「もう比べない」わが子をありのまま受けいれて[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
年中の息子は、他の子に比べて気が弱いというか引っ込み思案というか…。先日も幼稚園で遊ぶ様子を見ていたら、他の子がズルをしてうちの子が負けてしまいました。それでも相手に文句を言うこともできず、見ていて情けなくなりました。
相談者・八重桜 さん (年中 男子)
【親野先生のアドバイス】
八重桜さん、拝読しました。
たしかに、親としては平静でいられない場面でしたね。 でも、もし相手の子の親が見ていたら、もっと平静でいられなかったかも知れません。 園にも学校にも実にいろいろな子がいます。 みんな、もって生まれた資質というものがあり、本当に百人百様で個性的です。
気が弱くて引っ込み思案の子もいますし、気が強くて積極的な子もいます。 ルールをよく守る子もいればすぐ破る子もいます。 そして、親はみんなわが子を他の子と比べて、短所ばかり見つけて心配しています。 親はみんな「比べる病」にかかっているのです。
比べると常に隣の芝生は青く見えて、わが子の至らないところばかりが目につきます。 ですから、「もう比べない」と決意してください。 そして、わが子の短所を嘆きたくなったら、「短所言い換え方」(リフレーミング)を実行してみてください。 短所と長所はコインの裏表ですから、見方を変えて言い換えれば短所が長所でもあるのです。
気が弱いとか引っ込み思案というのは、温厚で穏やかということでもあります。 逆に気が強くて積極的というのは、無神経で攻撃的ということかも知れません。
つまり、気が弱いのと気が強いのとでは、どちらがよいということでもないのです。
ですから、ひとまずその子のありのままを受け入れて、プラス思考でよい面を見るようにしてあげましょう。 息子さんは温厚で穏やかであり、人を無神経に攻撃したりなどはしないはずです。 そういう長所を認めてあげてください。
それに、そもそも息子さんはルールを守っているわけですから、「ルールを守って立派だよ」と言ってあげてほしいと思います。 また、「ズルされて嫌だったね」と共感してあげることも大切です。 親がそう言ってくれると、子どもは「わかってもらえた」と感じて気持ちが軽くなります。 また何か嫌なことがあったりしたときも、親に素直に言えるようになります。
親が自分を理解してくれていると感じると、子どもの気持ちは安定し、強さも出てきます。 そして、場数を踏む中でだんだん言い返す力もついてきます。 絶対に、子どもに「こんなことでどうするの? あなた悔しくないの? 情けない子だね」などと言ってはいけません。
そういうことを言われると、子どもは「自分は情けない子なんだ。ダメな子なんだ」と思い込んでしまいます。 これが一番まずいことです。
それに、また嫌なことがあったとしても、親には言わないようになります。 下手に言えば、また「情けない子だ」と言われてしまいますから。 こういうことに気をつけながら、同時に、子ども本人が好きなことをたくさんやらせてあげることも大切です。
虫が好きならそれを応援して、もっと深められるようにしてあげましょう。 絵が好きなら絵を応援してあげてください。 親の応援があると好きなことをどんどん深めることができ、毎日が楽しくなります。 そして、「これなら誰にも負けない」と思えるようになって、自分に自信がつきます。
自分に自信がつくと、元気がわいてきて、積極性も出てきます。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
(筆者:親野智可等)