずに始めてしまい、そのままずるずる続けてしまうというケースがあります。そうなる前に喫煙や飲酒の影響を十分理解させ、断る方法も学んでおくことが重要です。
このような観点から、小学生卒業までに健康への価値基盤を築いておくことが望ましいのです。

自分の体を大切にするという意識を育むためには、心の健康も重要になっていきます。自分はどうなってもいい、誰からも必要とされていないと思ったら、体に害があるとわかっていても、たばこや薬物にも手を出してしまうでしょう。また、子ども自身に悩みがあったり、保護者の精神状態が安定していないとそれが子どもの不安を生んだりして、眠れなかったり、食欲不振になったりといった状態になることもあります。子どもにたっぷりと愛情を注ぎ、子どもが安心して家族と一緒にいられる。そうした家族の絆を築くことも健康教育につながるのです。


プロフィール


宍戸洲美

帝京短期大学 生活科学科 学科長・教授。看護師、保健師を経て、3つの小学校で27年間にわたって養護教諭として勤務した経験をもつ。現在は大学で養護教諭をめざす学生たちの指導にあたると共に、NPO法人子育てアドバイザー協会の講師なども務めている。

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