2学期に備えて苦手予防を [中学受験 4年生]

保護者の役割は、お子さまの成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。
4年生を対象に、2学期を見据えて夏休み後半に取り組んでほしい課題について取り上げます。



■苦手をつくらないために「好きを増やす」

4年生の2学期以降、大切になってくるのは「教科のバランス」です。競争が激しい受験においては、極端に苦手な教科があると、他の教科の成績がすばらしくても不利になってしまいます。
2学期を前に、今力を入れていただきたいのは、さまざまなことに興味を持たせて「好き」を増やすこと。好きなことは、調べたり考えたりすることが苦にならないため、知識は広く、深くなっていきますし、「好き」を糸口に独自のものの見方や考え方も育ちます。「好き」を増やすことで、自然と「食わず嫌い」も減っていくのです。

たとえばお弁当でも、「好きなものから食べていいよ」と言われたらどれもおいしそうに見えるけれど、「嫌いなものを先に食べなさい」と言われたら、全部がまずそうに感じてしまいますよね。
ですから、この時期は「嫌いな教科があるのはダメ」「苦手は克服しなさい」と言うのではなく、「作文、好きなの? 面白い表現をするね」とか「生き物の観察は得意なんだね」というふうに、「好き」「得意」という言葉をうまく使ってお子さまと接してください。



■「ちょっと話を振っておく」ことで興味の入口をつくる

なお、親がよく話題にすることは、子どもも自然と興味を持つことが多いものです。つまり、ご家族の興味はお子さまの資産にもなりえます(親子でまったく興味の方向性がズレていて、子どもが苦痛に感じるケースもありますが……)。たとえばオオイヌノフグリ(花)とか、リュウグウノツカイ、オジサン(魚)など、面白い動植物の名前は何度も聞いているうちに覚えてしまったりしますね。

興味を持たせるための簡単な方法は「ちょっと話を振っておく」ことです。保護者のかたご自身が興味を持ったことは、なるべく口にしておしゃべりの種にするとよいのです。また、少々短絡的ですが、2学期に習うテーマについて「~って不思議だね」などとさりげなく話題にしておくという手もあります。
たとえば「月」というテーマでも、理数系より文化系が得意なお子さまなら、かぐや姫の物語や「立待月」「寝待月」といった月の呼び名、月にまつわる英語圏とアジア圏の文化の違いなどに興味を持つかもしれません。いきなり月の満ち欠けの理屈を理解しなさいというより、別の切り口から「月」に興味を抱いていれば抵抗感を抱かずにすみます。
また、面白い図鑑や事典をそろえておくなど、お子さまが興味を持ったらいつでも自分で調べられる環境をつくることも大切です。



■「自分で解きたい!」が学習の原動力に

2学期以降は、学習の内容が難しくなってきますので、粘り強く考える力が必要です。特に算数で、今の時期にぜひおすすめなのが、パズルやなぞなぞの要素が入った面白い問題に取り組ませること。「解けそうで解けない!」「でも自分で解きたい!」という気持ちが、難しい問題を投げ出さずに、粘り強く考える原動力になります。大人の側にも、悔しがらせるというか、ちょっとじらせるというか、そんな「遊び心」が必要だと思います。「ちょっと待って、答えは言わないで。自分で考えるから!」というふうに子どもたちが思ってくれたら、しめたものです。



■今、伸ばしておきたい「空間把握能力」

発達の観点で言いますと、空間把握能力は4年生の前半頃までに急激に伸びるといわれています。夏休み後半には、飛行機に乗って俯瞰(ふかん)的にものを見るとか、山の上から景色を眺めて地形を五感で感じ取るなど、空間を立体的に把握できる経験をさせてあげたいですね。ブロックなどのおもちゃや木製の立体パズル、折り紙や工作なども空間把握能力の発達に役立ちます。夏休み後半の遊びやレジャーには、「空間」を意識的に取り入れることをおすすめします。
今後は机での学習が増えていかざるをえないので、今こそ「遊び」で、子どもたちの好奇心や学習意欲を刺激してあげてください。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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