焦らず、着実に合格力を上げる夏 [中学受験 6年生]

6年生 焦らず、着実に合格力を上げる夏

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。6年生の夏休みの学習指導について取り上げます。



■やるべきことを絞って、睡眠はたっぷりとる!

6年生の夏休みは、中学受験をするご家庭にとって確かに正念場。「時間が足りない」と焦る声があちこちから聞こえます。「3~4時間の睡眠でがんばった」などという塾の先輩の体験談にあおられて、ますます焦る保護者のかたが多いのですが、睡眠不足は百害あって一利なしです。睡眠中には、学んだ知識の整理作業が進みますから、よく眠ることで記憶はより鮮明になるのです。
焦らず、効率的に時間を使うためには、やるべきことを絞り、優先順位を付けることが大切です。

1 志望校で出題される問題に絞る

志望校がはっきり決まっているならば、その学校に詳しい先生の指導を仰ぎ、何が出て何が出ないか、出題傾向を聞いて「出ない」問題は省いてください。中学入試問題はかなり標準化されているので、大事な問題だけコンパクトにまとめられたよい問題集を見つけ、そこから必要ないものを省いていきます。そうすると、お子さまの負担感もずいぶん減ってきます。

2 苦手単元の底上げに集中

夏休みは、苦手な教科や単元の底上げに注力してください。基本問題プラスアルファの簡単な応用問題さえできれば、得点率はかなりアップします。難しいことをやる必要はないのです。子どもたちはこの時期、やっと本気になり始めていますから、難易度が中程度の問題は、きちんと向き合いさえすればできるようになるケースがほとんど。全単元で8割程度の問題ができれば理想ですが、夏休み中にそこまで持っていくのは難しいので、今は7割をめざしましょう。第5回でふれた「まちがいノート」を大いに役立ててください。

なお、解答までの時間は、今は気にしなくてけっこうです。テスト本番では2分で解かなければならない問題に、10分かけてもかまいませんので、とにかく考えの糸口を付けられるところまで持っていってください。

夏休み中にやった苦手な問題を、夏休みが終わるまでにもう一度解くと、解答スピードは格段に上がります。さらに、2学期に再度取り組むと、見ただけで解けるようになることも多いのです。



■難問には、今は手を出さない!

夏休み中は、いわゆる「難問」には手を出すべきではありません。基礎を固め、苦手の底上げに注力したほうが、夏休み明けの模擬試験でよい成績がとれ、「がんばったかいがあった!」と自信を付けられることが多いのです。難問にかかりきりになっていると、基礎固めの時間が足りなくなります。取り組むなら、基礎にひととおり自信が付いてから、時期的には11月以降がよいでしょう。

なお、「難問の解き方をそのまま暗記する」といった勉強法は、一見応用力が付くように見えますが、はっきりいって徒労にしかなりません。「この問題がこのまま出れば……」と藁(わら)をもつかむ気持ちでやってしまいがちですが、それは意味のない知識であり、受験が終われば跡形もなく消えてしまうでしょう。溺れていても藁はつかむべきではないと思います。



■模擬試験のスコアをいかに役立てるか

7月に受けた模擬試験の結果が思わしくなかったので、ますます焦っているというかたも多いと思います。しかし、実際は10月、11月の模擬試験で偏差値50%が合格ライン。それより2~3%低い程度であれば、十分に合格可能性はあります。夏休み中の学力は、まだ発展途上です。

模試は、ぜひまちがえた問題をよく見直してください。そして、理解しているはずの易しい問題を落としていれば、それが全部できたら何点取れたかを見てみましょう。ケアレスミスをなくすだけで、どんな学校が合格圏内に入ってくるか、夢をみせてあげるのも保護者の役割です。合否のボーダーラインにいる多くの子どもたちは、現時点で基礎をしっかり固めることで、このあと伸びていくのです。



■がんばっている子どもの力を信じて

家庭学習の時間は、5時間の日もあれば30分の日もある、というふうにムラをつくらず、なるべく1日合計3時間程度、コンスタントにとったほうが、実力が付きます。とはいえ、本当はまだ小学生、遊びたい盛りです。週末には海や山へ出かけて思いきり遊ぶなど、メリハリを付けてあげてください。

この時期まで、お子さまは非常にがんばってこられたはずです。小学生が夏休みに塾と家庭学習を含めて1日6時間も勉強するなんて、中学受験がなければまずありえません。
お子さまの努力を認め、伸びる力を信じて見守っていただければと思います。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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