「この子に問題がある」と感じた時に見直してみることは?[やる気を引き出すコーチング]

先日、高校の養護教諭の先生から、こんな報告をいただきました。
「生徒の話を聴こうとするのですが、今まで全然聴けなかったのです。途中でどうしても口を挟みたくなってしまって、『そんな甘い考えは通用しないよ!』なんて言ってしまうのです。
コーチングの質問も使ってみるのですけど、答えが返って来ないのです。やっぱり、自分で考えられない子には無理だなあと思ったのですけど、この前、あることに気がついたのです。
それから、話を最後まで聴けるようになりました。生徒がだんだんと話してくれるようになって、ああ、そもそも、そこが間違っていたんだ!と腑に落ちました」

いったい、どんな気づきがあったのでしょうか。

「この子のことを知りたい」と思って聴く

「この前、石川先生のコラムを読んでいて、ハッとしたのです。生徒の話を最後まで聴けないのは、私に『答え』があるからだって。
自分の考えを生徒に納得させようとしていたのだって。そこで、『最後まで口を挟まず聴く』ことに意識を向けるのではなく、『この子はどう思っているのだろう?この子のことをもっと知りたい!』と思って聴くようにしてみました。

そうしたら、生徒の表情や声のトーンにまで意識が向くようになりました。授業に出たくなくて保健室に来てしまう気持ちにも、いろんな背景があるのだなってことがわかりました。不思議ですよ。『聴いてやろう』から『この子のことを知りたい』に、こちらが変わっただけで、生徒が心を開いてくれるようになった気がするのです」

「この子の幸せのために私ができることは?」というスタンス

この先生のお話はさらに印象的でした。
「私はずっとストレスでした。『こんなに言っているのに、なぜわからないのか?こんなに関わっているのに、なぜ変わらないのか?この子に問題がある』。そう思っていたから、イライラしますし、この気持ちは生徒にも伝わっていたと思います。

そこで、スタンスを変えてみました。『この子の幸せ、成長のために私ができることは何だろう?』。そう考えたら、生徒が質問に答えてくれなくても、また何か別の質問をしてみようかなとか、自分の関わり方を変えてみようかなと思えるようになりました。
すると、だんだん生徒が話してくれるようになったんです。気持ちを受けとめてあげるだけで、授業に戻れたりするのです。やっぱり、相手じゃないですね。問題だったのは、私のスタンスでしたね」

スタンスとは、相手と向き合う時のこちらの心の持ち方、あり方という意味です。先生の気づきと実践は、まさに、コーチングの核心と言えます。「話さない相手が悪い。行動を変えない相手に問題がある」と捉えて、手法だけ使ってみても、何も解決しません。そんなふうに自分のことを扱う人を、子どもは味方だと思えません。そういう人の言うことを素直に聴く気にはなれませんし、やる気も湧きません。信頼関係も築けず、お互いに前進しません。何も良いことはありません。

こちらのスタンスが、「私ができることは何だろう?どう関わったらもっと話してくれるだろう?」へと変わった瞬間に、すべてが好転していくのです。

「子どもに~させる」を「子どもが~する」に変えてみる

このコラムでも、折々に、子どもに対する言葉かけの例を紹介していますが、何を言うかよりも、どんなスタンスで関わるかのほうがずっと重要です。よく、「子どもに考えさせる」、「子どもに勉強させる」などという言い方をしますが、こちらが強制しようとしている時点で、すでに、それはコーチングではありません。
「子どもが自ら考えるよう関わる」、「子どもが自ら勉強に向かえるようサポートする」と言い換えてみるだけで、コーチのスタンスに立つことができます。こちらがそのスタンスに立ち続けることによって、子どもは自ら考え自ら動く子になっていくのです。

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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