2024/12/06
第7回 習い事・学習塾について考える その1 習い事の実態
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員 木村治生
はじめに
今回は、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施した「子どもの生活と学びに関する親子調査」の2015年から2023年までのデータを用いて、子どもたちの学校外での学びの状況を明らかにする。日本では、多くの子どもが学校での学びに加え、放課後や休日に習い事や学習塾などで学んでいる。しかし、それらの利用が経年でどのように変化しているのかを長期で追跡するようなデータはあまり存在しない。ここでは、近年の9時点の変化をとらえる。さらに、データからは「教育格差」の実態を裏づける結果も明らかになっている。こうした結果を踏まえて、より多くの子どもの学びを支えるにはどうしたらよいのかを社会全体で考えるために、本データを役立てていただけると幸いである。
習い事の経年変化や学年変化
本調査では、小学生の8割、中学生の5割、高校生の2割が何らかの習い事をしていることがわかった。経年(図1-1)でみると、その割合はおおむね横ばいで推移しているが、小学生はコロナ禍の影響か2020年のあたりでわずかに比率が低下している。これと逆に、中高生はコロナ禍の影響が弱まった2022年に増加している。
学年別(図1-2)にみると、小学生のうちは7~8割で推移している。しかし、小6から中1(小中接続)の段階で習い事率は大きく低下し、5割を下回る。さらに、中学生のうちは4~5割をキープしているが、中3から高1(中高接続)でも大きく低下し、高校生では2割程度になる。習い事率は、学校段階が変わるタイミングで大きく低下する。
習い事の種類
それでは、子どもたちはどのような習い事をしているのか。小学生に人気の習い事(表1-1)をみると、運動系では「スイミング」、文化系では「楽器・音楽教室」や「英会話・英語教室」が高い割合を占めている。経年での変化は、それほど大きくはないが、「体操・運動遊び」「ダンス」ではわずかに数値が上昇し、「楽器・音楽教室」「習字・硬筆」ではわずかに数値が低下している。
一方、中高生(表1-2)になると多くの習い事の比率が下がる。とくに、運動系の習い事は、5%を超えるものがない。そのなかでは、「楽器・音楽教室」や「英会話・英語教室」は、中高生になっても相対的に高い比率を保っている。
習い事の種類については男女によって違いが見られ、運動系は男子に、文化系は女子に人気があることがわかる(表1-3)。運動系で男子に人気なのは「サッカー」「武道・武術」「野球・ソフトボール」などである。これに対して、「ダンス」は女子に人気である。「スイミング」「体操・運動遊び」などは男女ともに高い比率だった。文化系では、「楽器・音楽教室」「習字・硬筆」で女子の比率が高く、「英会話・英語教室」は男女ともに人気だが、男子の方が高い習い事は選択肢の中にはなかった。
属性による習い事率の違い
習い事率に関しては、男女による大きな違いはみられないが、中学生でわずかに女子の方が高かった(図1-3)。地域差については、小1~3生で「政令指定都市・特別区」で高く、「5万人未満」で低いという結果で、都市部ほど習い事が盛んなことがわかる。ただし、他の学校段階では顕著な差はみられず、通塾率ほど地域差は大きくない。
習い事についてのデータの最後に、公私による違いと世帯年収による違いを確認する(図1-4)。公私差については、小学生では「私立・国立」の比率が高いが、中学生では「公立」のほうが比率が高い。世帯年収による差については、小学生から中学生にかけて、世帯年収が高いほど習い事をしていることがわかる。
以上のように、習い事率は経年では大きな変化がないが、学年によって大きく異なる。小学生では8割が学習塾を除く何らかの習い事をしているのに対して、中学生は5割、高校生は2割である。また、人気がある習い事についても、この10年で大きな変化はみられなかった。属性では、小学生で都市部ほど、世帯年収が高いほど習い事率が高い傾向がある。
次回(その2)では、同じような視点で学習塾の実態を確認する。
次回(その2)では、同じような視点で学習塾の実態を確認する。