家族でキャンプ! 初めてでも大丈夫? どんな楽しさや成長がある?【前編】

子どもにアウトドア体験をさせたいのなら家族でのキャンプがおすすめ。「道具も知識も何もないので…」と敬遠されるかたがいるかもしれませんが、心配はいりません。未経験者が考えるより、キャンプの敷居はずっと低いと言います。キャンプをはじめとしたアウトドアライフを提案するSTEP CAMP代表の寒川一さんにお話をうかがいました。

キャンプの敷居は低い! 特別な知識や道具は要らない

キャンプ未経験のかたは、キャンプを自分とは遠いものに感じているかもしれません。確かにキャンプは非常に奥深いものですが、一方で過ごし方によっては特別な知識や道具を要さない気軽なレジャーでもあるのです。

私のキャンプ初体験は中学生のときで、知識も道具もありませんでした。同級生と浜辺に出かけ、友だちが持ち込んだ一張のテントに収容人数を超える中学生が何日も過ごしました。アウトドアグッズなど何ひとつ持たず、家から布団や茶碗、懐中電灯などを持ち込んだ記憶があります。この体験でキャンプに取りつかれ、以後40年以上、数えきれないほどのキャンプを体験してきました。予測外の失敗も多々ありましたが、「行かなければよかった」と思ったことは一度たりともありません。

未体験のかたが考えているより、キャンプの敷居はずっと低いと思います。みなさんをこの世界に誘うために、まずキャンプを通して得られる喜びや成長についてお話ししましょう。

楽しみながら、たくましさや創意工夫の力が育つ

限られた道具や物資を使いこなして生活をつくり上げていくことは、キャンプの喜びの根源です。子どもは、ふだんの生活では蛇口をひねれば無限に水が出てくると思っているかもしれませんが、キャンプでは水も燃料も必要最小限しかありませんし、道具も限られています。そうした環境で創意工夫をする中で、「これくらいの水や燃料の量が必要で、こんな道具があれば生きていける」といった感覚やスキルを養うことは、生きることに直結します。災害時など、いざというときのサバイバルにも大いに役立つでしょう。

制限のある環境ですから、いろいろと不便さも感じます。しかし、火をおこしたり、水をくんできたり、たき火でごはんを炊いたり…といったプロセスそのものが楽しいのがキャンプです。失敗しても、「次はこうしよう」「あれを持っていこう」などと考えることで、もっと行きたくなるのです。

自然の中で過ごす楽しさはマニュアル化できない

キャンプには多くの道具を持っていきますが、それは自然を克服するためではありません。私たちは、自然の中に少しお邪魔をするだけ。人間は自然には絶対に勝てないのです。私たちがどれだけ想像を巡らせても、自然の中では予想外のことが必ず起こります。マニュアル化できないことが、アウトドアで過ごす大きな楽しさと言えるでしょう。

自然はときに予想以上によい思いをさせてくれる半面、不測の危険にさらされることもあります。事故は、大概予測がつかない状況で起こるものです。キャンプは楽しいレジャーではありますが、自然の中で過ごすのですから気を抜いてはいけません。

家族の絆が強まる

ひとりで寝泊まりするソロキャンプも楽しいのですが、喜びを共有できる近しい人とのキャンプはまた格別です。食べ物はよりおいしく、夕日はより美しく感じられるでしょう。「あのときはこうだったね」と、生涯にわたって話のネタになる思い出がたくさんできるに違いありません。

それにテントを隔てて大自然が広がっていますから、夜中に物音がすると、「熊? それともお化け?」と、大人でもドキドキしてしまいます。まだ子どもが幼くても、いてくれるだけで心強く感じるほどです。きっと子どもも、いつも以上にお父さんやお母さんのありがたみを感じてくれるでしょう。もともと人間は、そのように自然の中で肩を寄せ合って生きてきましたが、現代の生活の中ではそのことをすっかり忘れています。キャンプは家族の関係性を見つめ直し、お互いの存在に改めて感謝する機会になるでしょう。

生き方を見つめ直すきっかけになる

エネルギー問題をはじめとした現代の社会問題を見ていると、効率や便利さだけを追求する生活は限界に近づいていると感じます。次世代に求められる生き方を考えるとき、その答えはアウトドア体験の中にある気がしてなりません。キャンプはそのように生き方を見つめ直すきっかけにもなると思います。

幼い頃からアウトドア体験を通し、きれいな海辺で遊んだり、ゴミひとつ落ちていない森や草原を走り回ったり。そんな体験を通して、人間と自然が共生するための感性や価値観を養ってほしいと思っています。

後編では、寒川さんが未経験者のかたによくある質問にお答えします。

プロフィール



アウトドアの指導者が各種のレクチャーやワークショップを行う「STEP CAMP」代表。神奈川県三浦市油壷・胴網海岸の「STEP CAMP BASE」を拠点として活動。災害被災時に役立つアウトドアのノウハウを、楽しく、実践的に学ぶ体験型の「防災キャンププログラム」などを提案している。著書に、『新しいキャンプの教科書』(池田書店)がある。

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