「将来の夢がわからない」と言う子どもには[やる気を引き出すコーチング]
高校生のコーチングをしていると、「将来の夢がわからない」という言葉をよく聴きます。「うちの子、何をしたいのかよくわからないみたいで、進路選択に悩んでいるんです」という保護者のかたの声も聴かれます。
夢が明確でないことが、やる気に影響を与えたり、焦りや不安につながったりすることはもちろんあると思います。このような子どもには、どう関わったらよいのでしょうか?
今回もいくつかの事例をご紹介してみます。
夢を持つことを強制しない
Aさんには、高校1年生の娘さんがいます。「将来やりたいことがわからない」ので、とりえあえず進学するにしても、文系なのか理系なのかも決められないと悩んでいたそうです。
Aさんは、娘さんの気持ちを受けとめながら、こう伝えました。
「まだ10代なんだから、決められないのは当たり前だと思うよ。今、考えていることがあっても、大人なってから変わることだって十分あるし」
「でも、友達はやりたい仕事とかもう決めて、夢に向かってがんばっているんだよね」
「確かにそういう人もいるね。他にもいろいろ人がいてね、お母さんの同級生でも、警察官になろうと思って勉強していたんだけど、学校の先生になった人がいるし、看護師をやっていたけれど、カウンセラーを始めた人もいるよ」
「へぇ~! 途中で変わってもいいんだね」
「『本当にやりたい』って思ったら、やれる方法はあるよ」
「なんか楽になってきた。とりあえず、勉強はがんばっておくね!」
「夢や目標は持つべきである」という考え方がありますが、それをプレッシャーに感じてしまう子どもが最近は多いように思います。本来、「夢を描くこと」は「ワクワクすること」のはずなのに、「夢を持たなければならない」と強制するのは、かえって逆効果です。ワクワク感を引き出しません。「今、決めたことが人生のすべて」という印象を与えるのもプレッシャーです。
「まだわからない」、「決められない」という気持ちを受けとめ、Aさんのような考え方や体験談を伝えてあげるのも効果的ではないでしょうか。
「夢=なりたい職業」という枠組みをはずす
小学6年生と4年生の兄妹がいるSさんのお宅では、「将来、何になりたい?」という会話ではなく、「どんな大人になりたい?」という会話を親子でしてみたそうです。
「セレブな人」
「お母さんみたいにすぐ怒らない人」
など、お子さまたちからは、思いつきで、いろいろ言葉が出てきましたが、「それ!いいね」と否定しないで聴いていきました。そのうち、
「尊敬される人」
「かっこいい人」
などの言葉が出てきました。具体的には、何をしている人なのかまでは、話は進みませんでしたが、お子さまたちは、「何をやったら尊敬されてかっこいいか考えてみる!」と言っていたそうです。
「将来、何になりたいか」にとらわれず、「どんな大人になりたいか」、「どんな毎日を送っていきたいか」などの視点から、考えをひろげてみるのもよいのではないかと思います。
「夢は大きくなくていい」と伝える
感激上手のTさんは、「夢が叶った!」と言うのが口ぐせです。
「私、母の日に、お花をもらうのが夢だったんだ。ありがとう。夢が叶った!」
「やった! このアイス食べたかったんだ。夢が叶った!」
こんなふうに日頃から言っていると、お子さまたちも、夢という言葉を気楽にとらえるようになるようです。「夢は大きく!」と思うと、何を思い描いたらいいのか構えてしまいます。
身近なことから、「こうなったらいいな」と思うことをどんどん言葉にし、実現したら「夢が叶った!」、と言っていると、「夢はなかなか叶わないもの」ではなく、「やりたいと思ったらいつかは実現するもの」というイメージを持てるようになります。
こんな日常のちょっとした関わり方によって、夢が持てる子どもは育まれていくように思います。よろしければ、お試しください。
(筆者:石川尚子)