不登校の子どもへの接し方[やる気を引き出すコーチング]

私のコーチング講座に、時々、「子どもが不登校で」とおっしゃる保護者のかたが参加されます。「こういう子にコーチングではどうするのですか?」、「実際、コーチングで解決できるのでしょうか?」と聞かれ、いろいろ思い悩んで、藁をもすがる気持ちでいらしたことが伝わってきます。
今回は、以前、私の講座に参加されたNさんのお話をぜひ、ご紹介したいと思います。

子どもが安心できる「環境」を作る

Nさんには、かつて、不登校を経験した二人の娘さんがいらっしゃいます。長女は中学2年生から、次女は小学4年生から不登校になったそうです。講座終了後、Nさんは、私にこんなお話をしてくださいました。

「今日、石川さんのお話を聴いて、長女の時は、最もやってはいけないことをやっていたんだと思いました。『学校に行きなさい!』、『自分の弱い心に負けるな!』と引きずるようにして、学校に行かせようとしたこともありました。長女には、ずいぶん辛い想いをさせたと思います。次女の時は、コーチングだったように思います。今日、あらためて気づきました」

「そうでしたか、そんな体験をされたのですね。次女さんの時はどのように関わられたのですか?」
「長女の時の反省をふまえて、学校に行くことは強要しませんでした、『無理して行く必要はないよ』と伝えました。学校に行かないことを否定されず、行かなくても愛されていると実感できる場を作ることに力を入れました。子どもが安心感を得られる家庭環境を作ること。これは本当に大事だなと思います」

「心配」するより「信頼」する

「どのように、その環境を作られたのですか?」
「子どもは、ものすごく親の気持ちを察知する力を持っています。『学校に行かないなんてダメじゃないか』、『どうして、お前はそうなってしまったんだ?』といった否定的な感情をこちらが持っていると、敏感に察します。たちまち、心を閉ざしてしまうか、体調不良を訴えてきます。自分がどんな気持ちで、子どもを見ているかをいつもふりかえり、心配するよりも信頼することにしました。親の心の環境設定が、難しいですけど、一番大切ですね。本人も学校に行かないことに、どこか後ろめたいものを感じていたと思います。こちらが責めたり、問題として扱ったりすることはやめようと思いました」
「それは、まさに今日、私がお伝えしたことですね!」
「はい!そうなんです!」

「受けとめる」効果

Nさんのお話は、私に代わって講演をしていただきたいと思うぐらい、感動的なものでした。
「今、娘さんたちは、どうされていますか?」
「二人とも、立派に社会人になりました。長女は、今では、三人の子どもの母親です。実際、高校を卒業するまでには、他の同級生より3年遅れましたが、そんなことは、社会に出てしまえば、どうということはない話でした。次女は、結局、中学校にも行きませんでしたが、通信制の高校に入り、最終的に、自分で試験を受けて、公務員になりました」
「それは、すごいですね!ご自分で勉強されたのですか?」
「中学校までは、家では、学校の勉強はしませんでした。それでも、テレビやインターネットから、様々な情報を自分で吸収していましたし、ゲームの攻略本を読むために、読めない漢字の調べ方を自分で覚えました。本人が『やりたい』と思うことには、一生懸命取り組めるようです。私たちは、それを否定せず、受けとめ続けました。正直、ずっと、テレビを見ていたり、ゲームをしていたりする姿を見ると、どうかという気持ちはありましたが、まず、本人の意思を尊重して、受けとめるようにしました」
「すばらしいですね!」
「ありがとうございます。不登校で悩んでいる親御さんにぜひ!コーチングを伝えていきたいです」

私のほうが大いに感動し、励まされた出会いでした。実際の実践事例には、どんなマニュアル本よりも学ぶものがあります。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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