新学年のスタートにあたって…… 「しつけ」はお子さまの人生にもプラス[高校受験]

■「しつけ」はお子さまの人生にもプラス

今回は、「しつけ」について改めて考えてみたいと思います。

■私の子育ては反省しきり……

私は自分の子どもを育てていた時には、食事時の作法、電車内での振る舞いといった、マナーとか公共心とかを身に付けさせることに一生懸命でした。今のように「ほめて育てる」というスタイルの育児法は知られていませんでしたから、振り返ってみると厳しいことばかり言っていて、我が子のよさには目を向けていなかったような気がします。そのせいで、とくに下の子はわがままを言わない、口数の少ない、おとなしい子に育ちました。

我が家では私がお酒を飲めないので、何かのお祝い事やお客さんがある時にはケーキを買って帰ります。いろんな種類のものを買って帰るのですが、下の子は全員が選んだあとの残りを取ります。子どもらしい元気のよさ、積極性、自己主張がないのです。

また、私がワンマンだったこともあり、子どもと一緒になってワイワイ楽しく遊んだりしたスキンシップの感覚もほとんどありません。小さい時にお互いの中にそんな接触経験がないものですから、成人したあとも率直な物言いができない親子関係になってしまっています。この年齢になってみて、それが非常に残念なことです。振り返ってみて自分の子育てをものすごく反省しています。

■公共心などにも関心を

この記事を読まれている年代のお父さん・お母さんは私のような子育てはしていないかたが多いと思います。友達感覚でお子さまと楽しく遊ばれているのではないでしょうか。それはそれでたいへんけっこうなこと、私にはうらやましいことです。が、気になるのは、我が子を社会人として育てる「しつけ」についてはあまり関心がないように見受けられます。

「しつけ」という言い方には抵抗があるかもしれません。こう言い換えましょうか。わが子が一社会人として責務を果たせるように育てる、というふうにとらえてください。公共心、公衆道徳、規範意識、他者への思いやりなどが当たるでしょう。

この原稿を書いている前日も、バスの中で、若い男性がシルバーシートに足を広げて座り、スマホをいじりながら、時々ペットボトルから水を飲んでいました。注意して逆ギレされると怖いので、何も言えませんでした。運転手さんも他の乗客も何も言いません。ですからもしかしたら、若者自身が自分のやっていることをマズイとは感じていないのかもしれません。

私のように子育てしろと言っているのではありません。子どもといい関係を築きながら、学力を付けることと同じくらい、公共心やマナーを身に付けさせることに関心を持っていただきたいのです。

仕事柄、いろいろな人と接しますが、優秀である、有能であるだけではうまくいってはいません。社会人としての振る舞いができている、自分や自分の属する組織のことだけでなく他人や社会のことも考えられる……そういった人のほうが仕事の世界でもよほど評価されています。お子さま自身もそうしたものを身に付けたほうが幸せになると思うのです。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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