【5年生】 学習法の見直しと意欲の回復を [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第55回]
保護者の役割は、子どもの成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
前回に続き、今回は5年生を対象に、この時期によく見られる不調の乗り越え方についてお伝えします。
2学期後半に学習法のリセットを
2学期後半は、子どもたちにさまざまな「不調」が出てきて、個人差が大きくなる時期です。今の学習法が合っていれば、勉強にも慣れて波に乗っていける「安定期」に入りますが、学習法や指導者と合わなかったり、忙しすぎて時間が足りなかったりすると、成績の伸び悩みや意欲低下につながります。苦手な教科がはっきりしてくるのもこの時期です。ある教科の成績が3週間以上落ち続けているといった場合は要注意です。
まずは、息抜きが大切です。テストの目標点を下げるとか、塾を1回お休みするなど、ちょっと立ち止まって息抜きするだけで、子どもが元気になる場合もあります。それでも勉強への意欲が戻らないようなら、学習法をドラスティックに見直す必要があるでしょう。
学習法の見直しや転塾については、第22回【5年生】 この時期、塾を変えるべき? も参考にしてください。
「荷を軽く」して自信を回復する
はっきりと苦手な教科ができてしまったら、「この教科は嫌」「勉強したくない」という気持ちのまま続けてもよいことはありません。過去にできなかった単元はとりあえず置いておきます。そのうえで、2、3週間先に習う単元で得意そうなところに時間をかけて取り組んで、一度よい成績をとらせて「できる」という自信を付けてあげてください。その間、その教科はお休みしてもOKです。意欲さえ回復すれば、その分を取り戻すのは難しくありません。「苦手だからたくさん勉強させる」のではなく、むしろ荷を軽くして、丁寧に取り組ませることが大事なのです。
「第三者」を触媒にして意欲を上向きに
苦手意識を取り除き、学力を伸ばすのは、何よりも「意欲」です。意欲は、外からの刺激によって生まれてきます。「あの世界に行きたい」とか「あの人みたいになりたい」「あの人に認められたい」といったあこがれが、意欲を喚起するのです。
スポーツでも、「全国大会に行く」といった目標やあこがれの選手、尊敬する指導者がいて「この練習を続ければうまくなれる」という手応えをつかんでこそ、がんばれますよね。勉強も同じ。意欲が失われているのに、知識を詰め込まれるとしたら、それは苦痛にしかなりません。指導者が強制的に知識を身に付けさせるスパルタ式でも、確かに学力は伸びますが、スパルタをやめたとたんに伸びなくなりますので、よほどの信念と指導力があるかた以外にはおすすめできません。やる気があるかないかで、勉強の効果には比べものにならないほどの差が出てきます。
また、この時期はほとんどのお子さまが思春期に入り、保護者のかたとは違う価値観を形成しつつあります。ですから、保護者のかたがいくら意欲を起こさせようとしても難しい場合が多いと思います。ぜひ積極的に第三者の力を借りてください。塾の先生や家庭教師など、お子さまが尊敬し、信頼を寄せるような指導者を見つけるのが理想的ですが、よい指導を1回受けるだけでも違います。
親子関係も見直しを
子どもの意欲が失われている場合、保護者のかたは少し距離をとりながら、子どもの様子をよく観察する必要があります。そして、とても大切なのが愛情の確認です。「志望校に合格させたい」という保護者のかたの思いばかりが前に出ていると、子どもたちはそれを敏感に感じとります。子どもの中に「お母さんは私に勉強させたいだけなんだ」「お父さんは、僕を認めてくれていない」といった気持ちが大きくなっている可能性があるのです。
親子関係がなんだかぎくしゃくしている、と感じたら、目の前の勉強のことはいったん忘れ、「この子にどうなってほしいのか」ということや、中学受験をする意味について、あえて考えてみていただきたいと思います。休日、ご家族でのんびりと過ごしたり、小旅行に出かけたりするのもよいかもしれません。
また、家庭教師の先生や好きな親戚のかたなど、第三者に子どもの話をよく聞いてもらうなどすると、第三者が触媒の役目を果たし、親子関係がかえってよくなることもあります。
ぎくしゃくしたままでは、中学受験はうまくいきません。この機会に学習法とともに、お子さまとご自身の立ち位置について、見つめ直してみてはいかがでしょうか。
次回は6年生を対象に、入試説明会の参加のしかたと志望校最終決定について取り上げます。