高校の海外研修 「行くなら異なる生活環境を体験して」と専門家
加速するグローバル化に対応できる能力を、我が子に身に付けさせたい、と考える保護者は多いことだろう。では、具体的にはどのような経験を子どもにさせるべきなのか。安田教育研究所の安田理氏が、ある私立高校の海外研修を例にアドバイスする。
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私立高校に進学すると、多くの場合、「海外研修」といった行事があると思います。研修先はアメリカ、カナダ、オーストラリアといった英語圏が定番。英語力向上のためには、ネイティブの発音に接することは大変意義があるでしょう。ただ、こうした先進国での生活面は、日本にいる時とほとんど変わらないのではないでしょうか。
私が想像するに、今後我が国のビジネスが飛躍的に拡大する先は、バングラデシュ、ミャンマー、インド、中東、アフリカ諸国など。そう考えると、多様な文化に対応できる力が子どもたちには必要であることに気付くでしょう。高校時代に1回しか経験できない海外研修であれば、生活環境が日本とは異なる東南アジアなどのほうが、いい経験になるのではないかと思います。
実際に、タイ北部の少数民族の村で海外研修を行っている私立高校があります。生徒たちは、親のいない子どもなどが保護されている施設で、言葉が通じなくても、スポーツや遊びをとおしてコミュニケーションする経験をします。施設には、国籍がないため国からの支援を受けられない子どももいて、自分と同世代の子どもたちが過酷な状況に置かれている現実も知ります。また、ホームステイ先では、「言葉がなくても通じ合える優しさと温かさ」を体感するのです。そうした経験をした生徒は、「世界の最前線で、自分の求められているタスクを実行する力強い人間」に成長するといいます。
このように、英語力以上のものを子どもに与えてくれる研修もあります。高校入学後に、我が子をいろいろな行事に参加させるかどうか迷った時には、ちょっと違った視点からも検討してみてはいかがでしょうか。
出典:これぞ「異文化体験」[高校受験] -ベネッセ教育情報サイト