【新高2・新高3】「令和5年度大学入学共通テスト」を振り返り、今後の進路・受験を考える

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2023年春の受験シーズンがほぼ終わり、次はいよいよ! という新高3生の保護者、まだまだ2年あると思っている新高2生の保護者のかたもいらっしゃると思いますが、「令和5(2023)年度大学入学共通テスト」について振り返りながら、大学入試について一緒に考えましょう。

ちなみに、入試の《年度》は「何年度に入学する学生を選抜するか」で考えるので、令和5(2023)年4月入学者のための試験は令和4(2022)年度中に行われますが、「令和5(2023)年度入試」です。

この記事のポイント

「共通テスト離れ」は本当?

最近、「共通テスト離れ」という趣旨の記事を見ることがあります。

たしかに2023年度の共通テストの全体の志願者は512,581人で、2022年度の530,367人と比較すると17,786人減っています。

ただ、高校生数も減っており、現役生全体の数(高等学校卒業見込者全員)を分母に志願率を見てみると、次の図1のように決して下がってはいません。

<図1>現役志願率(大学入試センター公表の志願者データ資料より作図)

また、国公立大学は全大学で利用、多くの私立大学でも定員の一部で利用しており、次の表1のとおり、わずかではありますが利用する大学は増加しています(2023年度の学部を設置している私立大学は602大学なので、9割近い利用率です)。

<表1>大学入学共通テスト利用大学数(大学入試センター公表資料より作表)

今、大学入試では「多面的・総合的評価の充実」=「一人ひとりの受験生について、教科学力だけでなく、さまざまなよい面を確認できる入試にしていこう」という流れがあります。

教科学力の測定は共通テストに任せて、各大学では、受験生を多面的に見ることにパワーを注ごう、と考える私立大学が出てきています。

たとえば早稲田大学政治経済学部では、国公立大学と同じように一般選抜で共通テストの受験を必須とし、加えて個別試験で総合問題を課すようになりました。

また青山学院大学では、これまで3科目中心だった共通テスト利用の選抜に、4~6科目を課す選抜方式を加えています。

「共通テスト離れ」という記事を見て、「共通テストは受けなくてもいいんじゃない」と考えるのは早計です。合格を得られる機会をしっかり生かせるよう準備をすべきです。

理高文低の志望動向

ベネッセコーポレーションと駿台予備学校が提供する大学入学共通テスト自己採点集計「データネット2023」では、自己採点と同時に志望大学情報を集計しています。

国公立大学の学部系統ごとの志望動向は次の図2のとおりでした(実際どこに出願したか、ではなく自己採点時の志望状況です)。

<図2>国公立大学学部系統別志望動向(「データネット2023」より)

グラフの数値は、昨年度の「データネット2022」での学部系統ごとの志望者数を100とした指数を示しています。

全体としていわゆる「理高文低」と言え、特に医学、薬学、農・水産学の志望者指数が対前年比で大きくなっていました。いずれもコロナ禍の影響による関心の高まりが背景にあります。

また、文系の中では経済・経営・商学系統の対前年比が高くなっています。
高校では地域に関する探究活動を熱心に行うところが増えており、地域振興やビジネスについて考える機会が多いことが影響しているのではないかと考えられます。なお、「社会学」系統は学部としての募集人数が少なめの系統なので、指数が上下に動きやすく、参考値として見ていただけたらと思います。

ただし、学部・学科の選択は、「本人のやりたいことが何か」ということが最も重要です。また、学問領域が何であれ、論理的に考え、物事を追究する力を付けることはできますし、その力は社会に出てから必ず生きます。ですから、志望者の増減だけを見て学部・学科を選ばないよう注意してあげてください。

一方、国家資格を取得できる学問領域では一生ものの価値を得ることができますし、AI(人工知能)、データサイエンスといった理系に親和性の高いスキルが、これからの産業界で重視されることは間違いありません。そういった大きな社会の動きについては、既に社会に生きる大人の一人として保護者のかたから高校生本人に伝えていただけたらと思います。

共通テストにチャレンジする意義

大学入学共通テストの出題傾向は、思考力重視、読解力重視であり、覚えた知識を1問1答式に答えるような問題はかなり少なくなっています。新高2生が受験する「新課程入試」ではその傾向がさらに強まると予測されます。

読解力でいえば、たとえば、2023年度本試験の『国語』は、実質48ページに問題と設問が掲載されていますが、80分の試験なので、平均して80÷48=1分40秒に1ページを処理していかなければなりません。決してやさしくない文章を読みながら答えを考えるためには、かなりの速読力が求められます。他の教科でも同様に読解力が求められる問題が多く出されています。

このことが前述の「共通テスト離れ」の話と結び付いて「思考力・読解力重視で難しいから受験生が敬遠する」と言われることがあります。しかし、難しいことから逃げるのが高校生だ、などということは絶対にありません。必要なこと、大切だと思うことには努力できる高校生が大半です。

大学に行くということは「文字言語」の世界に行くということです。
専門書その他の文字から情報を得るのが当たり前になります。「文字言語=文系」というイメージがあるかもしれませんが、理系の学問こそ勝負の場は論文であり、まさに文字言語の世界です。ですから、共通テストでは多くの教科で読解力を要求しています。当然思考力も、です。大学入学後、大学での勉強に適応できない状態にならないように、入試問題が変化していると考えましょう。

動画で情報を得ることに慣れている高校生が多いと思いますが、文字言語のほうが動画よりも圧倒的に速く、多くの情報を得られます。社会に出てからも文字言語との付き合いはそう簡単にはなくなりません。スマホやアプリの約款、マニュアルなど、日常生活においても、(本当は)読まなければならない文書は以前より増えているかもしれません。

これからは動画で伝える力も必要ですので、動画視聴を批判したり制限したりする必要はありませんが、一方で、上記のような文字言語の必要性・有効性を語ってあげていただけたらと思います。また、保護者のかたが一社会人として文字言語に向き合っている姿、たとえば本を読んでいる姿、文書を作成している姿などを見ると、高校生本人の意識にも文字言語の大切さがしみ入ってくるのではないかと思います。

まとめ & 実践 TIPS

高校では教科の授業以外も含め、さまざまな活動をとおして読解力、思考力を高めるための指導の工夫が行われています。保護者のかたも読解力、思考力を高めて高校を卒業してほしい、と願われるのではないでしょうか。共通テストはその延長にあります。たしかにハードな出題内容ではありますが、高校生本人があきらめずに共通テストに向きあえるよう、応援してあげてください。その努力は、大学に入って、また社会に出て求められている力の向上に必ずつながります。

プロフィール


西島 一博(にしじま かずひろ)

ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳などの制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。

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