不登校支援は「社会的自立」第一に!

全国的に夏休みが終わって、約半月がたちます。この時期に、依然心配なのが、不登校ではないでしょうか。文部科学省の協力者会議が7月末、新たな不登校対策の最終報告をまとめています。不登校の子どもへの支援として、今、考えなければならないのはどのようなことでしょうか。

「シート」作成して関係者ぐるみで

文科省では、2014(平成26)年7月の教育再生実行会議第5次提言を受けて、不登校対策と、フリースクール等の扱いに関する検討という2本柱で、検討を進めてきました。このうちフリースクールに関しては、議員立法による法案づくりが曲折を経るなか、ようやく審議経過報告がまとまっています。これに対して、不登校対策に関しては、最終報告にまでこぎつけました。

最大のポイントは、「児童生徒理解・教育支援シート」を作成するなどして、学校内外の関係者が連携して、組織的・計画的な支援を行うよう提言していることです。シートは、東京都や横浜市に先例があり、一人ひとりの欠席状況や不登校のきっかけ、関係機関との連携状況、本人・保護者の希望、具体的な支援策と成果・見直しの経過を記録するものです。これをツールとすることで、学校内はもとより、関係機関等ともスムーズな引き継ぎや連携・協力が可能になります。全国的な普及を図るため、ひな形となるシートの「試案」も示しています。もちろん自治体などが独自で作成するものですが、実際にはこの試案が基本になるものと見られます。

この他、最終報告では、「文科省の調査で不登校の要因を詳しく聞く」「ICT(情報通信技術)を活用した学習の学校の出席扱いや、不登校の子どもに配慮した教育課程を組める『不登校特例校』制度を積極的に活用する」「保護者との信頼関係を大事にして家庭との連携を図る」……などを提言しています。

学校復帰にこだわるのではなく

ここで、最終報告に「学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指すことが必要」とあることに、改めて注目したいと思います。

もちろん、社会的自立のためには、「小さな社会」である学校で、のびのびと学校生活を送れれば、それに越したことはありません。しかし、学校復帰を急ぐあまり無理をさせてしまい、実際の社会的自立がそがれては、何にもなりません。

一方で、家庭任せや外部機関任せでもいけません。とりわけ保護者自身が、困難を抱えていて、支援を必要としている場合もあります。「保護者への働き掛けが保護者の焦りや保護者自身を追い詰めることにつながり、かえって事態を深刻化させる場合もある」のです(最終報告より)。

肝心なのは、何がその子のためになるかを考え、それに基づいてフリースクールなども含めた関係者が連携・協力して、最善の支援を行うことです。また、時々の在籍校はもとより、小中高段階と、継続した支援が求められます。そうして、それぞれの子どもの持つ潜在的能力を最大限に引き出し、社会で活躍してもらうことが第一です。そのためには教育制度ばかりにこだわってもいけませんが、決して教育を放棄してはいけないのです。

※不登校児童生徒への支援に関する最終報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/houkoku/1374848.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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