インプットよりアウトプットで子どもは伸びる

「子どもに言って聞かせないと!」「もっと教えてやらないと!」という言い方をする大人が時々いますが、日々、コーチングをしていると、それはかえって逆効果のような気がしてなりません。
通常、勉強も、先生の話を「聞く」、教科書を「読む」など知識をインプットすることを中心に行われます。新しい知識を与えられることはとても大切なことですが、それを一方的に続けられると、子どものやる気は持続しません。一方で、人に「話す」、紙に「書く」など、自分の内側にある考えや情報を外側に表現することを「アウトプット」と言いますが、このアウトプットの作業を折々に入れてあげると、やる気につながり、学習効果も高いように思います。

■アウトプットの効果

アウトプットを意識的にとり入れている、家庭教師のAさんの事例をご紹介しましょう。Aさんは、たとえば、算数や数学の勉強で、子どもに解き方を教えること(インプット)もしますが、一区切りついたところで、必ず、アウトプットの時間をはさむようにして進めているそうです。

「今、説明したことを、もう一度、自分の言葉で、先生に説明してもらえるかな?」と、子ども自身に話すよう促します。一度、インプットしたことをアウトプットすることは、やってみると、けっこう大変な作業です。話を聞いてわかったつもりになっていることでも、いざ、自分で同じように説明しようとすると、本当に理解していないとなかなかできないものです。言葉に出して、自分で表現してみることは、知識を定着させるうえでも効果的な作業なのです。

Aさんは、「うん、うん、それで?」と興味を持って聴き、「そうだね! すごいね! ちゃんと理解できているね」と認める言葉をかけながら進めていきます。すると、子どもは、どんどんやる気になっていくそうです。

子どもが、どこまで、こちらの説明を理解したのかも、このアウトプットの過程で把握できると言います。あいまいな理解や間違った理解は、話の内容や話し方からすぐにわかります。子ども自身が話しながら、「あ、ここがうまく説明できない! 先生、もう一度教えてください」と気付くこともあります。わからないまま、次の単元に進んでしまうことなく、しっかり理解してから、次に進むことで、子どもの理解も定着し、勉強への達成感が湧いてくるそうです。

■日常会話の中にアウトプットの機会を

このAさんのやり方は、ご家庭でも大いに応用できるのではないでしょうか。おやつや夕食時、部活や塾の送り迎えの際の会話に、「今日はどんなことを勉強したの?」という質問を加えてみるのもよいでしょう。学校での事例ですが、授業の最後の数分間に、「今日の授業で一番印象に残ったことはどんなこと? 隣の席の人に一言ずつ伝えてください」と促す時間を入れるようにしている、という小学校の先生がいらっしゃいます。この時間をとり入れたことで、授業内容に対する子どもの興味が格段に違ってきた、とおっしゃっていました。

勉強内容に限らず、生活態度などについても、子ども自身のアウトプットを増やしてみることをおすすめします。「それって、どうして、こうしたほうがいいのかな?」「この場合はどうするんだろうね?」など、こちらが「教えてもらいたいな」という姿勢で質問していくことがポイントです。「それってこうするものでしょう」とか「こういうことも大事だと思うよ」など、こちらが教える(インプット)モードになると、子どもはたちまちうっとうしいと思うようになります。

言葉で表現したり、伝えたりすることが苦手な子どもも中にはいるかと思いますが、アウトプットは、紙に書き出してみる、絵に描いてみるという方法でもよいと思います。自分の内側にある気持ちや考えに、子どもが気付く時間をとってあげてください。

子ども自身がたくさんアウトプットし、自分で気付き、興味を持つ、そんな機会を増やしてみられてはどうでしょう。「教えてやらないと!」と思って、こちらが一方的に言って聞かせるよりも、子どもは自ら学んでいくものです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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