乳幼児期から育む、折れない心【後編】レジリエンスを伸ばす保護者の働きかけとは

失敗や挫折から回復する力・レジリエンスは、生まれながらの差はあるものの、環境との関わりや大人の働きかけによって後天的に育まれます。特に、子どもにとって最も影響力の大きい保護者の関わりが重要だといいます。埼玉学園大学の小玉正博教授に、子どものレジリエンスを伸ばすポイントを伺いました。



保護者の関わり方がレジリエンスを伸ばす鍵

レジリエンスを伸ばすうえで、保護者に求められる姿勢は、子どもが自分に自信を持てるような働きかけをすることです。子どもを成長させたい一心から、短所ばかりに目を向けると、子どもは「自分は足りない存在だ」とネガティブに受け止めてしまいかねません。

一見、よさそうですが、「やればできる」という励ましはよくありません。やればできるはずなのにできないのは、「自分がダメだからだ」と、ますます自信を失ってしまいかねないからです。できたか否かという結果ではなく、プロセスを重視しましょう。仮に結果が伴わなくても、意欲を認めると、「またやってみよう」という前向きな気持ちにつながります。

その子の強みやよさが発揮できるように導くことも、保護者の大切な役割です。それをやっていると楽しくてたまらず、やり続けることで多くの気付きが得られ、張りのある生活を送れるという対象を、子どもと一緒に見つけましょう。小学生くらいのうちに、「好きなことを突き詰めることによって、自分の強みが発揮できる」という感覚を持つことは、個性を伸ばすうえでも大切です。



適度な援助によって自立を促す

「自立」と「援助」は対立関係と捉えられがちですが、それは正しくありません。自立を支えるのは、「適度な援助」です。自分の力を超えると判断した時に助けを求めて克服することで、徐々に自立の幅を広げていくのです。助けを求められることは、レジリエンスの重要な要素でもあります。そうした力を育てるために、保護者が何でも事前に察して助けてしまうのは、よくありません。反対に、自立させようとするあまり、年齢や能力を超えた課題を背負わせるのも適切ではありません。

保護者の援助のあり方のイメージは、歩き始めの赤ちゃんと母親の関係です。よちよちと歩く赤ちゃんは、転ぶとニコリと笑います。自分の足で歩けるのがうれしくてしかたないのでしょう。母親は赤ちゃんが安全に歩ける環境を整え、少し距離を置いて見守ることに徹します。このように子どもが挑戦できる環境を用意したあとは、手を出さないことが理想的な関わり方です。



人や社会とのつながりを実感させよう

大人も一緒ですが、子どもの心が折れそうになった時は、自分は無力で無価値な存在と感じ、深い孤独感に苦しんでいることが多いようです。子どもがそんな状態に陥ったら、「あなたは大丈夫。私たちが守っているよ」と、孤独感を拭い去るメッセージを伝えましょう。必ずしも言葉にする必要はなく、そばにいて他愛のない会話をしたり、普段より豪華なお弁当を作ったり、一緒にカラオケに行って発散したり。本人が勇気付けられ、癒され、自信を取り戻せるような働きかけを心がけてください。子どもが「自分は守られている」と実感すれば、やがて立ち直り、次の試練に立ち向かうことができるでしょう。

援助の一例として、私がカウンセリングをした親子の話をします。その児童は、担任と相性が悪くて不登校になり、進級して担任が変わっても嫌な記憶を思い出してしまうので、学校になかなか通えませんでした。母親に話を聞くと、母親が子どもに一方的に話すだけで、子どもが自分の内面を語っていないことに気付きました。そこで、「毎晩、子どもの話に口をはさまず、しっかり聞いてください」と、母親にアドバイスしました。子どもが自分の話をすることで、自ら気付いたり、気持ちが浄化されていったりするからです。母親がゆっくり話を聞く時間を持つようになると、不登校の状況は徐々に改善に向かいました。

少し遠回りに聞こえるかもしれませんが、子どもに人や社会に感謝する大切さを教えることも意識してください。人は、一人では生きられない社会的な動物です。自分が社会の中で大切にされ、生かされているという感覚を持つと、「自分は一人ではない」と感じて、困難な場面も前向きに捉えやすくなります。そのためには、まさに率先垂範(そっせんすいはん)、親自身が周りの人や社会、仕事などに感謝する気持ちを表しましょう。地道ではありますが、そうした親の姿を鏡として、子どものレジリエンスは着実に育まれていくのです。

『ヘコんでも折れない レジリエンス思考: 復元力に富む「しなやかな心」のつくり方』『ヘコんでも折れない レジリエンス思考: 復元力に富む「しなやかな心」のつくり方』
<河出書房新社/小玉 正博 (著)/1,404円=税込み>

プロフィール

小玉正博

小玉正博

埼玉学園大学大学院心理学研究科長。臨床心理士。医学博士。筑波大学を経て現職。大学の臨床心理カウンセリングセンターで臨床心理士として、子どもから大人までの悩みや問題解決に当たっている。著書に『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』(河出書房新社)など。

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