ワクワク感と強みに焦点を当てると子どもは動き出す[やる気を引き出すコーチング]
「毎日、言うことを聞かない子どもに、同じことを言い続けるのは、もう本当に疲れます」と嘆く保護者の声を時々お聴きします。
「言っても効果がないことを何度も言うのは、確かにエネルギーを消耗しますよね。焦点を当るところを少し変えると、格段にエネルギーが要らなくなります。親御さんもお子さんもお互いに楽になりますよ」
そんなことをあらためて感じた最近の事例をご紹介します。
■「ワクワク感」を原動力にする
コーチング講座で、小学校5年生の男の子と大学生が「やろうと思っているのに、やっていないこと」というテーマでコーチングをし合っていました。
そばで観察していたのですが、なかなかおもしろかったです。
「ワールドカップの試合を録画したけど、なかなか見ることができない。どうしたらいいのか?」というテーマで小学生が話していました。
コーチ役の大学生が、「どうしたら見る時間は作れるかな?」といった質問をしていたのですが、小学生が自分の中から解決策を見つけました。
「もっと好きな選手を増やせばいいんだ!そうしたら、どの試合もワクワクして早く見たくなる!」
「なるほど!その発想は自分にはなかった」と大学生は驚いていました。
とかく、どんな段取りでどう時間管理をするのかという話になりがちなテーマですが、どうしたら早くやりたくなるのかに焦点を当てたこの小学生の発想は、なかなかすばらしいと私も感じ入りました。
行動がのんびりなお子さんに、どうしたらもっと早く出かける準備をしてくれるのだろうと悩んでいたAさんは、友人から、「『今日はこれからワクワクすることがあるから早く行こう!』と言いながら一緒に準備をしたらいいのよ」とアドバイスされ、やってみました。すると、確かに以前よりも動きが早くなったそうです。
そういえば、遠足や運動会の日は、前日から準備をし、起こさなくても起きてきます。「何かこの先に楽しみがあると思ったら、子どもは自分で動くものだとわかりました」とAさんは話していました。
■欠点克服よりも強みを伸ばす関わりを
こちらは、お子さんが勉強せずゲームばかりやっているのを見て、やきもきしていたNさんのお話です。
ある時、Nさんは思ったそうです。「どうして、こんなに長い時間、ゲームに没頭できるのだろうか。この集中力は、この子のものすごい強みかもしれない!」。
「勉強しなさい」と言うのはあきらめ、折々に承認する言葉を伝えるようになりました。同時に質問もしてみました。
「その集中力はすばらしい強みだね。そんなに集中できる理由は何?どんなところがおもしろいの?」
こうして、高校生になる頃には、お子さんは何を思ったのか、「プログラマーになる」と言い出し、今年から大学の情報工学科に通っています。とても楽しそうです。
Nさんの言葉が印象的でした。「スポーツの世界だと、当たり前に、その子が得意な種目を集中して伸ばそうとしますよね。わざわざ苦手な種目を選んで、克服させようなんて効率の悪いことはしないじゃないですか。例えば、短距離走が得意な子に長距離はやらせないでしょう。だから、うちの子もそれでいいかなと思ったのです」。
欠点を直させる、苦手を克服させることが、教育の一つと思われがちですが、強みに焦点をあてて承認していると、強みはどんどん伸びていきます。そうすると、欠点だと思っていたことも気にならなくなったり、カバーされたりするものです。
ある先生が、「金平糖の角を削るような関わり方をしていると、子どもの可能性をどんどん小さくしてしまう。尖っているところは、とことん尖らせた方が、スケールが大きな子どもになっていく」というお話をされていましたが、とてもわかりやすい例えだと思いました。
ワクワク感や強みに焦点を当てて、子どもと関わることによって、大人も子どもも、もっと幸せになれるのではないでしょうか。