国語の物語文の問題で、登場人物の気持ちがわかりません[中学受験合格言コラム]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。
【質問】
国語の物語文の読解ができず、選択式の解答でも、登場人物の気持ちを正しく選ぶことができません。記述式の解答となると、ますますできなくなるようです。
相談者:小6男子(感情的・大ざっぱなタイプ)のお母さま
【小泉先生のアドバイス】
言葉に出すことで考えを一つ進める
●わからないから言葉にならないのか?
「『○○○』とありますが、この時のAの気持ちとして最も適当なものを次のア潤Eエから1つ選び記号で答えなさい」というような問題ですね。これが記述問題となると「△△字以内で説明しなさい」となり、ますます答えられなくなるということでしょう。
こうした登場人物の心情を問う問題が苦手な子どもたちに、共通する点が一つあります。それは、「気持ちを言葉に出せない」ということです。「わからないから言葉にできないのは当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、正しい気持ちを答えられないのではなく、何も言えないのです。間違えるのが恥ずかしいから口にしない場合もあるでしょう。あるいは、まったくわからないから言葉に出せない子もいるでしょう。しかし、多くの場合、まったくわからないということはないようです。正しいにしろ間違っているにしろ、大まかには何らかの気持ちはとらえている場合が多いと思います。
●言葉にしないから考えられない
試しに、どんな気持ちか+(プラス)と-(マイナス)で考えさせてみます。するとプラス(イイ気持ち)かマイナス(イヤな気持)かのいずれかをおずおずと答えると思います。その様子をみると、「わからないから言葉に出ない」のではなく、「言葉に出さないからわからない(考えられない)」のではないかと思えてきます。子どもたちから出てくる答えは正しい場合もあれば間違えていることもありますが、正解になることが多いようです。
さらに、なぜそのように感じたかを聞いてみます。つまり、本文のどの部分を根拠にそのように答えたかを確認してみるのです。物語文で根拠となるのは、「傍線部内にある場合」「傍線部の前後にある場合」「傍線部がある場面全体にある場合」などがあります。それらがいくつも複雑に絡み合っていることもありますが、最初は単純なものを教材に選ぶべきでしょう。
●イイ気持ち・イヤな気持ちと根拠を考える
さて、子どもたちが答えた気持ちの正解・不正解とその根拠の正解・不正解は次のような組み合わせになるはずです。
1)気持ち(イイ気持ち・イヤな気持ち)は正しい・根拠も正しい。
2)気持ち(イイ気持ち・イヤな気持ち)は正しい・根拠は間違えている。
3)気持ち(イイ気持ち・イヤな気持ち)は間違えている・根拠は正しい。
4)気持ち(イイ気持ち・イヤな気持ち)は間違えている・根拠も間違えている。
1)の場合は、気持ちも根拠も正しいわけですから、あとは「イイ気持ち」「イヤな気持ち」といった単純な言葉ではなく、ピッタリ当てはまるような表現を考えさせるか、難しければ教えてあげればよいでしょう。「そういった場合は、こんな表現がピッタリだよ」などと教えると、案外知っていたということも多いと思います。
2)の場合は、正しい根拠を教えて、さらに気持ちがプラスかマイナスかを聞きましょう。正しい答えが出れば1)の、正しくなければ3)の指導になります。
3)の場合は、なぜその根拠でその気持ち(間違えている気持ち)になるかを聞きます。その場合、お子さん自身に置き換えて考えさせることも大切ですが、本文にある登場人物の動作や背景を加えて考えないと「自分ならこう感じる」になってしまいますので注意しましょう。物語の心情表現をとらえる問題の場合、根拠に沿って考えると一つの気持ちに絞れるように論理的につくられていると思いますから、そのプロセスに沿って考えることを教えてあげるとよいでしょう。
4)の場合は正しい根拠を教えてプラスかマイナスかを考えさせます。正解なら1)の、不正解なら3)の指導になります。
●「言葉に出す」ことで考えることが始まる
こうして最終的には、イイ気持ち、イヤな気持ちを適切な言葉(たとえば「ほほえましい」「腹立たしい」など)に言い換えて終了になりますが、このような指導の中で一番大切なことは、最初に述べたとおり「言葉に出す」ことだと思います。
言葉に出すことで一歩前に進み、それにより一段高いステップで考えることができるようになるのです。そして、「イイ気持ち」「イヤな気持ち」という定型の言葉は、子どもたちから言葉を出させるためのよい選択肢なのだと思います。