いつまで川の字で寝る? 【前編】幼少期の寝かたが心の育ちに影響する
お子さまは保護者のかたと一緒に寝ていますか? それとも家族別々ですか? 実は、幼少期の寝かた(就寝形態)は、お子さまの発達や親子関係に大きな影響を及ぼすそうです。1984(昭和59)年から20年余り、5,000件以上も日本の家族がどう寝ているか調査してきた、教育学博士の篠田有子先生にお話を伺いました。
3~4歳までは添い寝OK!
日本では、古くから添い寝をする文化があり、現在も多くのご家庭で親子の添い寝が行われています。幼少期の添い寝というのは、親子の信頼関係を築くために、非常によい方法だといえます。皮膚接触はもちろん、寝息も聞こえ、匂いも嗅ぐことのできる距離ですから、全身のあらゆる感覚神経で親の愛情を感じ取り、安心感を得られるのです。親から愛されているという実感は、お子さまの感覚器官の発達を促し、知的能力を開花させるためにもとても大切です。また、「自分は親から愛されているんだ」という実感こそ、さまざまなことに関心を持って学ぼうという意欲につながりますし、成長してからどんな困難にあっても自分を信じて乗り越えていこう、生き抜こうとするパワーの源になります。
近年、欧米式に赤ちゃんのころから保護者とは別室で寝かせるかたもいるようですが、日本のご家庭で行う場合には、習慣も考え方も異なるため、保護者との接触不足が心配です。欧米の場合は、いくつになってもハグしたり、キスしたりして愛情表現をする習慣がありますが、年齢が上がるにつれスキンシップが徐々に減っていく日本では、愛情伝達が不足しがちだからです。乳幼児期にスキンシップが足りないと、精神的な落ち着きが育たず、反抗的になったり、なかなか自立できなかったりする心配もあります。3~4歳くらいまでは、ぜひ安心・信頼が育つ添い寝をおすすめしたいと思います。
お子さまの自立を促すのは母親中心の川の字
添い寝というとお子さま中心の川の字で寝られるかたが多いと思いますが、5,000件以上の家族の寝かたを調べたデータとその統計学的な分析から、お子さまの自立を考えた際におすすめなのは、母親中心の川の字です。では、両者を調査してわかった心の育ち方の傾向を見てみましょう。
1)母親中央型……母親中心の川の字
このタイプで寝ているお子さまは、母親の隣に寝て十分なスキンシップが得られ、安心や信頼の心が育ちます。一方、離れて寝る父親を母親とは違った存在として認識します。母親とは密着し、父親とは間接的に接触することで、依存と自立のバランスのとれた情緒的に安定したお子さまが育ちます。母親中央型の家族は、お子さまの自立を見守るやや厳しい父親と、父子の関係を演出する母親がいて、川の字で寝ている間も夫婦は離れず信頼関係が保たれるので、きょうだいが2人、3人と増えていくのにしたがって、またお子さまの成長に合わせて、ひとり寝やきょうだい寝へ移行するのもスムーズです。
2)子ども中央型……子ども中心の川の字
最近ますます増える傾向にあるのが子ども中央型です。育児に積極的に参加する「イクメン」が増えていることが影響しているのだと思います。このタイプの場合、お子さまは両親の隣に接して寝ますから、十二分にスキンシップを経験し、安心や信頼の心が育ちます。ただ、このご家族は父母ともに子どもとの一体感が強く過保護気味なので父性的なしつけが作用しにくく、お子さまは自己中心的になりがちです。ご両親は早目の子離れを心がけてください。
母親と子どもが添い寝をして。父親だけ別室に寝るというご家庭もあるかもしれませんが、この場合、お子さまは父性的な関わりを受けにくく、情緒は不安定で社会性も未熟な傾向があります。これらは、あくまで調査によって比較的多く見られた傾向ですが、お仕事やさまざまな背景からどちらかの親としか一緒に寝られないという場合は、就寝時以外に父親や母親(もしくはそうした役割を果たす親類や周囲の大人)との関わりを重視してあげたいですね。たとえば、夜勤が多いご家庭では、「お父さん(お母さん)はお仕事をいつもがんばっているよ」と伝える、そしてお休みの日にたっぷりと遊んであげるなどするとよいでしょう。
『子どもの将来は「寝室」で決まる』 <光文社新書/篠田有子(著)/821円=税込> |