理科の時事問題、ここに注目! ~地震と気象、天体の動き~ [中学受験 6年生]
中学入試では、社会科だけでなく、理科でも時事的な問題はよく出題されます。そこで、2017年度入試で出題されそうな時事問題についてお話しします。
時事問題は、ほぼ地学分野に限られる
中学入試で出題される時事問題は、その多くが地震や火山活動、気象現象、天体の現象などを扱う地学分野です。日本人研究者がノーベル賞を受賞するなど、特別なニュースのあった年以外は、物理、化学、生物分野の時事問題はあまり出題されません。
時事問題は、時事的な現象を題材にして、科学的な考え方の根本となる「原理」を問うための問題です。時事はあくまでも題材にすぎないので、ニュースの内容を細かく暗記するといったような特別な対策は必要ありません。それよりも、時事に関連した基礎的な原理を、しっかり身に付けることが大切です。
では、2017年度入試に出題されそうなトピックについて見ていきましょう。
地震と気象はセットで基礎事項をチェック
熊本地震は、2016年4月14日以降、熊本県・大分県を中心に、九州地方で相次いで発生した地震です。これに関連して、地震に関する問題は出題される可能性が高いとみられます。たとえばP波、S波の到達時間から震源までの距離を求める計算、マグニチュードと震度の違いなど、基礎事項をおさえておきましょう。
なお、東日本大震災がプレートのひずみによる海溝型地震であったのに対し、熊本地震は活断層の活動による内陸型地震でした。これに関連して、断層についても理解しておきたいものです。断層面に対し、左右に引っ張り合う力が生じることで、上になっていた側がずり落ちてできるのが「正断層」、左右から押し付ける力が働くことで、上になっていた側がせり上がるのが「逆断層」です。あいまいなまま覚えているお子さまも多いので、注意が必要です。
また、今回の地震では集中豪雨によってさらに被害が拡大しました。雲や雨、風が発生する原理、天気図の見方など、気象についても基礎をしっかり確認しておいてください。
地震と切り離せないのが火山活動です。「火山があることの利点」について述べさせる問題も、比較的よく出題されています。大きな利点としては、温泉が出ること、地熱発電ができることの二つが挙げられます。
天体現象は惑星の動きに注目!
2016年の天体現象としては、次のようなものがあります。
◆火星の最接近(スーパーマーズ)、火星とアンタレスの接近
5月31日、火星が2年2か月ぶりに地球に最接近しました。また、この時期、火星はさそり座の中を移動しています。7月~9月上旬には、さそり座の1等星アンタレスと火星が近付いて見え、赤さ、明るさを競い合っています。
◆金星と木星の大接近
8月27日の夕刻に、金星と木星が0.5度程度まで接近します。二つの大きな明るい星が、ほぼくっついて見えるという現象です。天気がよければ、この日はぜひお子さまと空を眺めてみてください。
これらに関連して、ぜひおさえておきたいのが惑星の動きです。惑星と地球との位置関係や見え方について、基礎事項を確認しておきましょう。
難関校志望なら「惑星の逆行現象」にも注目
火星などの惑星は、星座の間をジクザグに進むような複雑な動き方をします。これを「惑星の逆行現象」といい、これまでも難関校では時折出題されてきました。なぜこのように見えるのか、少し難しいですが、図や動画などを使ってゆっくりと説明すれば、子どもでも理解は可能だと思います。難関校に挑戦する場合は、勉強しておくとよいでしょう。
たとえばこちらの動画は、地動説の発見と絡めて説明されており、参考になります。
◆科学技術振興機構 サイエンスチャンネル「ユータと不思議な宇宙の書 アストロペディア (3)レボリューション -天動説から地動説へ-」
https://www.youtube.com/watch?v=0IE0r34iJBo
時事問題は、現象を原理的に説明するために出題される
理科のそれぞれの単元は暗記科目だと思われがちですが、大事なのは一つひとつの現象を「覚える」ことではなく、現象を普遍的な原理を使って説明することです。地震や天体現象は、原理的に考えるための格好の材料だからこそ、よく出題されるのです。理科の「理」は理由の理、原理の理です。このことを念頭に置きつつ、時事問題にもお子さまと楽しみながら取り組んでいただきたいと思います。
(筆者:金廣志)