子どもの可能性を引き出すコミュニケーションと、夢に向かうモチベーションの持ち方

元フジテレビアナウンサーで、現在はキャスターやコメンテーターとして活躍中の政井マヤさん。ご自身は中学受験を経験され、2児の母でもあります。そんな政井さんが、子どもが夢に向かうためのモチベーションの高め方についてお話しします。(『Benesse進学フェア2016』講演会 2016<平成28>年5月、東京国際フォーラムより)。

かわいい制服に憧れて決めた中学受験

私はメキシコで生まれ、2歳の時から神戸で暮らすことになりまして、そして自宅から1時間半くらいの距離にある中高一貫校の女子校に通っていました。
自宅から距離が離れていたこともあり、私も母もよく知らない学校だったのですが、ある日母親が友人に、「この学校いいわよ」ということを聞いて、説明会に行ったのがきっかけでした。そこで母が校長先生のお話にほれ込んで、私にすすめてくれたんです。そこで、私自身も小学校3年生の時に文化祭に行き、学校の雰囲気がすごく気に入って、その学校を目指してがんばろうという気持ちになりました。

今でも校長先生に毎年のように会わせていただくくらい心のよりどころとなる学校に出会えたと思っています。お子さまが「この学校、私に合っているな。通えてよかったな」と思える学校に通わせてあげたいと思う保護者の気持ちは、強いモチベーションになると思います。
ちなみにその学校は制服がすごく可愛くて、子ども心には、それだけで勉強のモチベーションになっていました(笑)。

「アナウンサーになりたい!」と言えなかった中高生時代

「アナウンサーになりたい!」と思ったのは小学校の3、4年生だったかと思います。「世界ふしぎ発見!」という番組を見ていて、世界各地の秘境や遺跡など、いろいろなところに行って、そのことを自分の言葉で伝えられる素敵な職業だなと思いました。小学校の卒業文集には「リポーター」と書いていたと思います。

でも、なんとなく憧れはあったものの、そのあとはずっとその夢を忘れていたんです。忘れていたというよりは、心のどこかで「無理だろうな」と思っていたんですよね。「アナウンサーになれると思っているの?」って誰かに言われたらどうしよう、などと考えてしまうような性格だったんです。
それを変えたのが大学を休学して、祖母のいるメキシコで過ごした1年間でした。

チャレンジ精神が育まれた1年間のメキシコ生活

私の人生で最も影響を受けたのが、メキシコ人の祖母なんです。
メキシコには小学生くらいから夏休みにちょこちょこと行くくらいだったのですが、大好きな祖母のことをもっと知りたい、もっと一緒に過ごしたいと思い、大学生の時に学校を1年間休学して、メキシコに渡りました。

祖母は敬虔なクリスチャンで、その信仰心のあつさにすごく感銘を受けました。祖母いわく、「人生、いろいろがんばっても結果は自分ではどうしようもないこともある。やることだけやって、あとは神さまにお任せする。神さまの決めてくださったことはよいことで、人間の力ではわからないことがある。」と、そんな風に委ねることで強く生きていけるのではと思ったりしましたね。

「チャレンジしてみよう!」人生を変えたある言葉

ひとつ、お子さまに伝えたいスペイン語があります。

「ラビダ ウナベス(La vida una vez)」=人生は一度きり
当たり前の言葉なのですが、このころメキシコで流行っていた歌で、この言葉を聞いたときに、私は雷に打たれたようにショックを受けました。

それまでの私は、すごく恥ずかしがり屋で、人前に立つと真っ赤になって、授業で指されてもしゃべれないくらいの上がり症だったんです。でも、メキシコで「そうか、人生一度きりなんだ。じゃあ、周りの人にどう思われるとか、失敗したら格好悪いとか、そんなことを思っているのはすごくもったいないな」と思うことができたんです。私が行きたいように、やりたいようにチャレンジしてみよう。チャレンジして、それが叶わなかったとしても、それは格好悪いことではなくて、それはそれでいい経験。次のチャレンジに繋がるんじゃないかなって、すごく思ったんです。
この経験がなければ私はアナウンサー試験を受けることはなかったでしょうし、この時、大きな扉が開きました。

夢はひとつじゃなくてもいい それぞれの道でできることがある

アナウンサー試験を受けると決めたあとは、どんな風にアナウンサーの人が話しているのか注意深く見てみたり、新聞の記事を声に出して読んでみたり、テレビ局が主宰しているセミナーに参加してみたりと、できる限りのことはやりました。ただ、アナウンサーの道しか考えられないかというとそうではありませんでした。「アナウンサーになろう」というよりは、「アナウンサー試験も受けてみよう、それを選択肢の中に入れてみよう」という感じでした。

私もフジテレビにいたころは、「アナウンサーになりたい」という学生さんからのOG訪問を受ける機会も多くありましたが、「絶対にアナウンサーになりたい!」というかたもいて、その熱意は素敵なのですが、それしか夢がないというと少し心配だなと思ってしまうんです。アナウンサー試験は、およそ4,000人受けて3人受かるかどうかという倍率。そこには運試し的な要素もありますから。

中学受験は、少し違うかもしれませんが、「ここの学校じゃなきゃ私の人生はだめ」と思ってしまうのは避けたいですよね。何かに憧れを持つのはすごくいいことだけれど、それだけでなく、いろいろな道があって、そこでは自分はどんなことができるだろうと、そういう意味で前向きなひとつのチャレンジとして考えられたらよいと思います。

子どもと心を通わせるスキンシップの時間

小学校低学年くらいですとまだ大丈夫かと思うのですが、子どもが大きくなってくると、だんだんスキンシップが減って親としては寂しくなってしまうこともありますよね。
そこで、勉強が終わったあとに肩たたきしてあげるとか、お風呂上がりの髪を乾かしてあげるとか、ほんの少しでよいのでスキンシップをしながら疲れていないかなと様子を見たり、子どもの話を聞いてあげたりする時間を取れるとよいと思います。「勉強は?」「宿題は?」という問いただしに終始してしまわない、リラックスした時間を。お茶をいれてあげるだけでもいいですしね。子どもと気持ちが触れ合える時間を大事にできるといいですよね。

プロフィール



1976年(昭和51)生まれ。私立愛徳学園中等部入学、高等部卒業、上智大学文学部社会学科入学。1997年~1998(平成9~10)年、メキシコ合衆国へ留学を経て2000(同12)年に卒業。同年、フジテレビ入社。アナウンス室所属。「笑っていいとも!」「スーパーニュース」「ワッツ!?ニッポン」などを担当。
2007(同19)年、フジテレビを退社し、現在はキャスターやコメンテーターとして、そして2児の母として活躍中。

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