「子どもが好きなことを否定しない」がいかに大切か。東大院生の昆虫ハンター・牧田習さんに見る「〇〇好き」が学びにつながる、理想のかたち
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子どもの頃からずっと好きな「昆虫」を追い続け、現在東京大学大学院で昆虫の生態や進化の研究をしている牧田習さん。テレビでも昆虫ハンターとして活躍する牧田さんに、「子どもの好きを否定しない、牧田家の子育て」についてお話を伺いました。
虫嫌いな両親は
飼育箱が増えても怒らなかった
3歳の頃「ミヤマクワガタ」を祖父が捕まえてくれてから、ずっと虫とり、昆虫が好きで、今は東京大学の大学院で昆虫の生態や進化を研究しています。
幼稚園・小学校時代は、虫を捕まえては飼育箱に入れて、祖父母の家や自宅でたくさん飼っていました。僕がたくさんとってくるから、飼育箱はどんどん増えていくのですが、実は、両親とも虫が嫌いです(笑)。だけど飼育箱がどんどん増えていっても、両親から怒られたり、やめてと言われたりはしませんでした。
親の感情と僕に言う言葉は全く別、線引きをしているなと子どもながらに感じていました。
「親個人としては嫌だけど、子ども自身がしたいことなら、やればいい」というスタンスの子育てだったと思います。
6歳(幼稚園年長)夏休み前の頃。
虫好きな自分を受け入れてくれる
学校の先生や友達との出会い
中高一貫の学校に進学したら、その学校の先生は、小学校の時以上に虫好きの僕を受け入れてくれました。ずっと同じ先生が持ち上がりで、英語の単語を間違うと100回も書かせられ怖かったのですが(笑)、先生から「新種の虫を見つけたら俺の名前をつけろよ」と言われたので、僕がニュージーランドで発見した虫は、先生の名前にしました(笑)。また、小学校の時にはいなかった虫好きの友達もできて、一緒に博物館に行ったり、虫とりに行ったりもしました。
将来については
早い時期から両親と話していた
僕の両親は、僕が中学の頃から「将来のことだから、早いうちに大学とか見に行ったら?」とよく言っていました。学校でもみんな中3や高1でオープンキャンパスに行っていました。
周りのみんなは京大とか阪大とか、僕は関西出身なので、関西中心に行っていましたが、僕が行きたかったのはそれまでに全国いろいろ虫とりに行って、一番楽しかった「北海道」でした。
場所は関西からすれば遠いのですが、両親は高校生の僕の「行きたい」という気持ちを尊重してくれたので、虫好きな友達と2人で、高1の時に10日間北海道に行きました。
北海道に行ってからは、大学見学は1日しか行かず、あとはずっと虫とりをしていました(笑)。そこでの虫とりがすごく楽しくて、キャンパスもきれいだったので、「絶対ここに行きたい!」と思うようになりました。
そこからは、「北海道大学で虫とりをする!」というゴールから逆算して、どういった勉強が必要かを調べ上げ、ポジティブにモチベーション高く、勉強ができました。
僕は中学受験で第一希望には合格しなかったのですが、思えば、その時は自分自身がいやいや勉強していて、「なぜやるのか」ということを明確にできていなかったからかもしれません。僕もそのことに気付いたのは、大学受験が終わってからですが。
大学受験は、ゴールが明確だったので、高2ぐらいから「虫のために勉強する!」と勝手に体が動き出し、さっさと勉強しよう! と思ってやっていました。早く終わればまた虫とりもできますし(笑)。
あと、日本にいる虫は限られていて、外国にいる虫のほうが圧倒的に数も種類も多いのですが、そういう情報はほとんど英語で書かれていたので、中学生ぐらいから英語で虫の本を読むようになり、英語は得意になりました。
両親はずっと僕を
信頼して任せてくれた
大学に合格して、高校を卒業した3月末に北海道へ引っ越しました。
空港についたらすぐに虫とりを始め、メールなども確認していなかったので、履修科目をきちんと登録できておらず、入学した4月には既に留年が決まっていました(笑)。
しかたなく、この1年は海外へ虫とりに行こうと英語を勉強しながら、フィリピンやニュージーランドで虫とりをしました。
そこで出会う虫たちは知らないものばかりで、出てくる虫出てくる虫、目新しいものばかりで、その新鮮な感覚は今でも覚えています。
当時から、国内は勝手にどこへでも出かけていましたが、両親には特に何も言われませんでした。さすがに海外は何があるかわからないので、「行く時と場所は教えておいてほしい」と言われましたが、行くことに関して止められたことはありません。
両親は僕のことを信頼して、任せてくれていました。好きなことだから、止めずにどんどんやらせてくれていたのだと思います。
9歳の頃、虫とり大会に行って優勝した時の写真。母と。
やりたいことをやるために
やりたくないこともちゃんとやる
多分、僕は何となく生きてきたと思うのですが(笑)、「人生、ここはがんばるべき」というポイントはいくつかあって、そのポイントはきちんとおさえるようにしました。勉強で言えば、「やりたいことをやるために、やりたくないこともちゃんとやる」ということです。
また、大学受験の時も大学院受験の時も、「自分でやりたいことをやるため」と、「周りからの信頼を得るためにもちょっとだけ頑張る」という気持ちがありました。
両親は、僕の性格もあると思いますが、「好きにやればいい。後悔がないようにね」といつも言ってくれていましたし、いつも応援してくれていました。その気持ちに応えたいという思いが、根底にはあったかもしれません。
まとめ & 実践 TIPS
子どもの好きな気持ちを否定するような言葉はかけずに、ずっとご両親は牧田さんの虫とりを応援してくださったそうです。また関心がないというわけではなく、適度な距離感で牧田さんをずっと見守り任せ、信頼することで、牧田さんもその信頼に応えられるよう努力をされたようですね。親子の信頼関係が1つのキーワードになりそうです。
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