世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?

世界最先端の脳画像研究を通して見えてきた、「賢い子」の条件とは?脳医学研究の第一線で活躍し、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)の著者でもある脳医学者の瀧靖之(たき・やすゆき)先生に伺いました。

5歳までに「伸びしろ」が決まる?好奇心を育むために大切なたった1つのこと。

——瀧先生は世界でも最先端の脳画像研究を行い、約16万人のMRI画像を解析・研究してきたそうですが、一体どのような研究を行っていらっしゃるのでしょうか。

瀧靖之(たき・やすゆき)先生
東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授や、東北メディカル・メガバンク機構教授などを務める、日本の脳画像研究の第一人者。加齢医学の観点から脳の発達を研究し、『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)、『脳の専門家が選んだ「賢い子」を育てることばのえじてん』(宝島社)など教育関連著書も多い。

「加齢医学」と言って受精卵から赤ちゃんが生まれ、そしてお年寄りが亡くなるまでの一生を対象とした研究を行っています。
その中でも脳に着目し、何が脳の発達や加齢に影響するのかをMRIを用いて研究しています。

──そんな最新の研究を通して、「賢い子」の条件が分かってきたとのことですが、瀧先生が考える「賢い子」とは、どんな子でしょうか。

自分から「知りたい」と思える、知的好奇心が旺盛な子どもです。

動物や植物、運動、どんなことでも良いのですが、興味を持った対象に自分からおもしろがって調べたり取り組んだりすることができる子だと思います。

勉強にしても、テストの点数を取るのが目的ではなく、そもそもおもしろいからやっている。
だから努力とも思わず夢中になることができる、そんな子どもですね。

学ぶことが楽しくて仕方ないから、自然と学力が伸びていく。
その土台となるものが、「もっと知りたい!」という学びへの意欲、すなわち知的好奇心なのです。

──なるほど。学力の土台になるものなんですね。

そもそも私がなぜ知的好奇心の重要性に着目しているかというと、その1つには大人になった時の「脳の衰え」に大きな関連性が見出されているということがあるからです。

参考:Taki et al., Human Brain Mapping, 2012e

この図を見ていただけると一目瞭然ですが、知的好奇心のスコアが高い人ほど、脳の加齢速度が抑えられることがわかっています。

もっと言えば、知的好奇心やそこから生まれる趣味・運動により脳を刺激すること自体、老化を抑えることにつながるのです。

でも、趣味や好奇心って、大人になってから意識して持とうと思っても難しいですよね。
退職した後に趣味がなくて時間の使い方に困ってしまうお父さん、というとイメージがつきやすいでしょうか。

子どものうちならいつでもいいというわけではなく、脳のしくみから言えることとしては、3歳~4歳のうちに知的好奇心を引き出す関わり方が大切です。

多くの子どもは、3歳、4歳くらいになると「好き・嫌い」を自分で判断するようになります。
その前から身近にあったものは、自然と「好き」という判断をします。

そのため、できれば5歳までに知的好奇心を引き出してあげることが、子どもの将来のために非常に大事になってくると思います。

──子どもの将来を考えると、5歳までに知的好奇心を育むべきだということですね。

そうですね。

子どもの頃から絵を見るとか、ピアノを弾くとか、何か興味のありそうなものをさまざまに経験をさせてあげると、そこに興味のアンテナが張られていきます。
「おもしろいなあ」「もっと知りたいなぁ」という風に。

いろいろなものに興味を持つことが当たり前になり、それは大人になっても習慣・経験として残っていくのです。

長い視点で見ると、その蓄積が将来大人になった時の脳の老化スピードを抑えることにまでつながるんですね。

将来大人になった時を考えても、子どものときに知的好奇心を持っていろいろなことをやるってすごく大事なことなんです。

親ができる知的好奇心の引き出し方って?
http://benesse.jp/kosodate/201709/20170911-3.html

「勉強しなさい!」と言われなくても自分から学びに向かう子になるために

──知的好奇心は、具体的にどうやって学力に結びつくのでしょうか。

まず、知的好奇心が育まれていることで、当然身の回りのモノやコトに興味を持ちやすくなりますよね。

最初に興味を持つ対象は何でも良いんですよ。
昆虫とか、鉄道とか、魚とか、動物とか。対象は問わず、まずは興味を持つことが大切。

その次に、興味を持つことができたその何かに対して、さらに知的好奇心が湧いてきて「もっと知りたい!」を積み重ねていきます。
それを繰り返すことで、子どもは自分の好きで夢中になることができる何かを見つけます。

夢中になれるものが見つかったら、それを極めるにはどうしたら良いかということを自分で考えるようになるんです。

──「もっと知りたい!」という気持ちが「自分で考えて学ぶ力」になるんですね!

そうです。

好きなものを極めるために、「これは何?」「なぜ?」「どうしてそうなるの?」ということを自発的に考えるようになります。自分なりに色々な角度から問いを立てて考えていくのです。

そして、本を読んだり、人に聞いたり、インターネットで調べたり、様々な手段でその問いを解決していこうとするのです。
もしかしたら外国の本を読み始めることもあるかもしれません。

子どもの頃のこうした経験が下地となって、勉強にも仕事にも、そして趣味にもつながっていく。
だから知的好奇心をもって動く経験を基に、何かに熱中した体験ができると、子どもの「学びに向かう力」が伸びていくのです。

──それは、「勉強しなさい」と親が言わなくても、自分から勉強するようにもなったりするということでしょうか?

はい。それは可能性としてあると思います。

例えば東大生に東大に入ったきっかけや子どもの頃のことを聞くと、小さな時から知的好奇心が旺盛だったという人はすごく多いですね。

子どもの頃、何かにめちゃくちゃはまって自分から調べたり考えたりするのが好きだった。

その影響もあって、親に一度も「勉強しなさい」って言われたことがなくても勉強していたという人もいましたよ。

──すごい!それはぜひともマネしたいですね。具体的にどう引き出せばいいのでしょうか?

私の著書にも書きましたが、小学校の時にすごく成績が良かった子のうち、中学校や高校に進学してからも学力が伸びている子と、そうじゃない子との違いについて調査をしたことがあります。

すると、成績が伸びている家庭の大半が、子どもの頃に、本や図鑑などのバーチャルの世界を通じて好奇心を引き出されていたことがわかりました。

そうです。「情報として知ること」からまず入るんです。

成績が伸びている家庭の親御さんの多くは、子どもが昆虫や新幹線に興味を持ったことをきっかけに、次は実際に本物を見せに連れて行ったんですね。
本や図鑑でみた世界が、実際に手を触れられる距離に現れるわけです。

ただでさえ脳を刺激する図鑑を読むという行為を、五感を使うリアルな体験につなげていく。

視覚のみならず、聴覚、触覚、嗅覚と、脳の幅広い領域を同時に刺激しながら、より多面的な学びを得ることができるのです。

興味関心を持った分野のバーチャルの世界とリアルの世界のつながりを繰り返せば繰り返すほど、子どもの好奇心自体も引き出されていきます。

そして、これは重要なポイントですが、バーチャルの入り口をつくったり、リアルの体験につなげてあげたりするために最適なナビゲーターは、「親」なんですね。
ここはみなさん、ぜひ意識してほしいと思います。

──子どもの知的好奇心を引き出す重要性について、詳しいお話をありがとうございました!
次回は、そのために親は何をしてあげられるのかについて具体的にお話を伺います。よろしくお願いします!

知的好奇心を育むと何が変わる?
http://benesse.jp/kosodate/201709/20170904-3.html

イラスト:©うえたに夫婦

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