中高一貫校は、高校からの入学者ありとなし、どちらが学力を伸ばせるか[中学受験合格言コラム]
中高一貫校は、高校からの入学者ありとなし、どちらが学力を伸ばせるか
首都圏の、高校からの入学者がいない完全中高一貫校と高校からの入学者がいる完全中高一貫校以外では、学力を伸ばす点でどちらが優れているのか。高校からの入学者がいるかどうかの違いはあるが、一般的には、完全中高一貫校のほうが「学力を伸ばしてくれる」という印象がある。ここでは、どちらが学力を伸ばしているかを比較してみよう。
完全中高一貫校と完全中高一貫校以外の学校数を比べると、完全中高一貫校(84校)は中高一貫校全体(255校)の約33%と少ない。表1では完全中高一貫校または完全中高一貫校以外が多い学校種別(男子校・女子校・共学校)はどれかを調査した。完全中高一貫校の計を見てみると女子校が61%と最も多く、共学校が18%と最も少ない。
男子校は21%で、共学校よりも多少多い程度だが、入試偏差値55以上では顕著に多い。完全中高一貫校以外の計を見ると、共学校が62%と最も多く、男子校は16%と最も少ないが、完全中高一貫校同様、入試偏差値55以上で顕著に多い。表2で完全中高一貫校の男子校・女子校・共学校の計を見ると、入試偏差値55以上は約70%で大きな割合を占めている。逆に完全中高一貫校以外では入試偏差値55以上は約30%と少ない。
<資料>完全中高一貫校と完全中高一貫校以外の割合
※小数点第一位で四捨五入しているため、合計した時に100%にならないことがある。
完全中高一貫校と完全中高一貫校以外のどちらのほうが偏差値の割に大学受験に有利なのか。「学力を伸ばしてくれる学校」のグラフを使用すれば学力を伸ばす優位性を調査することができる。調査の方法としては、首都圏の中高一貫校に限定し、完全中高一貫校と完全中高一貫校以外の入学偏差値に対する標準的な大学合格実績を比較できるようにした。学校種別では男子校・共学校と女子校・共学校の2つに、大学合格実績では東大~東工大、早慶上智、GMARCHの3つに分けて、6種類のグラフを作成した。グラフを見れば、完全中高一貫校は完全中高一貫校以外に比べ、どのグラフで大学受験に有利かがわかる。
男子校・共学校の東大~東工大とGMARCH、女子校・共学校の早慶上智とGMARCHの4種類のグラフを見ると、どの入試偏差値でも完全中高一貫校のほうがのべ合格者数は多いことがわかった。しかし、グラフ1の男子校・共学校の早慶上智では、入試偏差値が68までは、完全中高一貫校のほうがのべ合格者数は多い。しかし、それ以上の偏差値では、完全中高一貫校以外のほうが多くなる。なぜそのような現象が起こるか調べてみると、一般的に偏差値68以上の学校は東大~東工大を志望する生徒が多く、早・慶・上智大に合格する実力があっても受験しない傾向があるが、完全中高一貫校のほうがその傾向が強いためにそのような現象が起こったのだ。
グラフ2の女子校・共学校の東大~東工大では、入試偏差値が68付近までは、完全中高一貫校のほうがのべ合格者数は多い。しかし、それ以上の入試偏差値では、完全中高一貫校以外のほうが多くなる。調べてみると、完全中高一貫校以外の入試偏差値68以上の学校には共学校の割合が多く、東大~東工大の受験では浪人をもいとわない男子がいる共学校が有利となると考えられる。グラフ1、グラフ2の入試偏差値68以上は例外とすべきで、どのグラフでも完全中高一貫校のほうが、「学力を伸ばしてくれる学校」としては優位性があるといえる。
グラフ1
グラフ2
※東大~東工大:東大・京大・一橋大・東工大、GMARCH:学習院大・明治大・青学大・立教大・中央大・法政大。女子校・共学校の偏差値69以上の学校:女子校の桜蔭、女子学院、豊島岡女子学園、雙葉、浦和明の星女子のうち、豊島岡女子学園以外は完全中高一貫校で、渋谷教育学園幕張、筑波大附属の共学校はどちらも完全中高一貫校以外であった。