消費税増税について知る
2014年4月1日から17年ぶりに消費税の税率が引き上げられ、前月の3月には増税前の駆け込み需要の話題で賑わいました。増税による収入は、社会保障費用にあてられるということです。中学入試でも、今回の税率引き上げをきっかけに、税金の種類やしくみ、社会保障制度などについて問われることが予想されます。そこで今回は、消費税増税について確認していきましょう。
クイズde基礎知識
消費税はどんな税金?/2014年4月1日からの日本の消費税率は何%?/消費税が増税になると考えられることは?/食料品などにかける税率を低くする制度で導入が検討されているものは?
時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。
Q1
消費税はどんな税金?
A.個人の所得に対してかかる税金
B.株式会社などの法人(会社)の所得に対してかかる税金
C.商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金
A1 正解は 「C.商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金」 です。
消費税は、商品を買ったりサービスの提供を受けたりした消費者が負担し、事業者(販売者など)が国に納めます。このように税金を納める義務のある人と税金を実際に負担する人が一致しない消費税などの税金のことを「間接税」といいます。
これに対して、税金を納める義務のある人と税金を実際に負担する人が一致する税金のことを「直接税」といいます。Aの個人の所得に対してかかる税金とは所得税のこと、Bの株式会社などの法人の所得に対してかかる税金は法人税のことで、どちらも直接税です。とくに所得税は、所得が多くなるほど税率が高くなる累進課税(るいしんかぜい)の方法がとられ、支払い能力に応じて税を負担するしくみになっています。
消費税は同じ商品に対して、だれでも同じ税額を負担することになる点では公平ですが、所得が少ない人は所得に対する税負担の割合が大きくなるという問題がおこるので、注意して税率を決める必要があります。
Q2
2014年4月1日からの日本の消費税率は何%?
A.5%
B.8%
C.10%
A2 正解は 「B.8%」 です。
2014年4月1日より、それまでの5%から8%に消費税率が変わりました。消費税が導入される以前の日本では物品税というものが適用されていて、高価でぜいたくなものに対して設定されていました。しかし、商品によって税率が変わることや商品の多様化、時間がたつにつれて商品によっては低価格化・大衆化がすすんで税率が適正でなくなる問題などがおこりました。そこで、物品税を廃止し、1989年4月にほぼすべての商品に同じ税率3%が課せられる消費税が導入されました。1997年4月には社会保障の財源を確保するなどのために、税率が5%に引き上げられました。
今回の2014年4月の税率8%への引き上げは、増税で得られた費用をすべて社会保障費にあてる目的で行われました。現在の日本は高齢化がすすみ、年金や医療・介護費の財源が不足しています。また、子育て支援をすることで少子化に歯止めをかける必要性も叫ばれています。そこで今回の税率引き上げに踏み切ったのです。
(厚生労働省資料などより作成)
今後、2015年10月にはさらに税率を10%とすることが予定されています。しかし、消費税増税は確実かつ安定的な税収が見込めるものの、Q1の解説にもある通り、所得が少ない人は所得に対する税負担の割合が大きくなることが心配されるため、簡単に増税すべきではないとの声も聞かれます。
Q3
消費税が増税になると考えられることは?
A.法人税も増税になる
B.世の中の消費が活発になる
C.家計の負担が増える
A3 正解は 「C.家計の負担が増える」 です。
消費税増税とは、ほぼすべての商品やサービスにかかる税金が増えることですから、それまでと同じ所得額であれば、当然家計の負担が増えます。Aの「法人税も増税になる」は直接的に関係がないため誤りです。法人税は、近年では2012年4月に減税となっています。法人税減税は企業の納税額を減らすことで、企業がもうけを確保し、従業員への給料を高くしたり、技術開発にまわしたりして、最終的に景気をよくさせることをねらいとしています。Bの「世の中の消費が活発になる」とは実際には逆の現象がおこり、消費税増税で家計の負担が増える分、節約しようとする人が増え、消費をひかえる傾向になることが考えられます。2014年6月には個人住民税増税や個人住民税の復興増税開始があり、今後も家計の負担が増えることがわかっています。
Q4
食料品などにかける税率を低くする制度で導入が検討されているものは?
A.軽減税率制度
B.社会保障・税番号制度
C.奨学金制度
A4 正解は 「A.軽減税率制度」 です。
消費税増税に伴い、所得が少ない人の負担を少なくするためにも食料品などの税率を標準の税率より低くする軽減税率制度の導入が検討されています。ただし、対象品目の線引きが難しい、税率が違うと事務負担が増えるなどといった課題も抱えています。また、各業界団体が税率を軽減させる品目の権利を得ようとして財務省の官僚に取り入ることが予想され、官僚が官庁を退職したあとに、ひいきにした業界団体へ再就職するといった、天下り先をつくる原因になるともいわれているため、慎重な議論がなされています。
Bの社会保障・税番号(マイナンバー)制度は、ITを活用し、複数の機関にある個人情報が同一人物のものだということを確認するための基盤のことです。個人に番号を割り当てることで、社会保障や税金の給付や負担の流れをわかりやすくし、公平・公正な社会を実現することを目的としています。個人情報がもれる恐れなどについて問題視する反対意見は根強くありますが、現在(2014年5月時点)は2013年5月31日に公布された「番号関連四法」をもとに整備がすすめられ、2015年10月から個人番号(マイナンバー)の通知が予定されています。
Cの奨学金制度は、意欲と能力がある学生などに対して、金銭を貸し出したり、給付したりする制度のことです。外国の奨学金制度は給付の形態をとる場合も多いですが、日本の奨学金制度は貸し出しの場合が多く、卒業後に返済する義務があります。近年は、就職や賃金上昇が難しい社会背景から返済に苦しむ若者も増えてきています。