ひらがなや数、どのように学ばせると効果的?【前編】
子どもがひらがなや数に興味をもっているけど、何をどう教えればよいのかわからないという保護者は少なくないのでは。幼児期、ひらがなや数は、どのように学ばせると効果的なのでしょうか。また小学校入学までに最低限しておきたい準備とは。文京学院大学大学院特任教授の平山許江先生にお聞きしました。
生活や遊びの中で興味に沿って力を伸ばしていくことが基本
幼児期にひらがなや数について何をどう教えるかは、保護者にとって大きな関心事でしょう。知的教育は、園によって方針がかなり異なりますから、いわゆる早期教育に熱心な園の話を聞いて、「うちの子は何もしなくて大丈夫だろうか」などと不安や焦りを感じるかたもいるかもしれません。
「漢字をいくつ書けるようになった」「何桁まで数えられるようになった」「跳び箱が何段跳べるようになった」という場合は、いわば学びの「量」に目を向けています。それはそれで大切な側面もありますが、幼児期の学びでは「量」よりも「質」を重視すべきです。幼児期の学びの質とは、子どもの「知りたい」「やりたい」といった気持ちを十分に引き出しているか、ということです。また、ここで言う「学び」とは、いわゆる勉強ではなく、生活や遊びを通して自然と力を伸ばすことをイメージしています。
子どもにとってひらがなや数を学ぶことは「勉強」ではない!
「知りたい」「やりたい」といった気持ちは、子どもが興味をもって学んだときに伸びるものです。例えば、子どもは、乗り物でもアニメのキャラクターでも、自分の興味のある対象をとことん追求するでしょう。知れば知るほど、自分が知らない世界が広がっていることを感じ取り、新たな知的好奇心がわいてくるのです。それが学びの不思議さであり、面白さです。そうした体験の積み重ねが「もっと知りたい」「もっとやってみよう」といった気持ちや意欲につながり、それが本格的な勉強が始まる小学校以降、生涯にわたり学びを支える土台となります。
ところで、大人は、子どもがアニメのキャラクターを覚えることを「勉強」とは考えませんが、子どものとらえ方は異なります。電車もアニメもひらがなも数も、自分が興味をもつかどうかが大切であって、「勉強かどうか」なんて考えません。興味があれば覚えるし、興味がなければそっぽを向く、それだけのことです。特に幼児期はそうした傾向があるため、興味がないにもかかわらず、教室のような場所で一斉に教えたり、問題に取り組ませたりしても、なかなか学びの質は高まりません。できることが増える中で自信や意欲が高まればよいのですが、その半面、「勉強はつまらない」と感じたり、できないことで自信を失ったりしてしまう心配がつきまといます。
気持ちや意欲を高める「題材」としてひらがなや数の学びをとらえる
私の子ども時代は、就学時にまともに読み書きができる子どもはあまりいませんでした。現代のように絵本がたくさんあったわけではなく、テレビ放送も限定されているなど、文字に興味をもつような刺激がなかったからです。また、「学校に入ってから学べばいい」という風潮もありました。その代わりではないのですが、私は自然の中で育ったため、例えば、アブラゼミとミンミンゼミとヒグラシを鳴き声で区別でき、採り方もよく知っていました。自然を通して未知の世界を垣間見て、知的好奇心がかき立てられていたわけです。
今の子どもは、日常的にたくさんの文字や数にふれて、興味をもちやすい環境にあります。そこで、「知りたい」「やりたい」といった気持ちを伸ばす学びの「題材」としてひらがなや数をとらえていただきたいと思います。電車やセミに詳しくなることも全く否定しませんが、それよりもひらがなや数は小学校以降の勉強につながるという点で応用が効きますし、社会的にも価値が置かれていますから本人の自信につながりやすいでしょう。
それに現実的な問題として、個人差はあるものの、ほとんどの子どもがひらがなや数の知識をもった状態で小学校に入学します。国語では小学1年生の秋口までには80字もの漢字を勉強することを考えるとかなりのハイペースですし、あらゆる教科で文字や数は学習の基礎となります。そのため、入学後に教わるとはいえ、ある程度の知識がないと小学校の勉強にスムーズに適応できないおそれがあります。就学前の目安として、ひらがなについてはたどたどしくてもよいので文章の拾い読みができ、わからない言葉について質問できるくらいの力が最低でも欲しいところです。数については後述しますが、ほとんどの子どもは幼児期に自然と100くらいまで数えられるようになるため、それほど目標を強く意識する必要はないでしょう。