美術教育は新しい社会をつくるカギ「旅するムサビ」仕掛け人に聞く
学校の美術の授業は何のためにあるのだろうか。その問いに答えるべく、ベネッセ教育情報サイトでは、「旅するムサビ」という活動を行う、武蔵野美術大学教授の三澤一実氏に話を伺った。
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国際化社会や情報化社会の中で日本文化の尊重や異文化理解が重要になってきましたが、美術教育において重視されてきている「鑑賞活動」では、その能力を育てることもできます。異なる文化について美術の視点からそのよさや美しさを味わったり、自国の美術文化に対する理解を深めていったりすることができるのです。グローバル化が進んでいく中で、自分のアイデンティティーをしっかり持ちながら、他者の価値観を受け入れるという姿勢はますます必要となるでしょう。
学生と始めた、「旅するムサビ」は、小学校、中学校、高校、そして美術館や教師の研修会などへ学生が自分の作品を持っていき、児童・生徒、教師に鑑賞してもらうプロジェクトです。美術館などでの鑑賞と大きく違う点は、作者がその場にいるということ。作者と対話しながら作品鑑賞を深め、表現の意図を探れるのが「旅するムサビ」の醍醐味(だいごみ)なのです。「対話型」の鑑賞は、子どもたちに感動をもたらします。同じ作品を見ながらも一人ひとりの感じ方の違いに気付き、さらに作者の解説を聞いて、「そんな思いがあったのか!」という新たな発見や洞察力を高めます。現在8年目を迎え、今までに全国の15都道府県の約120校で実施してきました。
近年、地域におけるアートの役割は高まっています。アートがあることで、日頃、地域にいない人たちや情報を呼び寄せ、刺激をもらったり、自分の地域を見つめ直したりすることができるからです。美術には人と人、地方と都会とを接着する力もあるといえます。
出典:武蔵野美術大学 造形学部 教職課程研究室 美術教育は新しい社会をつくるカギ 「旅するムサビ」で学生が子どもに美術を体験させる機会を実現[大学研究室訪問 学びの先にあるもの] -ベネッセ教育情報サイト